<泣く子と地頭には勝てぬ>G平家につくかつかざるか?


教師:さて今日は、この前の時間の続きです。くわしく入る前に、保元・平治の乱について復習しておきましょう。ノートの最初の復習問題をやってみ

   てください。(各自問題にとりくむ)

○保元・平治の乱について
何をめぐる争い?                             
誰の力を借りて行われたの?
この争いで力を伸ばした武士は誰?

教師:では、できたかな?。・・・・・・・じゃあ、答えあわせをしておこう。・・・・・これは何をめぐる争い?。

生徒:「天皇!!!」「天皇の位をめぐる争い!!!!」

教師:そうだね。天皇の位をめぐって兄弟親子が争ったんだね。・・・・ところでこの戦いを勝ち抜いて天皇として大きな権力を持ったのは誰だった

   け?。

生徒:「後白河!!!!」「後白河天皇!!!!」

教師:そうだね。・・・・そして彼は誰の力を借りて戦いに勝ったのかな?。

生徒:「清盛!!!」「平清盛!!!!」「武士!!!!!」

教師:そう。武士だね。そしてこの争いで力を伸ばした武士は誰?。

生徒:「平清盛!!!」「平氏!!!!!」

教師:そうです。平清盛。・・・・つまり保元・平治の乱は後白河と平清盛が共に協力しながら戦いぬいて、御互い大きな力を持つようになったんだね。

   後白河は天皇、そして自分の子供を天皇につけて、自分は上皇として権力をふるった。・・・・そして清盛は何になったのか?。

生徒:「征夷大将軍!!」「摂政!!!」「関白!!!」

教師:うん。どれでもないんだな。・・・・・貴族として一番上の位だ。

生徒:「太政大臣!!!!!!」

教師:そうです。・・・そしてこの仲の良い二人がケンカし、そこから武士にとって大問題が起きてしまうんだ。・・・そこのところの資料を配ろう。

    (資料H後白河と清盛の対立を配る)

   <泣く子と地頭には勝てぬ>  資料H:後白河と清盛の対立

 ★鳥羽上皇の養子となっていた二条天皇は父後白河上皇と対立した。その二条天皇の死後、

  1168年2月平清盛の助けをえて、後白河上皇は二条の息子の六条天皇をやめさせ、自分の子

  の高倉を天皇にし、自分が院政(引退した天皇が政治をとりしきること)をしいて、自分の

  権力を確かなものにした。

 ★しかし即位当時8才であった高倉が大人になるとともに後白河と高倉親子のあいだに対立が

  始まり、高倉を支える平清盛と後白河を支える他の貴族の間に激しい対立が起こってきた。

  1177年6月    平家を倒そうとする上皇・貴族の動きが現れ、後白河上皇の側近の貴

           族が多数逮捕され死罪・島流しとなる。

 117811月    高倉天皇と清盛の娘徳子の間に皇子安徳が生まれる。

 1179年8月    後白河は清盛の長男重盛の領地を取り上げる。

 117911月    清盛は兵を率いて後白河上皇を閉じ込めるとともに、後白河側近の貴族

          多数を首にし太政官を平家一族などで握った。

 1180年2月    高倉の子安徳(2歳)が即位し高倉が院政を行い権力を確かなものにす

          る。

 1180年5月    後白河の子、以仁王が清盛を討てと諸国の武士に命令を出す。

教師:自分の権力を確かなものにした後白河は、高倉の后に清盛の娘徳子をむかえ、清盛を太政大臣にし、やがて高倉と徳子との間には皇子安

   徳が生まれ、後白河と清盛の間はますます仲良く、離れがたいものになっていったんだ。ところがその後二人は対立し、ついには、1179年の11

   月には清盛が後白河を閉じ込め権力を奪い取るというところまで、対立は進んでしまう。

    問題はなぜ清盛と後白河が対立してしまったかということなんだ。資料を読んで、自分の考えをノートに書いてごらんなさい。

(各自ノートに自分の意見を書く)

