年貢さえすませば・・・・・・@  このごろ都にはやるもの


教師:では今日から新しい単元にはいります。(単元のフリップをはる)

生徒:「何?これ?」「年貢さえすませば百姓ほど楽なものはない?」「百姓って農民のことだよな」「ちがうよ。武士や貴族以外ののすべての人のことだって、前にやったでしょ。ね、先生。」

教師:うん、そうだね。

生徒:「じゃあ、年貢さえ払えば農民や商人や職人ほど楽なものはない、ということ?」「どういう意味?。」

教師:うん。この意味を考えるのが今回の単元の目的なんだ。・・・これはね、江戸時代の言葉なんだよ。

生徒:「ということは、江戸時代には年貢さえはらえば楽になったということかな?。」

教師:うん。かなり近いね。・・・・それでね、今回の単元は、江戸時代になったことの意味を考えてみようということなんだ。・・・まず今までやってきた鎌倉時代や室町時代の意味をもう一度考えることを通じて、江戸時代になったことの意味を考えるんだ。・・・だから約400年をざっと見ていくつもりだよ。

生徒:「えっつ、400年?」「長いなあ」

教師:で今日はまず、鎌倉時代の終わり、鎌倉幕府が滅びるところから始めよう。・・・教科書を開けてください。・・・・75ページ。・・「鎌倉幕府の滅亡」の所。・・・じゃあ、誰か読んでくれる?。・・・はい。■■くん。お願いします。

生徒:「はい。」

 政治の実権を朝廷に取りもどそうと考えていた、後醍醐天皇と一部の公家は、幕府のおとろえをみて、武力で幕府をたおす計画をすすめたが、失敗して、天皇は隠岐(島根県)に流された。
 しかし河内(大阪府)の楠木正成をはじめ、各地の武士や悪党とよばれた人びとが、天皇に味方して立ち上がった。やがて、関東の有力な御家人である足利尊氏・新田義貞もあいついで幕府にそむいて攻撃したので、1333年、鎌倉幕府はほろんだ。

教師:じゃあ、質問。・・・鎌倉幕府はどんな人々によって倒されたの?。

生徒:「悪党!!!」「武士!!!」「天皇!!」「公家!!」

生徒:「公家って何だっけ?」「貴族のことだよ」「ふーん」

教師:それから?。

生徒:「楠木正成!!」「新田義貞!!!」「後醍醐天皇!!!」

教師:うん。そうだね。・・今のは固有名詞。・・・・ちょっと確認しよう。(板書しながら・・・)・・・幕府を倒そうと考えた天皇は誰?。

生徒:「後醍醐天皇!!!」

教師:そうだね。・・・・じゃあ、それに味方した武士は?。

生徒:「楠木正成!!」「足利尊氏!!!」「新田義貞!!!」

生徒:「でも、足利尊氏や新田義貞は『有力な御家人』って書いてあるよ。武士なの?。」

教師:御家人って何だっけ?。

生徒:「将軍の家来!!」「将軍の家来になった武士!!!」

生徒:「あっつ、そうなんだ。」「有力な御家人ということは、大きな領地を持っている強い武士ってことだね。足利や新田は。」

教師:そうだね。・・・ふたりとも滅びた源氏将軍家の親戚。

生徒:「将軍の親戚か」「・・・じゃあ楠木正成は御家人?。」

生徒:「・・・・・・・・・・・・・?。」

教師:うん。良い質問だね。・・・楠木正成は有名な悪党。

生徒:「えっつ、悪党なんだ!」「幕府のいうことも聞かないやつ!!」

教師:うん。そう言われているね。・・・でも彼は謎の多い人でね。悪党として幕府から追っ手を掛けられたりしているけど、記録では、貴族の荘園を管理する荘官でもあり、商人でもあったらしいよ。

