黄金の島・ジパング>1時間目「海の向こうへ」

 


 最初に資料@「出島の図」を提示する(出島だとは教えない)

 では最初にこの絵を見てごらん。これは江戸時代のある町のあった島の絵だ。扇形をしているね。この島の絵の下に橋があるが。この橋で町と繋

がっているんだ。絵の解説の番号にしたがって見て行こう。(下の絵の番号にそって見ていく)

(「出島」の図・・・・生徒には何であるかは知らせない)

 この島は何のためにあるんだろうね?

 「オランダ人が住んでいる」 どうしてわかるの?。「オランダの国旗が立っている」「野菜畑もあるよ」「豚や牛まで飼っている」

 そうだね。ではオランダ人はこの島に住んで何をしているんだろう?。

 「貿易かな?」 そう、貿易しに来ているんだね。でもなんでこんな島に住んでいるのかな。もっと町の中に住んだほうが便利じゃない?

 「島に通じる橋の看板に『日本人は許可なく出入りしてはいけない。オランダ人の外出も禁止』と書いてあるよ」「人の出入りを禁止しているんだね」

 禁止かな?。「許可された人は入って良いんだ」 そう。誰が許可するのかな?。「将軍」「幕府」 そうだね。おそらく幕府が許可した人しかここには

入れないんだ。「だから、橋の所に番人がいるんだ」 その通りです。出入りを制限し、許可なく出入りしてないか監視しているんだね。

 ここを「出島」というんだ。でも出入りが制限されたのはオランダだけではない。資料集の「唐人屋敷」を見てごらん。

 

 ここには中国人が住んでいたわけだけど出いりが厳しく制限されているだろ。

 「入り口が1箇所」「門番がいて身体検査されている」「2重の堀で囲まれているよ」

ほかにもいろいろ制限があるんだ。資料集の同じページに、オランダと中国の貿易を説明した表があるね。これをじっくり読んでごらん。

 

  オランダ 中国(清)
場所
面積
期間
収容
出島(長崎)
約13100u
1641〜1854年
数十人
唐人屋敷(長崎)
約31000u
1689〜1859年ごろ
5000人
貿易






輸入



輸出
数10隻が最高。
徐々に制限され
日本の金銀払い
とくに銀払いを
銅払いに切り換え
ていく。

中国産生糸・織物
砂糖・さめ皮・ガラス
など

銀・銅・金
年192隻が最高。
徐々に制限され
るが、オランダ
よりはるかに大
きな金額や量を
許されていた。

生糸・絹織物・砂糖
薬品・書物・絵画
など

銀・銅・金と海産物(昆布
・干しあわび・いりこ)
義務





制約

商館長は国際情勢
報告書「オランダ風説
書」を提出し、毎年1回
江戸へ。


年に数回のみ外出許可


年に数回のみ外出許可。
オランダ人より緩やか

往来 毎年7月来航。
9月出航
一定しない

(表「オランダ・中国との貿易」)

「船の数も制限されているね」 そう。その通り。「船の数がだんだん制限されていったんだ」 その通りです。

 「どうして制限するのかな?」 良い質問だね。これがこの単元で考えたい事なんだ。

(ここで版書する。「江戸幕府は外国とどのように付き合ってきたか」)

<版書の内容>

○貿易する国を制限していた。禁止:ポルトガルとスペイン

                   貿易した国:オランダ・中国・朝鮮

○日本人と外国人とのつきあいも制限していた。

      ★貿易する港の制限:オランダー長崎の出島 中国ー長崎 朝鮮ー対馬

      ★幕府に許可された人しか貿易はできない

      ★日本人が外国に行く事を禁止

 このことを「鎖国」と、後の時代に呼んだんだ。

 ところで江戸幕府は最初から貿易を制限していたんだろうか。

(この問いは何の基礎知識のない子どもにはむづかしい。鉄砲の伝来やキリスト教伝来の経緯を知っている一部の生徒にしか答えられない。)

 ちょっと資料集の年表を見てみようよ。

西暦 政治・経済・社会
1603

1609

1613

1614
1616


1623
1624

1633
1635

1637
1639
徳川家康が征夷大将軍になる。
朱印船貿易が盛ん
オランダと平戸で貿易開始
薩摩藩が琉球征服
キリスト教の禁令を全国に拡大
イギリス船が平戸に来航
大阪冬の陣
大阪夏の陣(豊臣氏が滅びる)・武家諸法度を定める


徳川家光が3代将軍となる
スペイン人の来航を禁止

特定に船以外の海外渡航と外国居住の日本人の帰国禁止
外国船の来航を長崎出島に限る
日本船の海外渡航と帰国の禁止
島原・天草一揆(島原の乱)
ポルトガル船の来航を禁止(鎖国の完成)

(年表)

