<泣く子と地頭には勝てぬ>A 武士って何屋さん?


教師:さて今日はこの単元を学習するときにとても大事な基礎知識。でも意外と答えられない問題を考えておきたいと思います。それは「武士って何

    屋さん?」。つまり武士のお仕事は何?。という問題。・・・どう?答えられるかな?。

生徒:「殺し屋!!!」

生徒:「警察官!!!」

教師:これはまた対照的な、正反対の仕事だね?。・・・・・・他には?。

生徒:「借金の取り立てや!!!」

生徒:「ガードマンじゃあないの?。」

生徒:「戦争のプロ!!!」

生徒:「税の取り立てや!!!」

教師:なるほどいろいろあるね。・・・・他にあるかな?。・・・・・今みんなが答えてくれたものを見ると、一つ一つは違うんだけど、良く考えてみると、こ

   れらの仕事にはある共通したことが出来ないと勤まらない仕事だね?。・・・・わかるかな?。

生徒:「強い事!!!」「武器を扱うのが上手い事!!!」

教師:うん。そのとおりだ。武士って武器を扱うのが上手くて、いつも敵に備えているって感じだね。・・・・・そこでちょっと資料集を開けて、平安時代か

   ら鎌倉時代にかけての武士の暮らし振りを見てみよう。資料集p48の「武士の館」をあけてごらん。

教師:これは鎌倉時代に書かれた「一遍上人絵伝」という絵巻の一場面で、一遍さんというお坊さんが福岡県のある武士の家を訪ねた時のことを描

   いたものなんだ。絵の中にお坊さんがいるだろ?。黒い衣を着た坊さんが。

生徒:「うん、いたいた・・・」「えっつどこに?。」「あつ、いた!!」

生徒:「先生!。一遍さんが二人いるよ!!!」「えっどれ?。ほんとだ!!!」「なんで?。」

教師:うん。これはね。異なる場面が一枚の絵の中に描かれているんだ。・・・真中の庭で一遍さんがこの家のご主人と話しているのが最初。

生徒:「何を話しているの?。」

教師:「私は御札を配って旅をしています。どうかのこ御札を受け取ってくれませんか?。てね。」

生徒:「何の御札?。」

教師:「南無阿弥陀仏って書いてあるこんな御札。(黒板に絵を描く)・・そしてご主人がこの御札を受け取ってくれたので一遍さん喜んで、今日のお仕

    事は終わったうれしーな!!って感じで、門を出て行くところが次の場面なんだ。」

生徒:「あっつ、いたいた。門の所に」「門番もいるね!!」

教師:そう。今門を出るところだね。・・・・・・・ところでさ、この絵を見ていると、武士っていつも戦と言うか敵に備える生活をしているってことがわかる

   ね。・・・・絵のどこからそれがわかるかな?。」

生徒:「門番がいる!!!」「門の上に矢が置いてある!!!」

教師:そうだね。門番と門の上の矢。・・・門の上の矢って何のためにあるの?。

生徒:「敵が来たらすぐうてるように!!!」「門の上から敵を攻撃する!!!」

教師:そうだね。だから門の上に矢が置いてあり、そばに敵の矢を防ぐ盾も置いてあるんだ。・・・・・・他にもあるかな?。

生徒:「門の横に塀がある!!!」「門の前に堀もあるよ!!」

教師:うん。それはなんのため?。

生徒:「敵が入って来れないようにする!!。」

教師:そのとおりだ。・・・・・それ以外にあるかな?。

生徒:「番犬もいるよ!!!」「馬もいる!!!」

教師:そうだね。馬もいる。・・・・・馬って何に使うんだ?。

生徒:「荷物を運ぶ!!!」

教師:それもある。・・・でも武士は別の使い方をする。

生徒:「馬に乗って戦う!!!」

教師:そのとおりだ。・・・馬に乗る。・・・馬に乗って馬の上から矢を射たりするんだね。

生徒:「流鏑馬!!!」

教師:おっつ、よく知っているね。・・流鏑馬って何?。

生徒:「馬を走らせて、的を射るやつ。」

教師:そう、そのとおりだ。・・・でもこれって難しいんだぞ。なにしろ手綱を離して乗るんだから。・・・ということは普段から馬に乗るのを練習する場所

   がいるね。

生徒:「あれっつ。馬場・・・・かな?。」

