<黄金の島・ジパング>A「世界の発見」
教師: さてこの地図を見てごらん。(地図を黒板に貼る。同じ物は教科書のp93にあることを指示する)
教師:この地図は1490年ごろにヨーロッパで作られた世界地図だ。この地図と現在の世界地図とを比べてごらん。何か違うね。
生徒:「アメリカ大陸がない!」
教師:そうだね。他には?。
生徒: 「オーストラリア大陸がない!」「太平洋がない!」
教師:そう。いろいろないね。まだ他に違うところがあるかな?
生徒:「すごく詳しくて正確なところと、ぜんぜん違っているところがある!」
教師:うーん。よくきがついたね。そのとおり。どこらあたりが、とても正確かな?。
生徒:「ヨーロッパ!!!」
教師:そうだね。ヨーロッパのあたり。だけど他の地域はかなり違うね。では、正確なところとはヨーロッパ人にとってどんなところかな?
生徒:「良く知っているところ!」「住んでいるところ!」「たくさんの人が行った事があるところ!」
教師:そうだね。じゃあ、正確ではないところはどんなところ?
生徒:「良く知らないところ!」「あまり行った事がないところ!」「行った事はないがそこの話しを聞いた事があるところ!」
教師:そうだ。そのとおり。では、この地図に載っていないところと言うのは?
生徒:「全く知らないところ!」「発見されていないところ!」(全員で大声で!!)
教師:よくできた。15世紀のヨーロッパ人は世界をまだ知らなかったということだね。よく知っていた世界は?。
生徒:「ヨーロッパだけ!!!」
教師:そうです。・・・・では、そのアメリカ大陸を最初に発見したヨーロッパ人は誰だ!
生徒:「コロンブス!」(良く知っているな!!!)
教師:そのとおり。でもなぜこの大陸にとコロンブスの名前がつかなかったのかな?(この問いにはみんな首をかしげる)じゃ、教科書p100の「コロンブスの航路」という地図を見てごらん。
教師:コロンブスはスペインの港から南西の方角に進んだんだが、その赤い線の航路を途中で引き返さないで其のまま真っ直ぐ伸ばしていくと、どこに達する?
生徒:「ジパング?」「違うよ!もっと先、大ジャワとか小ジャワのあったりじゃない?」
教師:そう。そのとおり。コロンブスは本当はジパングを目指したんだけど、地図で計算したあたりで島にであえなくて、予定より長い時間がかかって島についたので、彼はインドの東のジャワあたりか、何処かの島についたと思ったんだね。そしてなんどもスペインとの間を往復したんだけど、彼は死ぬまでそこがインドのそばの島だと思っていた。これがヨーロッパ人にとっては新しい大陸だとはじめて確認したのはコロンブスの友人のアメリゴ・ベスプッチという人。彼の名前がつけられてアメリカ大陸となったわけだ。
生徒:「知らなかったよ!!!」
教師:うん。おもしろい話だろ。・・・・さっきの地図に戻るけど、これも15世紀のヨーロッパの世界地図だけど、最初の世界地図と違うだろ。
生徒:「うん違う。」
教師:この地図は最初の地図との関係でいうと、ちょうど裏側にあたる。つまり丸い地球の、海を中心にした地図と、陸を中心にした地図なんだ。
生徒:「なるほど!!!」
教師:そしてコロンブスはこの世界地図を見て気がついたんだ。ヨーロッパの南、アフリカをまわってインドや中国やジパングに行くのではなく、ヨーロッパから西に海をわたって行ったほうが近いと。ところが彼にはお金がないからヨーロッパのあちこちの王様にこの計画を話して船と人とお金を貸してくれるようにたのんだんだ。でもだれも載ってこない。載ってこないどころか彼は気が違っていると思われたんだ。
生徒:「なんで?」
教師:うん。この時代のヨーロッパ人は、世界は平らでその平らな円盤の真中に島があって、これが自分たちが住んでいる所と考えていたんだ。
(地図を黒板に書く)
そして海を端まで行くと・・・。
生徒:「滝になって落っこちる?」
教師:そう。そう考えてたんだ。
生徒:「地球が丸いって知らなかったんだ」
教師:そうだよ。地球が丸くて太陽の周りを回っているってことはまだ一部の人しか知らなかった。
生徒:「じゃあ。大部分の人は?」
教師:大部分の人は世界は平らな円盤でその上に大きなボールがかぶさっていて、太陽や月や惑星はこのボールの表面を走っていて、星はボールから糸でぶら下がっている。
生徒:「じゃあ。その円盤は何の上に?」
教師:大きな象の上さ。
生徒:「ではその象は?」
教師:大きな亀の上に乗っているというわけさ。
生徒:「うーっ。ひどい」