生徒:「へーえっつ!」「やっぱり悪党だ!!」

教師:うん。悪党というのは商人でもあったからね。・・・ただし楠木正成は御家人でもあったみたいだよ。

生徒:「へーっつ!!」「複雑!!!」

生徒:「有力な御家人やほかの御家人がそむけば、幕府はつぶれちゃうね。」

教師:そうだね。後醍醐天皇や公家がいくら動いても幕府やつぶれなかったけど、多くの御家人がそむいて始めて幕府はつぶれたんだね。・・・・・じゃあ、ちょっと問題を考えてみよう。
『それぞれの人は何を考えて幕府をつぶしたのだろう?。』・・・要するに、幕府をつぶした目的だね。

(各自ノートに自分の考えを書く)

教師:じゃあ、みんなの考えを聞いてみよう。・・・まず天皇や公家だ。・・・はい。○○さん。

生徒:「はい。政治の実権を幕府から朝廷にとりもどそうとしたんだと思います。」

生徒:「はい。」

教師:はい。△△くん。

生徒:「はい。泣く子も地頭には勝てないの所でやったけど、武士にとられた土地を取り戻したいと思って幕府をつぶしたんだと思います。」

教師:うん。良いところに気がついたね。政治の実権をとりもどすってことは、全ての土地からの税を自分たちのものにするってことだからね。・・・・天皇・貴族の目的は、これで良いかな?。・・・・じゃあ次に、楠木正成などの悪党や武士の目的は何だろう?。・・・・・はい。●●くん。

生徒:「はい。ほうびが欲しいんだと思います。」

生徒:「はい。」

教師:はい。□□さん。

生徒:「はい。自分の土地をもって増やしたいので、戦争で手柄をあげて、ごほうびに土地をもらいたいんだと思います。」

生徒:「でも幕府を滅ぼしちゃったら、武士の土地を守ってもらえなくなるじゃないか。」

生徒:「あっつ、そうだね。」

生徒:「でも、戦争がぜんぜんないから、長い間ごほうびに土地をもらうこともなかったでしょ。・・・だからつまらなくなっていたんだよ。」

生徒:「それに鎌倉幕府をつぶしてまた新しく幕府をつくれば、武士の土地は守ってもらえるよ!」

生徒:「なるほど!!!」

教師:うん。良い所に気がついたね。・・・悪党や武士についてはいいかな。・・・じゃあ最後に、足利や新田なんかの有力な御家人の目的を聞いてみよう。

生徒:「絶対これだぜ!。・・先生。おれにあてて!!」

教師:はい。◎◎くん。

生徒:「やったぜ!!。足利尊氏や新田義貞は幕府を倒して、自分が将軍になりたかったんだと思います。」

生徒:「はい。それに補足!!」

教師:はい。▼▼さん。

生徒:「はい。今読んだところに少し前に、幕府の中で北条氏の力が強くなり、幕府の主な権限を独り占めしていったので御家人の不満が高まった、と教科書に書いてあります。・・・だから、きっと北条氏が御家人の土地をちゃんと守ってくれなかったので、御家人たちが新しい将軍が欲しくなり、それに答えて足利や新田が動いたのだと思います。」

生徒:「すげー答え!!」「みんな言っちゃったね!!」

教師:うん。良いところに気がついたね。・・・・・はい。●●くん。

生徒:「でも、今の皆の答えを見ると、鎌倉幕府を倒した人たちの目的は、人によって全然違います。」

教師:なるほど、そうだね。

生徒:「天皇や公家は武士にとられた土地や政治の実権を取り戻そうとしているけど、悪党や武士はもっと土地を取りたいと思っているし、足利や新田は、もっと強い幕府を作ろうと考えているから、全然違います。」

教師:うん。すごい。良いところに目をつけたね。・・・・・そうなんだ。そのとおり。・・・幕府を倒した人々のそれぞれの目的は全く違います。特に違うのは、後醍醐天皇と足利尊氏の考え。・・・じゃあ、これについての資料を配るので、見てください(資料@『後醍醐天皇と足利尊氏のねらい」を配る)

