<つるばみの衣>A 大王から天皇へ


教師:では今日は、大化の改新という事件について学習します。大化の改新は645年に起きた事件ですが、どんな事件か知っているかな?。

生徒:「なんとかのイルカとか言うのが殺された事件じゃなかったかな?」

生徒:「やったのはなんとかのカタマリとかいうやつじゃなかったっけ?。」

生徒:「違うよ。中臣の鎌足だよ。やられたのは蘇我の入鹿だ。」

生徒:「良く知ってるね。」

教師:ほんとに良く知っているね。あともう一人この入鹿を殺した中心人物がいたね?。

生徒:「なんとかのオオエノオウジ?。」

生徒:「そうだ!!。中大兄皇子だ!!」

教師:良く覚えていたね。中大兄皇子と中臣鎌足らが話し合って大臣の蘇我入鹿を殺し、その一族を皆殺しにした事件だね。

生徒:「なんでそんなことをしたの?。」

教師:そう。そこが大事なところだね。誰かわかるかな?。

生徒:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?。」

教師:そうか。知らないか・・・・・・・。今日はね、この大化の改新。蘇我入鹿一族を滅ぼしてしまった事件は何の目的でなされたのかということを考え

   てみよう。結論だけ先に言ってしまうと、こういうことなんだ。(板書する)

○板書事項

大化の改新:蘇我大臣家を倒し、日本の国を

   「大和国家のしくみ」から「律令国家のしくみ」にかえようとした出来事

生徒:「大和国家のしくみとか、律令国家のしくみって何?。」

教師:そう。そこが問題だね。今日はまずここから考えてみよう。

    これが大和国家のしくみなんだ。(資料A大和国家のしくみを配布し、同じ物を黒板に貼る)

教師:この大王(おおきみ)というのが後の天皇で、その下には「臣(おみ)」という位をもった中央豪族と「連(むらじ)」という位をもった大王の家来の

   豪族そして全国各地に「臣(おみ)」とか「君(きみ)」という位をもった地方豪族がたくさんいたんだ。この大王とか豪族が各地に大きなお墓をつく

   っていたんだね。なんていったっけ?。

生徒:「古墳!!」

生徒:「ほら。あの鍵穴みたいな形をした古墳?。」

教師:これかい?(黒板に絵を描く)

生徒:「そう。それ!!」

生徒:「前方後円墳!!!」

教師:そうだね。そしてこの人たちはこの図にあるように、各地に私有地を持っていたんだ。

生徒:「私有地って何?。」

教師:さあ、何でしょう?。漢字から考えてごらん。私は自分と言う事だから・・・・・・?

生徒:「自分の土地!!!」

教師:そう。自分の土地。たとえばこの土地は誰のもの?(地方豪族の私有地をさす)

生徒:「地方豪族!!!」

教師:そう。地方豪族のものだね。そしてこれは?(中央豪族の私有地をさす)

生徒:「中央豪族!!!」

教師:そう。中央豪族のものだね。最後にこれは?(大王の私有地をさす)

生徒:「大王!!!」

教師:そう。大王だ。そして豪族たちの土地を田荘(たどころ)とよび、大王の土地は屯倉(みやけ)とよび、その私有地には、税を納めたり兵士として

   働く人々が住んでいた。この人たちを部の民(べのたみ)とよんでいたんだ。つまり地方豪族の私有地に住む部の民の納めた税はだれのもの

   かというと?。

生徒:「地方豪族のもの!!!」

教師:そう。地方豪族のもの。そして中央豪族の私有地の税は?