教師:そう。馬場。馬小屋の左横にある柵があるところだね。ここで普段馬を走らせたり、馬の上から矢を射る練習をしたりしているんだね。

生徒:「先生!質問!!!」

教師:はい。××くん。何ですか?。

生徒:「あのー、馬小屋の前に猿がいるんですけど。なんで猿がいるんですか?。」

教師:面白いところに気がついたね。・・・・・馬って人間より耳がいいからちょっとした物音でも気がついて騒ぎ出したり暴れたりするんだ。昔の人は

   それを悪霊とか悪魔の仕業だと考えたんだね。・・・ところで猿ってのは神様の御使いなんだ。京都のそばにある日枝神社というとても信仰され

   ていた神様の御使いが猿なんだよ。それで、馬小屋に悪霊が近づかないように神様の御使いの猿を置いておくんだそうだ。

生徒:「へーっつ、猿って神様の御使いなんだ。知らなかったな―。」

教師:うん。そういうことだ。・・・・・で、ところで、もう他にないかな。この絵から、武士がいつも敵に備えているということがわかるところが。・・・・・

生徒:「矢の材料!!!」「しのだけの林!!!」「矢の材料にするしのだけが家の中に生えている!!!!」

教師:そうだね。・・・・・本当に武士はいつも戦に備えている事がよくわかるね。・・・・・・・・では、次の問題だ。・・・・「武士の館はどんなところにあった

   のだろう?。」。こういういつも敵に備えた暮らしをしている武士はどんな所に自分の家を建てただろうね。推理してみてください。

(各自、武士の仕事や武士の暮らしをヒントにして考え、ノートに自分の考えを書く)

教師:では、書けたかな?。・・・・じゃあ、発表してください。・・・・はい、□□さん。

生徒:「はい。私は見晴らしの良いところだと思います。」

教師:それはなぜですか?。

生徒:「はい。見晴らしがよければ、敵が攻めてきても良く見えるからです。」

教師:なるほど。・・・・で、それは具体的に言えばどんな場所ですか?。

生徒:「はい。山の上です。あまり高くない小さな山の上がいいと思います。」

教師:なるほど。・・・・・・・同じ考えの人!!!・・・・おっつ、結構いるね。・・・・じゃあ、他には?。・・・・はい、○○くん。

生徒:「はい。僕は山奥のほうが良いと思います。なぜなら敵が攻めてきにくいところだからです。」

教師:なるほど。・・・・敵が攻めにくい所ね・・・・、はい、同じ考えの人!!!・・・・・うん、これも多いね。・・・他には?。・・・・△△くん。

生徒:「はい。僕はえらい人の家の近くとか、そこに行きやすいところだと思います。理由は武士はえらい人のガードマンをしていたと思うからです。」

教師:なるほど、で、具体的に言うとどんなところだろうね。

生徒:「町の中とか交通の便が良い道路に面したところだと思います。」

教師:なるほど。・・・じゃ今のと同じことを考えた人!!!・・・・・あっつ、これは少ないね。・・・・では他には?。・・・・はい○○さん。

生徒:「はい。△△くんの意見に似ているんですけど、私は村の真中だと思うんです。理由は武士は村のガードマンだったと思うし、村人から税をとる

    仕事もしていたと思うから村の中だと思います。」

教師:なるほど、村の中ね・・・・、同じ考えの人!!!・・・うん、少しだけどいるね。・・・・・あと他には・・・?。はい、●●さん。

生徒:「はい、私は水のあるところだと思います。理由は武士の館の前には堀があったので、水を引いて来れるところだと思います。」

教師:なるほど、さっきの絵から考えたんだね。・・・・で、具体的にはどんなところだと思いますか?。

生徒:「川の近く、平地があって川から水を引きやすい、村に近いところだと思います。」

教師:なるほど。川と村に近いところね・・・・・。こうしてみると皆の意見は二つに分かれるね。山奥とか山上とか敵に攻められにくいところという意見

   と、町や村の中とか近くという意見の二つだね。(山奥とか山の上という意見が多い)

