<泣く子と地頭には勝てぬ>I将軍はなぜ殺された?
生徒:「将軍って殺されたの?。」
教師:うん。そうなんだ。鎌倉幕府の最初の3人の将軍は、みんなよくわからない理由で死んでいるんだ。2代将軍の頼家は家臣の御家人に殺され
ているし、3代将軍の実朝も同じ。
生徒:「頼朝さんは?。」
教師:頼朝の死の原因にはいろんな説があってね、後に書かれた鎌倉幕府の正式の歴史書では、相模川にかけた橋の開通式に行ったあと急に
頼朝の乗っていた馬が暴れだし振り落とされて大怪我した頼朝はその怪我がもとで死んだとも病死とも言われていると書かれている。
生徒:「それほんとの話し?。」
教師:うん。よくわからないんだよ。・・・当時の都の貴族の日記だと、頼朝は毒殺されたって書かれているし・・・・。
生徒:「毒殺って、食べ物に毒を入れられたの?。」
生徒:「誰が毒を入れたんだ?。」
教師:そう。その辺が謎なんだね。・・・・彼の息子たちが次々と家来の御家人たちに殺されたことといい、これは鎌倉幕府の謎の一つなんだよ。
生徒:「それを解いてみるの?。」
教師:そう。解いてみる。・・・・・実は、鎌倉幕府って御家人たちにとってなんだったかということが分かっていれば、そんなに難しい謎じゃあないんだ
よ。・・・・・・・・ということで、最初に復習をしておこう。・・・・ノートの最初の問題。武士が頼朝に従ったのはなぜだったかをやってみよう。
(各自問題に取り組む)
・幕府(将軍)は御家人を【 @ 】や【 A 】に任命して、彼らが村人から【 B 】を取りたてたり 村を【 C 】したり、【 D 】の仕事をすることを保護してくれ、さらに村から【 E 】をとって 自分のものにすることを認めたから。 ・また【 F 】の職を奪われ領地を取られた武士には【 G 】に訴えれば事実を調べ、領地を |
教師:そろそろいいかな?。・・・・・じゃあ答えあわせをしていこう。
@やAには何が入るの?。
生徒:「守護!!!!」「地頭!!!!」
教師:そうだね。守護、地頭。・・・・・じゃあBは何?。
生徒:「税!!!!」「年貢!!!!」
教師:そう。税や年貢だね。・・・・・・ではCは?。
生徒:「管理!!!!」「支配!!!!」
教師:そう。管理する。支配するでもいいね。・・・・ではDは?。
生徒:「警察!!!!!」
教師:そう。警察の仕事。・・・・・じゃあEは何をとれるの?。
生徒:「兵糧米!!!!」
教師:そう。兵糧米だったね。・・・この地頭がとれる税や年貢ってだれのものだっけ?。
生徒:「朝廷!!!」「貴族!!!」「天皇!!!」
教師:そう。貴族や天皇のものだったね。・・・でも兵糧米という税や年貢の一部は地頭のものに出来たんだね。
ということはこのようなしくみができたことで収入が減った人がいたね?。
生徒:「天皇!!!」「貴族!!!」
教師:そうだ。天皇・貴族。ということは彼らは幕府ができたことに?。
生徒:「頭に来ている!!!」「怒っている!!!」「不満!!!」
教師:そうです。鎌倉幕府ができて武士は喜んでいるけど天皇・貴族は怒っている。何とかして幕府をつぶそうとしているというのが大事な所だ。
・・・さてFは何がはいるのかな?。
生徒:「地頭!!!!」
教師:そう。地頭。武士が領地を得るって言うのはそこの地頭の職を得るってことだからね。・・・・じゃあ最後。Gは何?。
生徒:「問注所!!!!」
教師:そう。問注所。領地争いなどの裁判をする所だったね。・・・・こうやって武士の生活を守るさまざまなことを将軍はしていたんだね。これが将軍
の仕事であり、将軍の義務でもあったんだ。・・・・・じゃあ今日の問題に入ろう。まず資料を配ります。