生徒:「中央豪族のもの!!」

教師:そう。中央豪族のもの。つまり、大王といっても、税がとれるのは自分の私有地だけということなんだ。

生徒:「はい。質問です!」

教師:はい。○○くん。なんですか?。

生徒:「はい。大王の私有地と豪族の私有地はどっちが大きいのですか?。」

教師:うーん。良い質問だね。そこが大事なところなんだ。じつは大王といっても一番大きな私有地を持っていたわけじゃあないんだ。中央豪族の中

   にも地方豪族の中にも、大王よりも大きな私有地をもった豪族は幾人もいたんだよ。

生徒:「なーんだ。大王といってもちっともえらくないんじゃあないか。」

教師:そういうことさ。つまり、豪族たちもそれぞれの私有地、つまり国に帰ればその土地の王様というわけで、自分の土地から税をとり、そこに住む

   人々を兵士として使う力を持ち、その部の民や自分の奴隷を使って大きなお墓を作らせていたんだ。

生徒:「奴(やっこ)って奴隷のことなんだ。」

教師:そう。奴隷の事。さてそこで問題だ。大王が死んだとき次の大王には誰がなるんだろう?。

生徒:「一番強い豪族!!!」

生徒:「違うよ!!。大王の子供!!!」

生徒:「先生。どっちなの?。」

教師:うん。正解は大王の子供。

生徒:「なーんだ。一番強い豪族かと思った。」

教師:うん。大王になるには大王の血を引いていないとなれないんだよ。だけど大王にはたくさんの奥さんがいるから子供も何人もいるんだ。

生徒:「何人ぐらい奥さんがいるの?」

教師:少ない人で4・5人かな。多い人になると10人以上。そしてそれぞれの奥さんに何人もの子供がいるから・・・・

生徒:「20人ぐらい?」

教師:うん。そんなもんかな。だから次の大王を大王の子供たちから決めるのが大変。候補者が複数いるわけだよ。それに今度死んだ大王のその

   前の大王の子供だとか孫だとか言うのがたくさんいるから、候補者はたくさんいる。

生徒:「どうやってきめるの?」

教師:そう。そこが問題だね。どうやって決める?。

生徒:「くじ引き!!」

生徒:「ジャンケン!!」

生徒:「一番年上のやつ!!!」

生徒:「一番強いやつ!!!」

教師:うん。そのどれでもない。大王の血を引いた人たちには決める権利がないんだよ。

生徒:「じゃあ、誰が決めるの?」

生徒:「わかった!!!。豪族たちだ!!!」

教師:そう。豪族たちが決める。大王候補の中から年齢や人物で選び、それでも候補者が複数いたときは、有力な豪族たちの多くの支持を得た人

   が大王になる。

生徒:「それじゃあ、まるで選挙じゃない。」

教師:そうだね。豪族たちの選挙で大王が決まるみたいなもんだね。・・・・だが問題なのはその先。豪族たちの多くの支持を得た候補者が複数いた

   らどうなるか?。

生徒:「今度は選挙?。」

生徒:「話し合い?。」

教師:そのどちらでもない。

生徒:「じゃあ・・・・・・・・・・・戦争?。」

教師:そう。戦争さ。有力な候補者が複数いたときはそれを支持する豪族たちが戦争して決める。その戦争がどっちが勝つか分からないときは・・・

生徒:「どうするの?。」

教師:どちらの候補者でもない、大王一族の年上の女性を大王にするんだ。

生徒:「なんで女なの?。」

教師:うん。ほら。あの有名な邪馬台国の女王の・・・・

生徒:「卑弥呼!!!」

教師:そう。その卑弥呼が女王になったのは卑弥呼の前の王が死んだとき王の後継ぎを巡って10年ほど争いが続き、どうにもならなかったので王

   の一族の卑弥呼を王にして、彼女の弟を副王にして治めさせたんだって。

生徒:「でもなんで、卑弥呼が王に選ばれたの?。」

教師:卑弥呼ってあることが得意だったでしょ?。

生徒:「・・・・・・・・・・・・・・あっつ、占い!!!!」

教師:そう。占い。何を占うかというと、神様の考えを占って知るということ。天気や季節や田植えの時期や政治のことまで全部神様の考えを聞いて

   行っていたんだね。この時代は。そこで神様に一番近い人をとりあえずの王様にして、その間に王様候補が勉強をして最後にもっとも多くの豪