生徒:「先生!!、どっちが正解なの?。」

教師:うん、それはね。教科書のp66の10・11行目を読んでごらん。

武士は荘園や公領の交通や水利の便のよい場所に、堀と塀でかこんだ屋敷を設けて住んでいた。

生徒:「荘園や公領って何?。」

教師:荘園は貴族の土地、公領は国の土地。でも要するに村と言う事なんだ。・・・つまり村の中の道路や川の近くってことだね。

生徒:「なんだー。山奥じゃあないのか?。」

教師:うん。そうなんだ。

生徒:「なんで?。」

教師:うん。それが今日の問題なんだけど、それを考える前に武士の館が実際にどこにあったか実例を見てください。武蔵の国の作延村の例です。

生徒:「えっつ、うちの所ジャン!!!」

(資料@を配る)

生徒:「あっつ、西中、川の中じゃん!!」「ほんとだ!!!」

教師:うん。昔はこの校舎の所を川が流れていたんだ。今でも5mは掘れば昔の川のあとが出てくる。」

生徒:「えっつ、ほんと!!。掘ろうよ!!。何が出てくるの?。」

教師:うん。掘るわけにはいかないけどね・・・・・・。河原にあった石がたくさんと大きな流れてきた丸太が何本もと、あとは昔の川のあとを流れる地下

   水が大量に出てくるんだ。」

生徒:「「へーっつ、でその地下水って今はどうなっているの?。」

教師:うん。校舎を建てるのに邪魔だったから、校舎の下に大きなプールを作ってそこに水を貯めて、満水になったらポンプでくみ出して下水に捨て

   ているんだ。時々校舎の下からすごい勢いで水が噴出してきて下水に流れていくだろ?。

生徒:「あっつ、あれがそうだったの。もったいない。飲めるんでしょ?。」

教師:うん。飲める・・・・・・あれ?、何の話しをするんだったっけ?。

生徒:「作延村の武士の館の話し!!!」

教師:話しがずれてしまったね。・・・・で、作延村には平安時代の終わりからから鎌倉時代の初めにかけて稲毛三郎重成という武士が住んでいたん

   だ。この人の奥さんは源頼朝の奥さんの姉妹でね。結構偉い武士なんだ。・・・この人の館見つかったかな?。

生徒:「あった!!!。下作延小の横だ!!!」「えっつ、ほんとだ!!」

教師:うん。下作延小の横の今住宅展示場になっているところかその奥のもう少し山よりのところに館があったとも言われている。その後ろが緑ケ丘

   霊園だね。つまり彼の館は山の上にはないんだ。・・そして目の前の道はそのまま長尾の山の上を通って西にいき、武蔵の国府まで通じてい

   る。そして南側の道は平瀬川沿いに西へ進んで、相模の国府まで通じる道だったんだ。そしてこの2本の道が交わったところを東に行くと港に

   つく。多摩川が東京湾にそそぐところの港。高の津といいます。ここから船に荷物を積んで川を遡れば武蔵の国府。そして川を下って東京湾に

   出て、それから西へ行けば都だ。そしてこの港から南に向かう道、今の大山街道が当時の東海道。ここを進んで30日も歩けば都に着く。・・・・

   とまあ、こんなふうに作延村の中にあって道路や川がすぐそばにある、交通や水利の便の良いところに稲毛三郎重成の館はあったんだね。

   ・・・・・・・では、今日の課題だ。「なぜ武士の館は村の中の交通や水利の便のよいところにあるのだろう」。自分の考えをノートに書いてみてくだ

   さい。

(各自自分のノートに意見を書く)

教師:書けたかな?。・・・・・・じゃあ、班にして討論してみてください。

(班での討論)

