<泣く子と地頭には勝てぬ>J後鳥羽上皇につくかつかざるか?


生徒:「後鳥羽上皇って承久の乱を起こした人のこと?。」

教師:うん。そうだよ。良く知っているね。

生徒:「教科書に書いてあったもの。」

教師:なるほど。・・・・・で今日は前回の続き。鎌倉幕府の三人の将軍がよくわからない死を遂げたころの話しだ。・・・最初に復習をしておこう。

   ノートの最初の問題をやってみてください。

(各自問題に取り組む)

○復習:御家人たちはなぜ将軍をつぎつぎと殺したのか?

・将軍たちは【      】の利益を守り、【     】の利益を守らなかった

 ので、御家人たちは反感をもって殺した。

教師:いいかな?。・・・・・ではいこう。・・・将軍たちは何の利益を守り何の利益を守らなかったの?。

生徒:「貴族の利益を守り武士の利益を守らなかった!!!」

教師:そうですね。で、御家人たちに殺され、結局源頼朝の子孫で将軍をつぐ者がいなくなったのだね。

生徒:「将軍っていなくなったの?。」

教師:いや。いるよ。・・・というより必要なんだな。将軍という武士の頭で同時に貴族でもある人がいて、その人が天皇から与えられた特権として守

   護や地頭を任命できるんだから、将軍はいないと困るんだ。

生徒:「へーっつ、そういうことなんだ。」

教師:だから都の有力な貴族の子供に将軍として来てもらったんだ。でもここでさらに困ったことが起きる。将軍は貴族だからやっぱり貴族の味方を

   する。そうすると武士は困るから将軍の力を弱めようとする。そうすると将軍も自分の力を守るために武士の中に味方をつくってその人々だけ

   を可愛がるようになる。・・・そうやって幕府の内部に将軍に味方する御家人と反対する御家人とが生まれ、互いに対立し始めたんだ。

生徒:「対立ってケンカ?。」

教師:ケンカなんてものじゃあなくて、戦争。御家人同士で戦争を始めたんだよ。

生徒:「そんなことやってていいのかな?。」

教師:××くん。今の意見をもう少し詳しく言ってみて?。

生徒:「はい。天皇や貴族は幕府をつぶしたいと思っていたわけでしょ。そんな時に幕府の内部で戦争していていいのかな。幕府がつぶされるよ。」

生徒:「なるほど!!!」

教師:そうだね。幕府の内部が割れてきて互いに戦いあう情況が生まれると、幕府をつぶすチャンスだと考える人々がいるね。

生徒:「天皇!!!」「貴族!!!」「朝廷!!!」

教師:そういうことです。その中心にいたのが後鳥羽上皇。・・・・では後鳥羽上皇が幕府の内部がもめてきたときにどんな動きをしたのかを見てみよ

   う。資料を配ります(資料L後鳥羽上皇は何をしたのかを配布する)

  <泣く子と地頭には勝てぬ>資料L:後鳥羽上皇は何をしたか?