教師:資料の左側は鎌倉時代のしくみで、足利高氏が目指したのは、ほとんどこれと同じだと思われます。武士のことは基本的に将軍・幕府が治め、貴族の荘園は基本的に天皇が治めると言うかたち。これに対して、右側のしくみが、後醍醐天皇がめざしたしくみ。・・・これだと武士もふくめ、全ての人と土地とを天皇が治めるという形なんだ。・・・・そして悪党にとっては、どちらのしくみでも良く、要するに自分の土地が増えれば良いんだね。・・・と、まあ、こういうふうに、鎌倉幕府を倒した人々の目的は違っていたわけだよ。

教師:では、次の問題を考えてみようね。『幕府を倒した後、この人々の間に何が起きただろう?。』だ。

生徒:「これは、かんたんだな!」「うん。わかるよ」

(各自ノートに自分の考えをまとめる)

教師:では、みんなの考えを聞いてみよう。・・・・・・はい。□□さん。

生徒:「はい。これだけ目的が違うんだから、お互いに争いが起きたと思います。」

生徒:「同じです!!!」「賛成!!」「当然!!!」

教師:みんな争いが起きたと言うことで良いみたいだね。・・・・じゃあ誰と誰との間で起きたと思いますか。・・・・はい。●●くん。

生徒:「はい。幕府を作ろうとした有力な御家人と全部を支配しようとした天皇との間で起きたとおもいます。」

生徒:「賛成!!!」「僕も同じ!!!」「同じです!!!」

教師:じゃあ、武士や悪党はどうしたと思いますか?。・・・・・はい、▼▼さん。

生徒:「はい。幕府を作ろうとした有力な御家人のほうに味方したと思います。その方が自分の土地を守ってもらえるからです。」

生徒:「はい!!」

教師:はい。■■くん。何ですか?。

生徒:「はい。ちょっと今の意見は違うと思います。」

教師:どうちがうのですか?。

生徒:「はい。武士は幕府を作ろうとした有力な御家人に味方したと思うけど、悪党は御家人の武士の土地もとってしまう人たちだから、幕府の方で見とめなかたっと思うのです。・・・だから悪党は、天皇のほうに味方したと思います。」

生徒:「はい!。今の意見に!!!」

教師:はい。△△くん。

生徒:「はい。でも天皇に味方しても土地をくれないと思います。天皇は全部を支配したいのではないですか?。」

生徒:「でも武士は有力な御家人についてしまうから、それと天皇が戦うには武力がいります。そうすると天皇は自分に味方するものにはほうびとして土地を与えると言って味方につけたんじゃないかと思います。」

生徒:「でもそれじゃ、天皇は全部の土地や人を支配できなくなる!」

生徒:「でも天皇が土地を治める人を決めてそれから税を取る形にすれば、天皇が全部を支配しているのと同じじゃない?。」

生徒:「うーん。なるほど。」

教師:うん。良いところに気がついたね。・・・・じゃあ実際にどうなったのか、まず教科書を読んでみよう。76ページの「建武の新制と南北朝の内乱」です。・・・・だれか途中まで読んでくれますか?。・・・・・はい。@@くん。御願いします。

 幕府の滅亡ののち、後醍醐天皇は公家と武士を用いて、天皇中心の新しい政治をおこなった。翌1334年、元号を建武と改めたので、この政治を建武の新政という。しかし、新政は、公家を重く用いた急激な改革となり、領地をめぐる政策では方針の一貫しない命令がつぎつぎとだされて大混乱となり、武士のあいだに失望のがひろがった。

教師:はい。とりあえず、そこまで。

生徒:「領地をめぐる方針の一貫しない命令って何ですか?。」

教師:みんなが自分の領地を広げようとして、あれこれ相対立する証拠を持ってくるもんだから、同じ土地の持ち主がくるくるかわったりしたんだよ。

生徒:「そりゃたまらないな!!」「武士が不満を持つの当たり前だよ!!!」

教師:そうだね。・・・このころの様子をよく示している資料が資料集にあるから、ちょっと見てみよう。・・・55ページの『二条河原の落書』だ。

(各自で資料を読む)