   族の指示を得られた男の王の一族が次の王になるんだよ。つまり女王はワンポイントリリーフというわけ。

生徒:「へーえ。面白いね。」

教師:聖徳太子も大王が死んだときの次の候補の一人だったんだが、複数の有力な候補がいたんで決まらず、結局彼のおばさんで前の大王の奥

   さんだったひとが大王になり、その間に聖徳太子が勉強して実績を積んで豪族の支持をえて大王になるはずだったんだ。

生徒:「はずって?。」

教師:うん。その前にそのリリーフの女王、推古天皇というんだけど、その女王よりさきに聖徳太子の方が死んでしまって、結局彼は大王になれずに

   死んだというわけです。

生徒:「へーっつ。大王って可愛そうだね。家来に命令もできないんだ。」

教師:そういうことです。大和王権の時代のしくみはこういうものだったんだよ。(まとめを板書する)

○板書事項―大和王権のしくみとは?

@大王といっても王の中の一人であり、大王は豪族たちによって選ばれる。

A大王も・豪族もそれぞれ国の王であり、そこに住む人から税をとり兵士を集めた。

B日本は一つの国ではなく、国々の連合であり、大王は全国から税や兵士を集めることはできない。

教師:では次に律令国家のしくみを見てみよう。(資料B律令国家のしくみをくばり、同じものを黒板に貼る)

教師:この一番上の天皇が前の時代の大王だよ。律令国家になると大王ではなく天皇となのったんだね。

生徒:「あれ、ずいぶんすっきりした形になっているね。」

教師:どこがすっきりした形になっている?

生徒:「豪族たちに上下の関係がついているんじゃあない?。」

教師:そう。するどいね。律令国家になると一番偉いのが天皇。次が中央貴族。その下に地方豪族ということになったんだ。

生徒:「中央貴族って誰がなったの?。」

教師:良い質問だね。中央や地方の豪族の中の有力な人たちが貴族と呼ばれ、朝廷の中で天皇の下で太政官とか各省の役人となって全国を治

   め、また全国をいくつかにわった国々を治める国司になったんだ。そして力の弱い豪族が国をいくつかに分けた郡を治める郡司になり、もっと

   も弱い豪族たちが各村村の、当時は里といったけど、その里長になったんだ。

生徒:「その太政官とか省とか国司とか郡司や里長は誰が決めるの?。」

教師:誰だと思う?。

生徒:「天皇!!!!!」

教師:そう。天皇です。

生徒:「どうして大王ができなかったことを天皇はできるの?。」

教師:どう言う意味ですか?。

生徒:「大王は豪族たちに命令もできず、大王だって豪族が決めていたんでしょ。それなのになんで天皇になると豪族を家来にしてしまえるの?。」

教師:うーん。良い質問だね・・・・・・・・・。みんなどうしてだと思いますか?。

生徒:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

教師:じゃあ質問だけど。大和国家のときに大王が豪族たちに命令できなかったのはなぜ?。

生徒:「豪族も王様だったから!!!!!」

生徒:「豪族も私有地をもっていたから!!!!!」

教師:そうだよね。豪族も王様であり、大王と同じように私有地を持ち、そこに住む人を部の民をして税を取ったり兵士に使ってたんだ。じゃあ、その

   私有地は律令国家になってどうなった?。

生徒:「あれっつ、ないよ!!!!」

教師:そう。ない。なくなった。私有地ではなく全ての土地は「公地(こうち)」になったんだ。

生徒:「こうちって?。」

教師:公地の公とは?

生徒:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

教師:今でもこの字がつく土地ってあるでしょ?。

生徒:「公園!!!!!!」

教師:そう。公園。公園って誰の土地?。

生徒:「川崎市!!!!」

生徒:「国のもの!!!!」

生徒:「みんなのもの!!!!!!」

教師:そう。公地というのは国の土地って言う意味であり、その国を代表するのは?

