<地獄の沙汰も金次第>F 一寸先は闇
教師:では今日の授業は・・・(フリップを黒板に貼る)
生徒:「一寸って?。」
教師:うん。3.3cmのことだよ。
生徒:「ちょっと先は闇っていうこと?。」
教師:ちょっと違うね。(爆笑!!)
生徒:「あっつ、わかった!!」
教師:何?。○○くん。
生徒:「先のことはわからないってことかな?。」
教師:そう。正解!!!。そういうことなんだな。・・・・で今日は、室町時代の農村の様子を考えてみたいと思います。・・・最初に資料集のp63の田植えの絵を見てもらおう。
生徒:この前見たやつだね。
教師:そう。この前見た田植えの図だ。・・・・で良く見てみると、たくさんの人が働いているね。・・・そしてそれぞれ違う仕事をしているね。・・・田植えをしているのはどんな人たち?。
生徒:「女の人!!!」
教師:そうだね。この人たちを「早乙女」と呼ぶんだね。・・・・じゃあ、男たちは何やってんだろう。
生徒:「・・・・・・?。」「苗を運んでいる!!!」「どこどこ」「ほら田植えをしている人たちのちょっと上の、なんか草みたいの運んでいる人いるだろ?」
生徒:「あっついたいた。何か白いものを頭に載せている人だろ」「ばか!。これは飯だ!!。それに女の人だろ!」「あっつそうか。」
生徒:「でも男もいるよ!」「あっつ、ほんとだ。」「先頭の二人と,後ろの二人。」
生徒:「なんか踊っている人いるよ?。」「ほんとだ。何これ?。」
教師:ほら。音楽や踊りをやりながら仕事するとさ・・・・。
生徒:「能率が上がる!!!」
教師:そう。そういうことさ。・・・・他にもいろいろな仕事分担をしているけど、・・・良く見るとさ、農民にしてはおかしなものを持っている人いない?。
生徒:「いた!!!」
教師:××くん。どこにいた?。
生徒:「さっきのご飯を運んでいる人たちの先頭の男の人。刀さしているよ!!」「どれどれ」「ほんとだ!!刀差している!!!」
教師:そうだね。・・・他にもいないかな?。
生徒:「いた!!。苗を投げ配る人!!」「鍬で土ならしして田植えに備える人!!」「どこどこ」「ほら。右の方。牛と牛の間で手をふって合図している人だよ。」「うん。いたいた。」
教師:他にもいないかな?。
生徒:「いた!!。団扇で音頭をとる人!!」「音頭をとるって何?。」
教師:そうだね。田植えには決まったリズムがないと動きにくいそうだが・・・・。
生徒:「わかった。掛け声をかけて、みんなのリズムを合わせるんだ!!」
教師:そう。そうだろうね。・・・・そうすると4人。刀さしているわけだね。
そこで問題。この農民の中の刀をさしている人たちは、村の中でどんな役割をしている人なんだろう。・・・・・・・自分の考えをノートに書いてください。
(各自、ノートに自分の考えを書く)
教師:じゃ、いいかな。では聞いてみよう。・・・・・・はい。△△くん。
生徒:「はい。これは武士です。」
生徒:「村の中でどんな役割をしている人かって、聞いているんだよ」
生徒:「だから、武士だよ。刀をさしているんだから武士に決まってるじゃん。」
生徒:「じゃあ、武士がなんで田植えをするの?。」
生徒:「自分の田んぼだからじゃない」
生徒:「じゃあ一緒に働いている農民はこの武士の何?。」
生徒:「奴隷?。・・・命令されて動いている人じゃないか」
生徒:「違うと思うな?。」
教師:じゃあ□□さん。何で違うと思うの?。そしてこの人たちは村で何をしているの?。
生徒:「はい。今◎◎さんが言ったけど、この刀を持っている人は、まわりの農民と一緒に仕事している感じです。だから別に命令されてやっているという感じじゃない。・・でこの刀を持っている人は、村を守る役目の人たちだと思います。」
教師:何から守るのかな?。
生徒:「はい。この時代は悪党なんかがいましたから、それに村を襲われて米などもって行かれないように刀を持って守るんです。」
教師:なるほど。・・・・・・・他には?。・・・・・・・はい。△△くん。
生徒:「はい。村の指導者だと思います。」
教師:なぜそう思いましたか?。
生徒:「はい。刀をさしている人たちは、みんなそれぞれ何かの指図をしているから、村の指導者だと思いました。」
生徒:「じゃあ、やっぱり武士だよ。指図しているんだろ。命令しているんだよ。」
生徒:「そうかな」・・・・・・・
教師:なるほど。みんな、いいとこをついているね、じゃあ、教科書を見てみよう。教科書の84ページ。「惣村の成立」のところ。・・・・・誰か読んでくれますか?。・・・・・はい。○○さん。お願いします。