生徒:「恩賞をもらうためにうその戦いを報告するんだ!」

生徒:「それをまた、認めちゃうんだね。」

生徒:「めちゃめちゃな政治になったということだ。」

教師:うん。そうだね。・・・・・じゃあ教科書の続きを読んでみよう。76ページの下から4行目から。・・・・はい。**さん。お願いします。

 このようなとき、足利尊氏が幕府を再興しようとして兵をあげたので、建武の新政は2年あまりでくずれてしまった。尊氏は朝廷方の軍を破り、京都に別の天皇を立てた(北朝)。後醍醐天皇は吉野(奈良県)にのがれて朝廷(南朝)をおいた。1338年に尊氏は北朝の天皇から征夷大将軍に任じられ、幕府を開いた。幕府と南朝は、それぞれ、全国の武士に味方するようよびかけて争ったので、武士は領地をひろげるのに有利なほうについて戦い、内乱は約60年間もつづいた。これを南北朝の内乱という。

生徒:「やっぱり武士は領地をひろげるのに有利なほうについて動いたんだ!」

生徒:「やっぱり地獄の沙汰も金次第だね」(笑い!!)

生徒:「先生、質問!!」

教師:はい。¥¥くん。何ですか。

生徒:「はい。幕府を作ろうとした尊氏に味方した天皇っているんですか?」

教師:うん。いるんだな。・・・・後醍醐天皇と対立して天皇をやめさせられた人。・・・引退して光厳院(こうごんいん)と言ったんだ。・・・尊氏はこの人に交渉して後醍醐天皇に味方したものたちを討てという命令をもらって戦いに勝ち、光厳院の息子を位につけて光明天皇とし、この人から征夷大将軍の位をもらって幕府を作ったんだよ。

生徒:「なんでこの人たちは幕府をつくろうとする尊氏の味方をしたんですか?。」

教師:うん。良い質問だね。・・・・朝廷・貴族の中には、後醍醐天皇が考えるような政治に反対の人たちが多かったんだよ。この人たちは武士の力には逆らえないから、幕府の力で全国を治めてもらって、幕府が武士たちに、年貢を朝廷や天皇・貴族に治めるように命令させたほうがうまく行くと考えていたんだ。・・・でも後醍醐天皇は武士などなくして、昔のように天皇が直接全国を治めると言ったもんだから、この人たちは後醍醐天皇と対立していたんだね。・・・尊氏は朝廷・天皇・貴族の年貢は保証することを条件に、この人たちの力を借りたんだ。

生徒:「へーっつ。複雑だね。」「でもこの人たちの考えのほうが正しいんじゃないの?。」

教師:そうだね。時間はかかったけど、結果的には後醍醐天皇の考えた政治はつぶれて、政治は武士にまかせる形になったからね。

生徒:「でもそれには60年かかったんだ。」

生徒:「長いね!!」

教師:そう。武士にとっては政治の形はどっちでも良かったんだね。・・・朝廷や天皇が2つに分かれて対立しているから、ちょうど良いからこのすきに自分の土地を広げちゃえって考えたんだね。

生徒:「やりどくだ!!」(笑い!!)

生徒:「地獄の沙汰も金次第だ!!」

教師:そうだね。・・・じゃあノートのまとめの問題をやってみよう。

(各自ノートの問題に取り組む)

まとめ:1333年の鎌倉幕府の滅亡後、後醍醐天皇は【@】中心の政治を行ったため足利尊氏らの【A】が反発して別の天皇をたて後醍醐天皇に対抗した。各地の【A】たちは【B】を広げるのに有利な方について戦ったので、この戦乱は約60年続いた。これを【C】という。

教師:じゃ、答え合わせをしよう。・・・・【@】は?。

生徒:「公家!!!」「天皇!!!」「貴族!!!」

教師:うん。天皇中心でも良いね。・・・次の【A】は?。

生徒:「武士!!!」

教師:じゃあ、【B】は?。

生徒:「土地!!!」「領地!!!」

教師:いいね。・・・じゃあ、【C】の戦乱は?。

生徒:「南北朝の内乱!!!!」

教師:よし。じゃあ、今日の授業を終わります。


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