 徳川家康さんが征夷大将軍に任命されて江戸幕府を開いたのはいつだ?。「1603年」 

そうだね。このころは貿易制限していた?。「していない」「朱印船貿易というのをやっていると書いてある」

そうだね。じゃ、最初に貿易を制限したのはいつかな。「1639年。鎖国完成と書いてあるよ」 完成だね。最初にどこかの国の船が来る事を禁止し

たのはいつ?。「1624年」 どこの国?。「スペイン」 そうだね。それから海外に行っていた日本人の帰国を禁止したり、ポルトガル船の来航を禁止

したり、日本人の海外渡航を禁止したりして、鎖国は完成したわけだ。(ここでわかったことを版書する)

<版書の内容>

○幕府は最初は貿易を制限していない。むしろ積極的に貿易をしていた。

    ★日本人も積極的に外国にでかけ、貿易していた(朱印船貿易)→各地に日本町できる

 「朱印船て何?」 朱印状というものを幕府からもらった貿易船の事だ。「じゃ、朱印状って?」 良い質問だね。じゃ、資料を配ろう。(資料A朱印

船貿易と日本町」を提示する。

 そこに家康が出した朱印状がある。何と書いてあるか読めるかな。(漢文を版書し、レ点や返り点を教え、読んでみる)

 日本国より安南国にいたる船なりと書いており、左の端に発行した月日と家康のハンコが押されている。本物はハンコの色が朱色。

 「だから朱印状」というんだ。 そう。その通り。そして朱印状の意味はそこにある、徳川家康がルソン(フィリピン)総督に送った手紙を読めばわか

る。(生徒に読んでもらう)。

○1601年に家康が安南(ベトナム)や呂宋(フィリピン)に送った手紙

 「このたび自分が日本を支配するようになった。これからは平和になるので安心して商売する事ができる。

ついては日本からの貿易船には朱印を押した文書を持たせる。その朱印状を持たない船には貿易をゆるさないでほしい」

意味わかるね。家康が日本を治めるようになったからこの朱印状を持っている船とは安心して貿易して良いという意味

だ。安全を保障するということだね。

 「朱印状を持っていない船は危ないということ?」 そう。「なんで?」 なんでかな? 「海賊?」「あっ、倭寇だ」 その通り。

 でどんな人が朱印状をもらったかと言うと・・・・・・「大名や商人か」「105人なんてこんなに少ししか外国に行かなかったの?」 これは朱印状をもら

って貿易船を仕立てた人。同じ人が何隻も船を出すし、何回の出す。一隻の船には400人ぐらい乗っていたというよ。「すごいね」 そしてただ外国

に行っただけではなく、そこに住んで商売する人も現れ、各地に日本町が出来たわけ。(ここで資料を読み、どんな人が外国に渡ったかと日本町に

は何人ぐらいいたかを知る。)

○朱印状をもらった人(105人)

・大商人(京都の茶屋四郎次郎・角倉了以・大阪の末吉孫左衛門・長崎の末次平蔵ら)

・九州の大名(島津家久・加藤清正・有馬晴信ら)

○貿易品

・輸出:銀・銅・硫黄・鉄・刀・扇子・屏風など

・輸入:中国産の生糸

○日本町のにぎわい

 ・日本町全体で1万人ほどの人口(マニラ:3000人 アユタヤ:1500人)

 ・自治が許され日本人の長がいて指図していた。

 ・どんな人が住んでいたか

  @貿易で利益をあげようとした商人や商人の雇い人
  A大名がつぶされ失業した武士やその家族
  Bキリスト教を禁止され日本を追放された人
  C外国で活躍して大金持ちになろうとした人
  D外国に兵士として雇われた人

 そして中には外国の王様になった人もいる。山田長政というんだ。知ってる? 「知らない!!!」

 この人は静岡のお茶やさんの子どもだったのだけど商人になりたくなくて船にのってタイに渡ったんだ。そこで日本町を守る軍隊の司令官になった

んだね。「商人のくせに?」 そう。結構戦好きだったらしい。日本人の軍隊は鉄砲で装備されているので強い。敵の多かったタイの国王に頼まれた

王のために闘い、大勝利を得たそうだ。喜んだ王は長政の妻として自分の妹を与え、領土の一部を治めさせたんだ。「ふーん。すごいね」 こんな人

がほかにもたくさんいたそうだよ。

 「じゃ、なんで急に鎖国なんかしたの?。ずいぶんもうかっていたわけでしょ」「なんか問題があったんじゃないのかな?」

 良い質問だね。じゃ、最後にこの問題を考えてみようか。『なぜ幕府は積極的に進めていた政策をやめ、鎖国したんだろうか』

(これは生徒一人一人の持っている基礎知識の差が出てくる。ほとんど知らない生徒は何も考えられない。何か問題があったとしか答えられない)

「難しいよ!!!」「わかんなーい!!!」 そう。難しいね。でもなんか問題があったからだということはわかるだろ。ではどんな問題があって幕府は

鎖国をすることになったのか。これが今回の学習のテーマだ。何時間かかけてやっていくよ。 

 


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