【惣村の成立】農業技術の発達などにより、農村では有力な農民にしたがっていた作人や下人が自立するようになった。また、多くの土地を買い集めた農民のなかには武士となる者もあらわれ、地侍といわれた。畿内の農村などでは、地侍や有力農民が指導者となって、荘園のわくにとらわれないで地域ごとにまとまった新しい自治的な村をつくるようになった。これを惣村という。 |
生徒:「やっぱり武士だよ。」
生徒:「農民が武士になったと書いてあるよ。だから農民なんだ」
生徒:「武士と農民は違うぞ。じゃあなんで農民が武士になったんだ?。」
教師:いいところに気がついたね。・・そう、なぜ有力な農民が武士になるのか。武士と農民は違うね。・・・ここを考えるために、もう少しこの村のことを考えてみよう。・・・・じゃあ教科書の先を読んでみようか。・・・はい。■■くん。・・お願いします。
惣村では、村中の家の代表が神社などに集まって会議(寄合)を開き、村のおきてをはじめ、かんがい用水や共同でつかう山林・原野の利用法など重要なことが定められた。そして、戦乱から村を守るために力をあわせて村のまわりに堀をめぐらせたり、荘園領主と交渉して悪徳代官をやめさせ、村で年貢の取りたてをうけおったりもした。 |
生徒:「へえっ。すごいんだね。自分たちでおきてまでつくったんだ。」
教師:そうだね。・・・・そのおきてがあるから、配ります。
(資料HIを裏表に印刷したものを配る)
教師:じゃあ、資料Hの村のおきてを読んでみよう
【村の掟A】 一.年寄りのふれにもかかわらず、寄り合いに2度出なかったものは、50文の罰金とする。 一.2月から6月に行う猿楽のとき支払うお礼は、村の金から1貫文を出す。この取り決めに違反した者は宮座(神社の氏子の集団)から追放する。 一.村を囲っている堀から東は、屋敷地にしてはならない。 一.苗木を切り取った者は500文の罰金とする。 一.薪や炭は村のものを使うこと。 一.家を売った者は、100文につき3文ずつ、1貫文には30文ずつ、惣へ出すものとする。この取り決めに違反した者は宮座から追放する。 (近江の国、今堀惣のおきて) 【村の掟B】 一.他国他郡から当郡へ乱入するものがあったならば、裏切ることなく皆団結して防ぐこと。 一.惣の中のことは多数決で決めること。 |
生徒:「多数決か。今、みたいだね」
生徒:「1文ってどれくらいだったけ?」
教師:そうだね。30円くらいかな?。
生徒:「じゃあ50文は・・1500円。会議は大事なんだ。・・・苗木を切った時の罰金500文は15000円。・・・・けっこう厳しい罰金だね。」
生徒:「先生。なんで苗木きったらいけないの?。」
教師:苗木は、村の共同の山の木を切って家を建てたりしたときに、何百年後にまた木を使えるように植えるわけだ。それを切られると困るね。
生徒:「山がはげになる!」(笑い!!!)
教師:そうだ。洪水も防げないしね。
生徒:「先生!。猿楽って?」
教師:さっきの田植えの絵で、笛や太鼓の音にのってお面をつけて踊っていた人たちがいるだろ。・・・あれを猿楽とも田楽とも言うんだよ。
生徒:「じゃあ、田植えの伴奏にも1貫文いるんだ。ええと・・・1貫って?。」
教師:「1貫は1000文。」
生徒:「じゃあ30000円か。けっこうするね。」
生徒:「年寄りってだれのこと?。」
教師:村の指導者のこと。
生徒:「じゃあ、さっきの刀をさしていた人のことか。」
生徒:「やっぱり、刀を差していた人は村の指導者なんだ」
生徒:「でもなんで指導者が武士にならなきゃいけないんだ?。」
教師:うん。さっきの疑問にまたぶつかったね。・・・・じゃあ裏の資料Iで当時の村の様子をみて、これを参考にして、この問題と、次の問題を一緒に考えてみよう。
資料I「堀に囲まれた村」 |
教師:四角い網の目の物が家のあと。そのまわりを囲むようにした溝が堀。
生徒:「一つ一つの家が堀に囲まれていたってこと?。」
教師:たぶん、そう。・・・・・そしておそらくこの村もずっと外側をもっと大きな堀で囲まれていたのではないか。外側の線はその推定の外堀。・・・・・・・じゃあ、ここでまとめの問いを考えよう。【村はなぜ指導者ときまりとを持ち、堀で囲まれていたのだろう?。】・・・・・・自分の意見をノートに書いてください。
(各自、自分の意見をノートに書く)
教師:じゃあ、書けたら、少し時間をあげるから、班で討論してまとめてごらんなさい。
(各班で討論する。‐時間がないようだったらこの部分は割愛−)
教師:じゃあ、発表してもらおう。・・・・はい。5班、御願いします。