 1204  実朝が3代将軍となる

 1206  実朝は後鳥羽上皇側近の貴族の娘を妻とする

 1207  後鳥羽上皇は自分の荘園に守護が入ることを嫌い、2国の守護を廃止させた。

 1214  後鳥羽上皇は御家人に次々と朝廷の役職を与え家来にしようとする。

 1216  後鳥羽上皇は実朝の官位(朝廷での位)をどんどん昇進させる

     後鳥羽上皇は実朝を動かし幕府の政所の長官に上皇の家臣の貴族や武士をつけさせる

 1218  実朝は、実朝に反対する侍所の長官北条義時の力を弱めようとする。

 1219 有力御家人北条義時・三浦義村により右大臣になる儀式の場で、実朝が殺される。 

    後鳥羽上皇は、攝津の国にある自分の荘園の地頭をやめさせることを幕府に命令。

    北条義時がこれをことわる。

    後鳥羽上皇は自分に味方する武士をあつめ攝津守護大内頼茂を攻め殺す。

 1220 後鳥羽上皇は、自分に味方する武士をあつめ京都守護伊賀光季を攻め殺し、北条義時

    を討てと院宣を全国の武士に送る。

教師:実朝が後鳥羽上皇の側近の貴族の娘を妻にしたのも後鳥羽上皇のすすめだったと言われている。・・・そして後鳥羽上皇は御家人に次々と

    朝廷の役職を与えて家来にし、将軍実朝の貴族としての位をどんどんあげて行った。・・・これは何がねらいだかわかるかな?。

生徒:「・・・・・・・?。」「幕府をのっとる?。」「幕府をつぶす?。」

教師:そう。そうかもしれないね。・・・・そしてその中で上皇は自分の荘園に守護が入るのを嫌って守護を廃止させたり、荘園の地頭をやめさせようと

   したね。・・・・これは何がねらいなの?。

生徒:「兵糧米を取られたくない!!!」「守護が警察をするのに反対!!!」

教師:そうだね。・・・そうやって後鳥羽上皇は幕府の力をどんどん弱めようとしている。・・・・・この動きにたちふさがり邪魔をしている人がいるね。

生徒:「北条義時!!!!」

教師:そう。北条義時だ。・・・つまり義時は何を守ろうとしたのかな?。

生徒:「幕府!!!!」「武士の利益!!!」

教師:そうだね。・・・・で義時がじゃまになった後鳥羽上皇はついに兵をあげるとともに、北条義時を討てという命令を全国の武士に出したんだ。

生徒:「なんで武士に出すの?。」

生徒:「天皇や貴族は戦争できないだろ。」

生徒:「あっつ、そうか。でも武士が幕府をつぶすことに味方するかな?。」

教師:そう。そこが問題だね。で、その命令文を読んでみよう。(資料M後鳥羽上皇の院宣を配布する)

  《泣く子と地頭には勝てぬ》資料M:後鳥羽上皇の院宣

   後鳥羽院のご命令をいただいた。

   右大臣源実朝が亡くなった後は、源家の家人らは、全てのことを聖断(上皇さまの考え)

  に従うべきことを命令した。

   そして北条義時は奉行(上皇さまの代理)として上皇さまのご意志を承って政治を行える

  人だと上皇さまはお考えになって、義時が、3代将軍の跡をつぐにふさわしいものがいない

  と言って、皇子を将軍になどと言ってきたので、その功績に免じて、摂政藤原道家の子、

  頼経を将軍としておくった。しかし、将軍頼経が幼くまだ何もわからないのをいいことに、

  義時は、政治の実権を自分のものにしたいとの野心にかられ、朝廷の承認があるごとくにふ

  るまって、勝手な政治を行っている。このようなことが許されて良いのだろうか。

   したがって今より以後は、義時の奉行の役を停止し、全てのことは上皇さまが決定され

  る。もしこの決定がなされたのにもかかわらず、これに逆らう者があれば、すみやかにこれ

  を討つべし。手柄をあげた者にはほうびを与えよう。

   後鳥羽院のご命令は以上のようである。すべての武士どもにこれを伝える。

    承久3年(1221)5月15日   按察使源光親

生徒:「源家の家人って何?。」

教師:将軍は源家の人だからその家人っていうのは将軍の家来、つまり御家人ってことだよ。・・・・・ところでこの命令は幕府を倒せって言ってるか

   い?。

生徒:「言ってない!!!」

教師:そう。言っていない。言っている事は、北条義時が上皇の命令に従わず勝手な政治をしているので幕府の代表としての奉行の職をやめさせ

   る。これ以後は上皇自らがさまざまなことを決定する。この命令に従わないものはただちに殺せ!!って言っているだけだな。・・・ところでこの

   命令に逆らう人がいるね?。

生徒:「北条義時!!!」

教師:なぜ逆らうの?。

生徒:「奉行の役を首になったから!!!」

教師:そうだね。だからこの命令は事実上、上皇の命令に逆らう北条義時を殺せ!!という命令なんだ。・・そしてこの命令が全国の武士たちに、当

   然鎌倉幕府の御家人たちにも届けられたんだ。・・・じゃあもし君たちが武士だったら、後鳥羽上皇の北条義時を討てという命令に従う?。それ

   とも従わない?。・・・・自分の考えをノートに書いてみよう。

(各自ノートに意見を書く)