(資料K将軍の死をめぐる諸事件を配布)
最初に2代将軍頼家の死の原因について考えてみよう。1199年の頼朝の死から先を読んでみるよ。
<泣く子と地頭には勝てぬ>資料K:将軍の死をめぐる諸事件 1199 頼朝死す(死因不明) 頼家2代将軍となる。 幕府は、頼家が政治を決定することを止め、北条時政以下13人の御家人の話し合 いに変え、将軍頼家の力を弱める。 1200 頼家、頼朝がほうびに与えた土地の500町以上のものをとりあげ、将軍の側近の者 に与えようとする。 1203 幕府、関東28国を治める力を頼家の子に、関西38国を治める権限を頼家の弟にあた え、将軍頼家の力を弱める 頼家、妻の父比企能員と北条氏打倒をはかるが、比企氏は北条時政に殺される 幕府は頼家を伊豆に閉じ込める 1204 頼家、北条時政の命令で殺される |
生徒:「500町以上の土地ってどのくらいのもの?。」
教師:そうだね。西中の敷地がだいたい一町だからその500倍ぐらい。
生徒:「広いね!。村一つぐらいだ。」
教師:そうだね。
生徒:「将軍の側近って何?。」
教師:将軍の側近くに仕える武士ってことで、将軍の親戚であることが多いんだ。
生徒:「ふーん。将軍が自分の親戚だけに土地を与えようとしたんだ。」
教師:そうだね。・・・・・じゃあわかったかな。2代将軍頼家が御家人北条時政に殺されたわけは。・・・・自分の考えをノートに書いてみよう。
(各自ノートに意見を書く)
教師:じゃあ、いいかな?。・・・・・・はい。□□さん。
生徒:「はい。頼家が自分の力だけを強めようとしたので御家人が怒ったんだと思います。」
教師:なるほど。将軍の力だけを強めようとしたことに怒ったね。・・・・他には?。・・・はい、○○くん。
生徒:「はい。ほうびにもらった土地を取り上げようとしたから、御家人たちが怒ったんだと思います。」
教師:なるほど。土地を取り上げるね。・・・その土地を将軍の側近だけに与えて将軍の力を強めようとしたから御家人が怒ったのかな?。
生徒:「そうです!!!」
生徒:「もう一つ意見があります!。」
教師:はい。△△さん。
生徒:「将軍が自分の御仕事をしなかったから御家人たちが怒ったんだと思います。」
教師:もう少し詳しく説明してください。
生徒:「はい。将軍の御仕事は御家人たちに土地を与え生活を守る事だと思います。それなのに頼家はその土地を取り上げようとしたんだから将軍
の御仕事をしないで自分の利益だけを図ったんだと思います。だから御家人たちが怒って、そんな将軍いらないってなったんだと思います。」
生徒:「おーっつ!!!」
教師:なるほど。今の意見がよくまとまっているね。要するに頼家が御家人の生活を守るという将軍の仕事をしないで自分だけの利益を図ろうとした
ので将軍にふさわしくないということで殺されたということだね。・・・・じゃあ次に実朝を見てみよう。
1204 頼家、北条時政の命令で殺される 実朝、3代将軍となる 1206 幕府、頼朝がほうびに与えた土地はとりあげないことを定める 実朝、後鳥羽上皇側近の上級貴族の娘を妻とする 1207 幕府、後鳥羽上皇の圧力に負け上皇の土地のある2か国の守護職を廃止する。 1214 幕府、後鳥羽上皇が御家人に次々と朝廷の役職を与えていたので、幕府の許可なし で朝廷の役職をもらうことを禁止する。 1216 実朝の朝廷での貴族としての位がどんどんあがり貴族として出世していくので、幕府 はこれを辞めさせようとする。 実朝、政所の長官に後鳥羽上皇の家臣の貴族や武士をつける 1218 実朝、侍所の長官北条義時の力を弱めようとする 1219 実朝が右大臣になる儀式の場で有力御家人北条義時・三浦義村によって殺され る。 そして頼家の子が犯人として殺され、頼朝の子孫はとだえる。 |