生徒:「はい。やはりこの時代は悪党とかがはやっているから、村は襲われたのだと思います。この悪党から村を守るには、みんなで団結して、武器も持って、村を堀で囲んでおいたのだと思います。」
生徒:「じゃあ、指導者がいるわけは?。」
生徒:「あっつ、あんまり考えていなかった。」
教師:じゃあ、他の班は。・・・とくに今の指導者のことも含めて。・・・はい。2班。御願いします。
生徒:「はい。話し合いで村のことを決めるって教科書に書いてあるけど、これだけなら指導者はいらねいけど、悪党との闘いになれば指導者がいると思います。闘いのことをよく知っていて、武器の使い方もうまい人が。だから指導者と堀が必要なのだと思います。」
生徒:「はい。でも闘い以外にも指導者はいると思います。」
教師:はい。6班。どうぞ。
生徒:「はい。いろんなことをよく知っている人がいないと、村はうまくいかないと思います。田植えのやりかたややる時期など、農業に詳しい人がいないと出来ないと思います。それに用水路のことだって、時々は直さないといけないだろうし、その直し方なんかをよく知っている人が指導者なんだと思います。」
生徒:「それに年寄りっていうこらいだから、年も上で物知りなんだよ。」
教師:うん。なるほどね。・・・他には?。・・・・はい、1班。
生徒:「はい。今のに付けたしですが、話し合いも大事ですが、うまく決まらないときには、誰かが方向を示さないと話し合いはうまく結論がでないこともあります。そういう役割も指導者は持っていると思います。それに戦になれば、どうするか決めるのは大変だし。」
教師:なるほどね。・・・・はい▼▼くん。
生徒:「でもどうして、農民の指導者が武士にならなきゃいけないんだ。武士になるってことは、村から年貢を取るってことだろ。村から年貢とるやつがどうして指導者なんだ?。」
生徒:「まだこだわっている!!」(笑い!!)
教師:いや。いいところにこだわっているよ。
生徒:「それみろ!!」(爆笑!!!)
教師:これにはいろんな説があるんだ。村を襲ってくるのは悪党だけじゃなくて、他の地方を治める大名だったりもする。この時、村の力だけではかなわないから、村の有力者が他の大名の家来になって武士と認められれば、いざと言うときには、その大名が村を助けてくれるという考え方もある。それから、作人や下人が独立して強くなったから、村の有力者が自分の地位を守るために大名の家来になってその力を借りて、荘園領主に対抗してその代官をやめさせ、年貢を安くさせるということをしたという考え方もあるんだ。
生徒:「へえーっつ。いろいろあるんだね。でも、年貢の取立てを請け負うっていうのは、安くするってことなんだ。」
教師:うん。そうだ。わざわざ代官をやって年貢を取りに来させるかわりに村の責任で決まった額を納めるようにする。そうすれば荘園領主も楽だから、その分安くするというわけ。
生徒:「けっこう村の力が強かったんだね。」
教師:そう。・・畿内(近畿地方)のように産業や商業が盛んなところでは、村人もどんどん農業や商業をやってお金を蓄えているからね。だから武器も持っているし、堀なども掘れる。
生徒:「地獄の沙汰も金次第だ!!」(笑い!!)
教師:じゃあ、まとめの問題をやってみよう(時間がないときはカット。次回の冒頭に復習でやっても良い)
★まとめ:鎌倉室町時代は各地で【@ 】を失ったり減ったりした武士たちで他人の金品を奪ったり他人の【@】に押し入って【A 】を奪うなどの乱暴をはたらく者もあらわれ【B 】と呼ばれて恐れられた。村に住む百姓(農民・職人・商人)は【B】などの外敵から村を守るために村を【C 】で囲み、【D 】を置いた。そして村人をまとめるために寄合いをひらき、【E 】を作った。 このような村を【F 】と呼ぶ。 |
(各自まとめの問題にとりくむ)
教師:では答えあわせだ。・・・・【@】は?。
生徒:「領地!!!」「土地!!!」
教師:そうだね。・・・じゃあ【A】は?。
生徒:「お金!!!」「年貢!!!」「物!!!」「人!!!」
教師:そう。どれでも良いね。・・・・じゃあ【B】は?。
生徒:「悪党!!!!」
教師:そうだ。・・・では【C】は?。
生徒:「堀!!!」
教師:じゃあ【D】は?。
生徒:「指導者?。」
教師:そう。指導者。・・・では【E】は?。
生徒:「きまり!!!」「おきて!!!」
教師:そうだね。じゃ、最後。【F】は?。
生徒:「惣村!!!!」
教師:いいですね。・・・じゃあ、次は、地獄の沙汰も金次第のまとめの授業です。