教師:そろそろいいかな?。・・・・じゃあ答えてもらおう。・・・はい、△△くん。

生徒:「はい。僕は上皇が平家を倒そうとしたからだと思います。」

教師:それはなぜですか?。

生徒:「清盛さんのお陰で後白河は権力を振るえるようになったのに、その清盛を倒そうとするのは恩知らずだと、清盛が怒ったと思います。」

教師:なるほど。後白河は恩知らずか。・・・他には?・・・・・はい、○○さん。

生徒:「△△くんに似ているんですが、後白河が清盛の長男の重盛の領地を取り上げたので、清盛が恩知らずと怒ったのだと思います。」

教師:なるほどね。・・・・・他にはあるかな?。・・・・・・じゃあもう一つ聞くけど、なぜ後白河は平家を倒そうとしたり、重盛の領地を取ったりと、恩のあ

   る清盛を裏切るようなことをしたんだろうね?。・・・・・はい、□□さん。

生徒:「はい。後白河と高倉が対立し、清盛が高倉を支えたので、後白河が偉くしてやった恩を忘れたかと怒ったからだと思います。」

教師:なるほど。清盛は恩知らずか。・・・・みんなはどう思う?。・・・・はい、○○くん。

生徒:「はい。僕は後白河を裏切った清盛は恩知らずだとおもいます。」

生徒:「私は反対です!」

教師:はい。△△さん。

生徒:「はい。恩知らずは後白河の方だと思います。高倉を支える清盛を憎む気持ちもわかりますが、後白河が権力をふるえるのは清盛のお陰な

    のですから、何も清盛を殺そうとする事はないと思います。」

教師:なるほど。・・・・・・ということは問題はなぜ清盛が後白河ではなく高倉を支えたかということにあるね。・・・・・・これは資料の関係系図を見てみ

   ればすぐ謎はとけるよ。・・・・高倉は清盛とどういう関係にあるの?。

生徒:「娘の夫!!!」

教師:そうですね。そして二人の間にはかわいい孫もいるわけだ。でも良く見るとそれだけではないね。高倉の母は平滋子で、滋子は清盛の妻の時

    子の姉なんだから、高倉は妻の姉の子供と言う事で、清盛にとっては一族にも等しい人なんだね。ところが後白河は清盛の何?。

生徒:「御主人!!!!!」

生徒:「妻の姉の夫!!!!」

教師:そうです。主人であり、同時に一族につながる人であるわけです。・・・・そういうつながりのある後白河と高倉が対立したら、清盛はどっちにつく

   かな?。

生徒:「高倉!!」後白河!!!」「迷っちゃうよ!!!!」

教師:そう。迷っちゃうね。・・・・でも結局は可愛い娘の夫のほうを選んだわけです。でもそれは後白河にとっては裏切りにしか見えなかった。・・・だ

   から清盛を倒そうとした。

生徒:「でも清盛からみれば後白河のやったことも裏切りに見えた。」

教師:そうです。その通り。

生徒:「じゃあ、どっちもどっちじゃあないか。」

教師:そうかもしれないね。・・・・・とろが事態は思わぬ方向へ進んでいく。・・・清盛が後白河を閉じ込め、孫の安徳を天皇にすると、後白河の子の以

   仁王が清盛を討てという命令を諸国の武士に出してしまったんだ。どんな命令か、その実物を読んでみよう。(資料I以仁王の令旨を配る)