教師:さあいいかな。・・・・じゃあ班で討論しよう。この班は一族なんだ。武士は一族で武士団を組んでいるからね。・・だから武士団としてどうするか

   を決めてみよう。

(各班で討論)

生徒:「先生!!だめです。意見が一致しません!!!」

教師:そういう時は反対者を殺すしかないな?。

生徒:「えっつ、いやですよ。親戚なんだから。」「ようし、勝負しよう。どっちが強いか。」

生徒:「先生!!。班を二つに分けて、それぞれが上皇に味方したり北条義時に味方したりしてはいけませんか?。」

教師:どうしてわけるの?。

生徒:「だって、どっちが正しいか、どっちが強いかわかんないんです。どっちが勝っても生き残るには別けるしかない。」

生徒:「せこい!!!」

教師:まあ、いいでしょう。それも・・・・。武士団それぞれで決めてください。・・・・・・・

   さあいいかな?。・・・・・・じゃあ順番に聞いて行こうか?。・・・はい1班。

生徒:「はい。うちの班では後鳥羽上皇に味方することにしました。理由は天皇の命令だから逆らえないということと、逆らって罰せられるより味方し

   て褒美をもらったほうが良いということです。」

教師:なるほど。天皇の命令だからしかたがないから従うということね。・・・では2班。

生徒:「うちの班は後鳥羽上皇には従わないことに決めました。理由は、勝手なことをやっているのは後鳥羽上皇で、幕府を守り武士の暮らしを守ろ

   うとしているのは北条義時のほうだからです。」

教師:なるほど。勝手なことをしているのは後鳥羽上皇のほうね。・・・・では次は3班。

生徒:「はい。うちの班は1班と同じで、後鳥羽上皇に従うことにしました。理由も同じです。」

教師:天皇の命令には逆らえないからですね。・・・・では3班はどうでしょう。

生徒:「うちの班は分裂しました。後鳥羽上皇に従う人は褒美がほしいということで、従わない人は同じ武士であって幕府を守ろうとしている北条義時

   を討つのはおかしいからです。」

教師:なるほど。正反対の意見になりましたね。・・・では4班は?。

生徒:「はい。4班も意見がまとまりません。後鳥羽上皇に味方する人は褒美がほしいのと、罰せられたくないですが、後鳥羽上皇に味方しない人は

    北条義時は何も悪い事をしていないから討つ理由がないけど、天皇の命令には逆らえないから義時の味方をしても勝てるかどうかわからな

    いので迷っています。」

教師:なるほど。義時に味方しても勝てるかどうか分からないね。・・・・では5班御願いします。

生徒:「はい。うちの班は二つに分けることにしました。北条義時は幕府を守り武士の暮らしを守ろうとしているから幕府をつぶそうとしている後鳥羽

    上皇に味方をしたくないけど、天皇の命令には逆らえないから全国の武士が義時の味方をするかどうかわからず、どっちが勝つかわかりま

    せん。だからどっちが勝ってもいいように一族を二つにわけて後鳥羽上皇の味方をする者と北条義時の味方をする者とに別けます。」

生徒:「うまいこと考えたな!」

教師:なるほど。どっちが勝つか分からないね。・・・じゃあ聞くけど、一族が敵味方で戦場で出会ったらどうするの?。

生徒:「はい。それは困ります。戦わないと本気でやっているのかと疑われるし、本気で戦うと一族で殺しあわなければいけないので。・・・なるべく戦

   場では一番前にいかないようにします。」(爆笑!!)