生徒:「天皇!!!」

教師:そう。だから、全国の土地は天皇の物といって良い状態になったんだね。そして部の民も廃止されて、公民と呼ばれた。

生徒:「国の民?」

生徒:「天皇の民?」

教師:そう。その両方。つまり律令国家になると、全国の土地と民はすべて天皇のものになったんだ。これを公地公民制という(板書する)

○板書事項―律令国家とは?

@豪族の私有地や部の民を廃止し、すべてを国(=天皇)のものとする。

A豪族たちはその力に応じて身分を決め、各地を治める役人とする。

教師:さあ。ここまでわかったかな。・・・・・・・そこで問題だ。「大和王権のしくみ」から「律令国家のしくみ」にかえることで何か良い事があるのか?。

(各自ノートに自分の意見を書く)

教師:では、班の座席に移して、討論してみよう。

(班で討論する)

教師:じゃあ、発表してもらおうか。・・・・・・・・・・・・・・・・はい、6班。

生徒:「はい。うちの班では、天皇が豪族たちに命令できるし、全国から税を集められると言うことになりました。」

教師:なるほど。・・・・・・・・・・じゃあ、2班。

生徒:「はい。2班は意見が別れました。今の6班と同じ意見と、もうひとつ、何も良いことなんかないという意見がありました。」

教師:その何も良い事なんかないという意見をもう少し詳しく説明してください。

生徒:「はい。天皇にとっては豪族たちに命令できたり税を全国から集められたりして良いかもしれないけど、豪族たちは私有地もなくなって良い事

    なんかないと言う意味です。」

教師:なるほど。人によって良い事と悪い事があるという意見ですね。・・・・・・・他には・・・・・3班。

生徒:「はい。2班の今の意見に近いのですが、豪族は私有地を取られて王様ではなくなったから面白くないと思います。」

教師:なるほど。豪族には律令国家になることは面白くないということですね。・・・・・・・・・あとは・・・・・・・・・・・はい。1班。

生徒:「はい。うちは6班に近いんですが、公地公民制になったので、天皇は全国から税を集められるし、全国から兵士も集められるんで、とても大

   きな力を持てるようになったと思います。」

教師:なるほど。・・・・・・・・他には・・・・・発言していない班は・・・・・4班と5班かな?。

生徒:「4班は、6班と同じです。」

生徒:「5班は2班と同じで意見が別れました。」

○板書事項―律令制にかわって良い事

@天皇は豪族に命令でき、全国から税を集められる。

                全国から兵士も集めれる。⇒大きな力を持つようになる。

A豪族は私有地がなくなり、王様でなくなったので、面白くない。良くない。  

教師:まとめてみるとこんな感じだね。天皇にとっては良い事だけど、豪族にとっては良くないと言う事だね。・・・・・・・・・・さて、ここまでくると、大化の

    改新の目的、大和王権のしくみから律令国家のしくみにかえる目的がわかるね。ノートの最後の問題に答えてみよう。

(各自問題に答える)

○ノートの問題

★大化の改新の目的とは?

【     】中心の国づくりを進め【              】をしやすくしようとした。

教師:さあ、どうだろう。誰中心の国づくりを進めようとしたの?

生徒:「天皇!!!!!!!!!」

生徒:「大王!!!!!!!!!!」

教師:そうだね。そして何をしやすくしようとしたの?。

生徒:「政治!!!!」

教師:もう少し具体的にいうと?

生徒:「全国に命令する!!!!」

生徒:「全国から税を集める事!!!!」

生徒:「全国から兵士を集める事!!!!!」

教師:そうだね。天皇中心の国。つまり日本を一つの国に統一して、国を治めやすくする。つまり税や兵士を集めやすくするということだね。大化の

   改新の目的は。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、今日はここでおしまい。次の時間は、どのようにして律令国家ができたのかということをや

   りたいとおもいます。

 


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