        <泣く子と地頭には勝てぬ〉資料I以仁王の令旨

  下

  東海・東山・北陸、三道諸国の源氏とその他の勇者たちに、すみやかに平清盛とその家来な

  ど天皇に逆らう者どもを討つことを命ず。

   右は前の伊豆守、源朝臣仲綱が命令を受けたとおり伝える。

  以仁王がこのようにおっしゃった。

   清盛らが大きな勢力を持って、天皇に逆らい国家を亡ぼそうとしている。多くの役人や貴

  族を悩ませ、全ての民の生活をおびやかし、全国を自分の思い通りに支配し、後白河法皇を

  とじこめた。そして法皇につかえる貴族を島流しにしたり、命を奪ったり、川に沈めたり、

  塔に閉じ込めたりした。国々の租税を自分のものにし、国を支配し、役職を勝手に奪ったり

  授けたり、手柄が無い者にほうびを与え、罪がない者に、罰を与えた。あるいは比叡山延暦

  寺の絹や米を勝手に部下に配り、天皇に逆らうために米を集めた。これらは天皇に逆らい、

  仏教を滅ぼす行いである。昔からこのようなひどい事をした人はひとりもいない。

   私は一の人、後白河法皇の第二皇子なので、王位を奪おうとする者どもを討ち、仏教を破

  滅させる者どもを討ちほろぼそうと思う。

   源氏の人、藤原の人、諸国の勇者は力を合わせて味方して平氏を討て!もし味方しない者

  は、清盛の一味と同じであるとして罰せられるだろう!

   もし手柄を立てたのならば、まず諸国の役人に取りたて、以仁王が天皇として即位した後

  には必ず好きなだけ恩賞をとらせるぞ!

         一一八十年 四月九日 前伊豆守源朝臣

教師:さあ。みんなは武士で、その武士の家にこの手紙が密かに届けられたとしよう。・・・では君が武士なら、この以仁王の命令に従って平氏を討

   つのか討たないのか。自分の考えをノートに書いてみよう。

(各自ノートに自分の意見を書く)

教師:いいかな。・・・じゃあ班で討論して決めてみよう。班は同じ武士の一族。武士は血の繋がった一族でグループをつくり、いつも集団で動くんだ。

   以仁王の命令を受け取った君たち武士の一族は一族として態度を決めなくては行けない。

(各班で討論して態度を決める)