教師:いいかな?。・・・・じゃあ、発表してもらおう。・・・・・では6班。

生徒:「はい。うちの班では、村の中だと村の人たちが敵が攻めてきたときに知らせてくれるし、一緒に戦ってくれるからだということになりました。」

教師:なるほど。村人が武士を助けてくれるわけね・・・・。では、他の班。・・・・・・・2班、お願いします。

生徒:「はい。いくつかでたんですが、道路や川のそばだと敵に襲われた時に逃げるにも便利だし、戦いに行くときも移動しやすくて便利だから。あと

    もう一つは村の中だとお店もあって生活していくには便利だからという意見が出ました。」

教師:なるほど。お店ね・・・・面白い意見だ。・・・・・では、他には・・・・はい、3班、お願いします。

生徒:「はい。村を守るにも便利だし、都にいる偉い人のボディーガードをしに行くのにも便利だと思います。」

教師:なるほど。武士は村のボディーガードと都のえらい人のボディーガードをやっていたんだ。・・・・・・・他には?。・・・・はい、5班。

生徒:「はい。うちの班では、税を都に運ぶのに便利だからという事になりました。理由は、この時代税は天皇や貴族のもので、武士はそれを集める

    係だったから、その税を持っていく国府や都に行くのに便利な場所に作ったのだと思います。」

教師:なるほど。税を国府や都に運ぶのに便利だからというわけなんだ・・・・。他の班はどうかな?。はい、4班。

生徒:「はい。さっきの6班の意見と同じで村人が敵を知らせてくれるからというのと、2班と同じでお店があったりして暮らすのに便利だからです。」

教師:なるほど。・・・あとは・・・1班。

生徒:「なかなか先生が当ててくれないので全部言われてしまいました。」(爆笑!!)

教師:うーん。なかなか良く推理できたね。・・要は武士の仕事を考えると答えは出てくるんだね。武士の仕事は村を守る事だし、その村人から税を

   集めて国府や都に運んでいくことだし、またその都のえらい人のボディーガードでもある。だからこう言うところに館を作ったというわけだ。そし

   て、村の中だとお店があって暮らしやすいって言うのもいいね。道路や港がある村には市場があったからそこで必要なものは買えるね。さらに

   村の人が一緒に戦ってくれるからというのもいいね。武士には武士の家来もいたけれど、村人たちも武装して武士に従って戦っていたからね。

生徒:「農民は鎌や鍬なんかを武器にしていたんですか?。」

教師:違うんだな、それが、ちゃんと鎧も兜も刀も弓矢ももっていたんだよ。この時代の村人は。鍬や鎌で戦ったのは江戸時代のことなんだよ。

生徒:「へーっつ、知らなかった。」

教師:では最後に、武士の仕事を確認しよう。教科書のp61を開けて、そこの鎌倉幕府のしくみという表をみてごらんなさい。その中の地頭というの

   が武士たちがなったもので、その仕事が武士の仕事だったんだ。・・・それを読みながら、ノートの最後の問題をやってみよう。

武士の仕事は

 @荘園・公領の【       】

 A【    】の取りたて⇒【    】へ運ぶ

 B【      】=【       】を取り締まる。

(各自教科書を見て答える)

教師:じゃあ、確認していこうか。・・・・@番。荘園や公領の?。

生徒:「管理!!」

生徒:「管理って何するの?。」

教師:村を盗賊から守ったり川の洪水から守ったり、田畑がちゃんと耕せるように用水路を維持管理したりってことなんだ。・・・・・では次。

    A番。何の取りたて?。

生徒:「税!!!」「年貢!!!!!」

教師:そう。税や年貢だね。・・・でそれをどこに運ぶの?。

生徒:「都!!!!」

教師:そのとおり。・・・・では最後。B番。これは何?。

生徒:「警察!!!!!」

教師:そうだ。警察。・・・ということは何を取り締まるの?。

生徒:「強盗!!!」「人殺し!!!」「悪いやつ!!!」「犯罪者!!!!」

教師:そう。正解です。・・・・・・じゃあ、今日の授業はこれで終わります。


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