教師:実朝も有力御家人である北条義時と三浦義村によって殺されたんだ。・・・ではなぜ彼らは将軍を殺したのか?。そこが問題だね。
生徒:「うーん。難しい。」
教師:そうだね。・・・・この年表をじっくり見てみよう。・・・実朝は将軍になったあとで結婚している。奥さんは後鳥羽上皇の側近の上級貴族の娘。頼
朝や頼家の奥さんはどちらも御家人、つまり武士の娘なんだよ。
生徒:「へーっつ、なんで実朝だけが貴族の娘を奥さんにしたんだろう?。」
教師:そう。そこが問題だね。・・・・・・そうしてその後を読んで行くと、実朝は何かになろうとしているという感じがするね。
生徒:「貴族になろうとしている!!!」
生徒:「貴族になっちゃいけないの?。」
生徒:「ばか!!。貴族は幕府をつぶそうとしているんだぞ。!」
生徒:「あっつ、そうか!」
教師:そして幕府が実朝が貴族としてどんどん出世して行くのをやめさせよとしても実朝はやめず、その上に幕府の中心の役所である政所の長官
に都の貴族をつけようとしているし、・・・
生徒:「あっつ、幕府が乗っ取られそう!!」
教師:そう。・・・・・・そしてとうとう右大臣、つまり貴族としては2番目に偉いところになろうとしたところで御家人たちに殺された・・・・。
生徒:「あっつ、わかったぞ!!」
教師:いいかな?。・・・・じゃあ自分の考えを書いてみよう。3代将軍実朝はなぜ殺されたのか?。
(各自自分の意見をノートに書く)
教師:じゃあ発表してもらおう。・・・・・はい、○○さん。
生徒:「はい。実朝は御家人の敵である貴族になろうとしていたんで御家人たちがそれに怒って殺したんだと思います。」
教師:なるほど。・・・・他には?。・・・・はい、△△くん。
生徒:「はい。それに幕府の政所の長官に貴族をつけようとしたりして幕府をつぶすようなことをしたからです。」
生徒:「はい。つけくわえ!!!」
教師:はい。××くん。
生徒:「はい。実朝も頼家と同じで、将軍の御仕事をしなかったからだと思います。将軍が貴族になったら武士の暮らしを守ってくれなくなるからで
す。」
生徒:「おーっつ!!!」
教師:うん。今の意見が全体のまとめだね。・・・・・じゃあ、いよいよ頼朝の死の謎に迫ってみよう。・・・資料の最初の部分を読んでみよう。
<泣く子と地頭には勝てぬ>資料K:将軍の死をめぐる諸事件 1186 頼朝、天皇・貴族の圧力に負け、西国の地頭を廃止する。 1188 頼朝、貴族と地頭(武士)の領地争いの裁判は、朝廷・貴族の決定とすることを後白 河法王に申し出る。 1190 頼朝、都に上り、娘を後鳥羽天皇のきさきにしようとはかる。 1192 頼朝、征夷大将軍(天皇のために東国を支配する将軍)になる 1194 幕府、天皇・貴族の圧力に負け、諸国の守護が税金を奪ったりすることを禁止する。 1199 頼朝死す(死因不明) |
生徒:「西国にも最初は地頭があったの?。」
教師:そう。あった。でも天皇・貴族の反対に頼朝が負けて廃止したんだ。
生徒:「地頭と貴族の領地争いの裁判は朝廷・貴族の決定とするってどういうこと?。」
教師:うん。幕府の問注所で裁判すれば裁判官が武士だからどっちが有利かと言うと?。
生徒:「武士!!」
教師:そう。武士。・・・だから貴族たちから反対が出て、頼朝がそれに負けて都の記録所で裁判することにした。ここだと裁判官は貴族だからだれに
有利かと言うと・・?