教師:どうだろうか。決まったかな?。

生徒:「決まりません!!!。意見が対立したままです!!!」「決まりました!!!」「決まりません!!!」

教師:決まらないと言う事は一族が敵味方に別れて戦うということかな?。・・・・じゃあ決まらないところは意見が別れたと言う事で発表してもらおう。

   ・・・・・・じゃあ2班。

生徒:「はい。うちの班は平氏を討たないことに決まりました。」

教師:で、その理由は?。

生徒:「清盛さんは何も悪い事はしていないし、武士の頭だから、貴族である以仁王の命令なんか聞きたくないと思います。」

教師:なるほど。武士の頭で悪い事はしていないね。・・・・・はい、5班。

生徒:「はい。うちの班は分裂しました。一つは、平氏を討つで、以仁王は天皇になるかもしれないし、命令に従わないと殺されるし、御褒美もほしい

   からです。もう一つの意見は、武士をこきつかって馬鹿にしてきた天皇や貴族の命令はききたくないので、平氏を討たないです。」

教師:なるほど。・・・・・・他には?。・・・・はい、6班。

生徒:「はい。うちの班は平氏を討ちません。理由は、武士の頭である平氏を討つ理由がないからです。」

教師:なるほど。・・・・・はい、1班。どうぞ。

生徒:「うちの班は平氏を討ちます。以仁王の命令に平氏は悪い事ばかりやっているとあるので。」

教師:なるほど・・・・・・。はい、3班。

生徒:「うちの班は、平氏を討たない事に決まりました。理由は、この手紙には平氏は悪い事をして天皇に逆らったから討てとありますが、以仁王は

   自分に都合の良い事ばかり言ってるかもしれないし、信用すると危ないからです。それに平氏は武士の頭だから討ちたくありません。」

教師:なるほど。以仁王は嘘を言っているかもしれないということですね。・・・あとは・・・4班。お願いします。

生徒:「はい。うちの班は平氏を討つ人と、討たない人に別れました。討つ人は褒美が欲しいということで、討たない人は清盛さんは何も悪い事はし

    ていないからです。」

教師:なるほど。・・・・・・こうして見ると、平氏を討たないと言う人が多数のようですね。

生徒:「ほんとの所はどうだったの?。」

教師:うん。君たちの判断と同じでね。当時都やその近くにいた武士の大部分は平氏に味方し、以仁王に味方したのは源頼政という武士の一族だ

    けで、100人程度だったといいます。それにいくつかの御寺の坊さんたちが味方して総勢はやっと300人。

生徒:「少ねー!!!」「で、平氏についたほうは?。」

教師:うん。3000人はいたらしいよ。・・・・だから戦は・・・

生徒:「平氏の勝ち!!!!」

教師:そう。平氏の勝ち。・・・源頼政一族は全員が討ち死に。以仁王は逃げる途中で追いつかれて討ち取られておしまい。

生徒:「なんだ。簡単に終わりだ。」

教師:そう。簡単に終わったと、当時の平清盛たちもそう思った。

生徒:「えっつ、終わらなかったの?。」

教師:そう。終わらなかった。・・・しばらくして関東地方のはずれの伊豆で源頼朝が平氏を討て!と兵をあげた。

生徒:「味方したのは何人?。」

教師:約300人。しかもまわりの伊豆の国中の多数の武士は平氏に味方した。

生徒:「頼朝は負けたの?。」

教師:うん。頼朝は味方を求めて箱根山を越えて今の神奈川県から東京都の、自分の父源義朝の家来たちを頼ろうとしたんだ。

生徒:「家来たちは頼朝の味方をしたの?。」

教師:ほとんど反対。ほとんどが平氏に味方し、約3000の武士が頼朝を倒すためにむかってきた。

生徒:「平氏の勝ち!!!」

教師:そう。平氏側の勝ち。・・・・・頼朝は箱根山中をさまよったあげくに、船で東京湾を渡って千葉県側に逃げるしかなかったんだ。

生徒:「それで終わり?。」

教師:ところが終わらなかった。・・・千葉県側に渡った頼朝がもう一度「平氏を倒せ!!」と兵を上げると、千葉県の武士たちが続々と味方になって

   きた。その数1万人。

生徒:「えっつ、1万?。」「すごーい!!」

教師:そしてその1万の軍勢を引きつれて荒川を渡って東京都側にやってきたとき、以前頼朝に敵対した3000の武士の大部分も頼朝の味方をし、

   関東地方の大部分の武士は頼朝の家来となり、平氏を討つことになったんだ。

生徒:「なんで関東地方の武士は平氏を倒す頼朝の味方をしたの?。」

教師:うん。そこが問題だね。・・・・じゃあ、最後の問題。「なぜ関東の武士は平氏を倒すために立ち上がったのだろう」。自分の意見をノートに書い

   てごらん。

(各自ノートに自分の意見を書く)

教師:じゃあ、何人かに聞いてみようか?。・・・・・はい。□□くん。

生徒:「はい。僕は、関東の武士たちは褒美が欲しかったんだと思います。最初はなかなか動かなかったけど、数が多くなるともしかして平氏に勝て

   るんじゃあないかと考えたのだと思います。」

教師:なるほど。平氏に勝てるかもね。・・・・・はい、○○さん。

生徒:「私は、関東の武士たちは頼朝を信頼したんだと思います。この人についていけば、武士が暮らしやすくなるかもしれないと。」

教師:なるほど。武士が暮らしやすくなるね。・・・・・・はい、××くん。

生徒:「はい。僕は、武士たちは以仁王の命令に従って平氏を倒し、ついでに天皇や貴族も倒して、武士の世にしようと考えたのだと思います。」

生徒:「おーっつ!!」

教師:なるほど。・・・・平氏を倒すついでに天皇・貴族も倒すね・・・・・。

生徒:「どれが正解ですか?。」

教師:うん。・・・・・それは、また次の時間にしよう。次の時間は、その頼朝は何をしたのかということを勉強して、この問題の答えを出してみたいと思

   います。・・・じゃあ、今日はおしまい。


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