教師:なるほど・・・・・。では最後に6班御願いします。

生徒:「はい。6班は北条義時に味方し後鳥羽上皇を討ちます。」

教師:おっつ、断固後鳥羽上皇に逆らうわけね。

生徒:「はい。そうです。ここで後鳥羽上皇に味方したら何のために幕府を作ったのか分からなくなります。将軍を殺したのも幕府を守り武士の暮らし

    を守るためなのですから、幕府をつぶそうとしている後鳥羽上皇のほうを殺します。」

生徒:「おーっつ!!!」

教師:断固天皇に逆らうという意見ですね。

生徒:「ほんとのところはどうだったの?。」

教師:たぶんね。みんなと同じだったと思うよ。当時の武士もおおいに迷った。当然幕府の力の強い東国では義時に味方をする人が多いし、幕府の

   力の及ばない西国では上皇の味方をする人が多い。だからしょうがないから住んでいた場所に応じて味方するほうを決めたという武士もいた

   し、5班のように二つに別けた武士団もあった。

生徒:「へえーっつ。」

教師:そして現に北条義時が関東地方の武士を鎌倉に集めて後鳥羽上皇の命令を見せて、上皇に従うも良し、義時とともに逆らうも良し。好きなよ

    うにしろ。そして上皇に味方をしたいものはただちにこの席をたって京都に行け!、戦場で戦おう!と命令した時も、逆に義時とともに上皇に

    逆らうものはともに立とう!と呼びかけた時も、誰一人として動くものはいなかったという。

生徒:「そう。みんな迷っていたんだね。」

教師:そうだね。・・・そしてその時、義時の姉で頼朝の妻であった北条政子が頼朝の御恩、幕府が出来た事でどんなに武士の暮らしが楽になったか

   を説き、その後、義時が一人で馬に乗り、自分の家来をつれて京都に攻めていったときになって始めて、多くの東国の武士たちは義時につい

   て行く事を決心し京都に向かって攻めていったんだそうな。

生徒:「決心するのに時間がかかったんだ。」

教師:そう。武士が天皇の命令に逆らって天皇を攻めると言うのは歴史上ではじめてのことだからね。

生徒:「で、どっちに味方した武士が多かったの。」

教師:うん。実際の所はほぼ半々という所だったそうだよ。多少義時がわが多かったくらい。

生徒:「じゃ、どっちが勝つかわからないじゃあないか。」

教師:うん。数の上ではね。・・・・・でも上皇に味方するほうと義時に味方するほうのそれぞれの理由を比べてみるとわかるよ。

生徒:「・・・・・・・・・?。」「あっつわかった!!」

教師:○○くん、説明してください。

生徒:「はい。上皇に味方するほうの理由は、しかたがないとか、天皇には逆らえないとか、処罰されるのがいやとかで、積極的に戦う気持ちが見ら

    れないのに対して、義時に味方するほうの理由は、幕府を守るとか武士の暮らしを守る、そして勝手なことやる上皇を討つというように、とても

    戦いに積極的です。」

生徒:「おーっつ!」「なるほど!!!」

教師:ということは両者が戦場で出会ったときどっちが積極的に命をかけて戦うかはわかるね。

生徒:「義時に味方したほう!!!」

教師:そうです。だから幕府方の大勝利になったんだ。結果は教科書の64ページの終わりから65ページにかけて書いてあるね。それを読んで、ノート

   の最後のまとめの問題をやってみよう。

(各自教科書を読み、問題に取り組む)

○まとめ

 幕府をたおそうとした【 @  】に味方した【 A  】は少なく、戦いに敗れた上皇は島流しになり、

 上皇に味方した【 B 】や【 A 】の領地は取り上げられ、東国の【 C 】が新たに地頭となった。

 さらに、朝廷を監視するために【 D 】が設けられ、幕府の勢力は西国にも広まった。

教師:では、いいかな?。・・・じゃあ答えあわせ。@番は何?。

生徒:「後鳥羽上皇!!!」

教師:そうですね。後鳥羽上皇。・・・ではA番は?。

生徒:「武士!!!」

教師:はい、正解です。・・・・ではB番は?。

生徒:「貴族!!!」

教師:そうです。貴族。C番は?。

生徒:「御家人!!!」

教師:いいですね。御家人。・・・・では最後のD番は?。

生徒:「六波羅探題!!!」

教師:いいですね。六波羅探題。・・・・これで今日の授業は終わります。次回はいよいよ「泣く子と地頭には勝てぬ」の意味を考えます。


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