生徒:「貴族!!!」「武士が不利!!」
生徒:「ひどいや、頼朝さん貴族の味方している!。」
教師:そうかもしれないね。少なくとも圧力に負けている。
生徒:「娘を天皇の后にするって、平氏と同じことしているよ。」
教師:うん、そうだね。娘を天皇の后にするって何を狙っているの?。
生徒:「娘が皇子を生む!!」
教師:そうだね。そしてその皇子が天皇になれば頼朝は何になれる?。
生徒:「摂政!!」「関白!!!」
教師:それって貴族の中の何?。
生徒:「一番力のある人!!!」
教師:そうだ。・・・・じゃあわかったかな。頼朝の死の本当の原因が。・・・自分の考えをノートに書いてみよう。
(各自ノートに自分の意見を書く)
教師:じゃあ、いいかな。・・おっと時間がなくなりそうだ。班の討論をやめてみんなで討論しよう。答えは他殺か病死だね。
生徒:「事故死もあります!!」
教師:なるほど。
生徒:「自殺ってのもあるよ?。」
教師:おっつ、新しい説だ。××くん。説明してみて。
生徒:「はい。頼朝は娘を天皇の后にして貴族として偉くなろうとしていたじゃあないですか。でもそうすると貴族の言う事を聞かないといけないから御
家人たちからは恨まれ、どうにもならなくなった頼朝は悩んで自殺したんですよ。」
生徒:「おーっつ!」
教師:なるほど。じゃあ、自殺説に賛成の人!(賛成一人・大爆笑)
では、他殺説に賛成の人!(賛成多数)
じゃあ△△さん説明してみて。
生徒:「やっぱり御家人は頼朝さんが天皇・貴族の圧力に負けて西国の地頭を廃止したり貴族との領地争いを朝廷の裁判に変えたりしたことに頭に
来ていて、その上、娘を天皇の后にしようとしたんだから御家人が怒って殺したんだと思います。」
教師:なるほど。・・・・じゃあ事故死とか病死に賛成の人!(賛成数人)
では□□さん、説明してください。
生徒:「頼朝さんは御家人の利益を守らないで貴族の利益を守っているけど、やっぱり幕府をつくれたのは頼朝さんのおかげだし、御家人たちは頼
朝さんに感謝しているからいくらなんでも殺せないと思います。だから病死か事故死。・・・で偶然頼朝さんが死んでくれたんで御家人たちは殺
さなくてもよくなりほっとしたんだと思います。」
生徒:「おーっつ、なるほど!!!」
生徒:「先生、どれが正解?。」
教師:残念ながらどれも証拠がない。病死・事故死・他殺、そして自殺の可能性もある。たしかなことは頼朝も将軍の御仕事をしなくなっているので御
家人たちに恨まれはじめていたことと、頼朝が死んだということだけ。新しい証拠を見つけない事には確かなことは言えないね。
生徒:「なーんだ。」「残念!!」
教師:でもノートの一番下のまとめみたいにすることはできるね。
まとめ 源頼朝をはじめとする3代の将軍は【 】の利益をまもり【 】の利益を守らなかったので、 【 】たちに反感を持たれ、殺された。 |
教師:頼家と実朝は確実だけど、頼朝についても可能性はあるということだ。・・・・答えわかったかな?。
はい、将軍は何の利益を守り何の利益を守らなかったの?。
生徒:「貴族の利益を守り武士の利益を守らなかった!!!」
教師:そうだね。だから誰に反感を持たれたの?。
生徒:「御家人!!」「武士!!!」
教師:そうですね。・・・じゃあ、今日の授業はおしまい。