教師:だからコロンブスの話しを誰も信用しなかった。でも一人だけコロンブスの話しを聞いてくれ、船と人とお金を貸してくれた人がいた。
生徒:「だれ?」
教師:スペインの女王イザベラだ。
生徒:「信じたわけだ」
教師:そうかな?。彼女はオンボロの船を貸してくれて、乗組員を募集した。コロンブスと言う冒険家と一緒に、海を西に行ってジパングに行くものいないかと。・・・・で、応じた人はいたか?。
生徒:「いない!!!」
教師:なぜ?。
生徒:「西に行けば落っこちると信じていたから!!」
教師:そうだね。だから女王イザベラが貸してくれた乗組員は、刑務所に入っていた犯罪者。だから予定どおりに島につかなかった時は、コロンブスが乗組員におどされたそうだ。・・・で予定よりかなり遅れて島について、それがみんなの知らないアメリカ大陸の東の小島だったというわけだ。そう言う意味で偶然なんだね。アメリカの発見は。
生徒:「でもなんでスペインの女王は行けるはずもないと思った西回りの行き方にお金なんか出したの。東まわりで行けば良いのに」
教師:良い質問だ。資料集のp72の地図をみてごらん。
教師:ヨーロッパの南のアフリカを回ってインドに行こうとしてた人が他にいたんだ。その人たちは其の地域を征服しほかの国の船は通さなかった。何処の国だ?。
生徒:「あっっつ。ポルトガルだ。」
教師:そう。ポルトガルだ。だからスペインは西に回るしかなかった。やがてポルトガルのバスコ・ダ・ガマがはじめてアフリカの南端をまわってインドに到達した。それはいつ?
生徒:「1497年から99年」
教師:そうだね。そしてそのあと、ポルトガル人のマゼランがアメリカの南をまわってはじめて太平洋にたっし、かれは途中で死んだけどかれの家来が其のまま航海を続けてポルトガルに帰ってきて、はじめて世界一周をしたんだ。こうして世界は「発見」されたわけだ。スペインとポルトガルは、争ってインドや中国やジパングを目指していたんだね。・・・・ところで、ここで問題だ。ポルトガルやスペイン人はインドや中国や日本に何を求めて行ったのだろうか?
(各自ノートに自分の意見を書く)
教師:さあ、どうかな?。・・・・・はい。△△くん。
生徒:「はい。金です。」
教師:どうして?
生徒:「黄金の島ジパングだろ」
教師:なるほど。・・・・・他の国は?。例えば中国しか出来なくて世界中の人が欲しがった織物といえば・・・。
生徒:「絹織物」
教師:そうだね。・・・昔から人々は中国の絹が欲しくて、陸路を使って中国に行ったな。・・・その道は後になんと呼ばれた?。
生徒:「シルクロード!!!」
教師:正解。・・・じゃあインドは?(みんなわからず首をかしげている)。ほら、料理に使うスパイスで・・・ 。
生徒:「コショウ?」
教師:そう。当たり!。他にもいろいろあるんだ。・・・例えばインドや中国はヨーロッパ人の主食の作物が良く取れる。なんだかわかるかな?。
生徒:「・・・・・・・・?。」「わかった!!。パン!!」「小麦だろ!!」
教師:そう。小麦。ヨーロッパは小麦はあまりとれなかった。だから普通はライ麦とかカラス麦とか大麦とかをつかった黒いパンを食べていたんだ。世界で小麦がたくさんとれるのはこのあたり(地図で熱帯から温帯のあたりをさす)。つまりヨーロッパが小麦があまりとれないのは?。
生徒:「寒いから!!!」
教師:そう。正解。それにヨーロッパは北にあるので、長い間地面を厚い氷が覆っていて、大きな岩や石ころが土に混じっているので、土が悪い。15世紀ごろだと、ヨーロッパで一番小麦がとれるフランスと中国とを同じ面積の畑で小麦の取れ高を比べてみると、ヨーロッパは中国の3分の1以下しかとれなかったそうだよ。・・・それからインドや中国と言うと、服につかう繊維がとれるね。・・・軽くて薄くて風通しがよく、しかも重ね着すると暖かい服の原料。
生徒:「・・・・・・・・?。」「あっつ、綿?。」
教師:そう。正解。綿。・・・でもヨーロッパでは綿はとれない。綿がとれるのはここらあたり(地図で熱帯から温帯のあたりを示す)。
生徒:「暖かいところだ!!」
教師:そう。だからヨーロッパ人は寒いときは何を着るかというと?。
生徒:「羊の毛!!!」「毛皮!!!」
教師:そうです。動物の毛。・・でもこれは厚くて重い。・・・だから綿を欲しいんだね。・・・ヨーロッパ人がインドや中国やジパングに求めたものは、どれもヨーロッパでは取れないかあまり取れないものばかりだ。
生徒:「先生。質問!」
教師:はい。なんでしょう。××くん。
生徒:「ジパングって日本のことでしょ。」
教師:そうだよ。それで?。
生徒:「日本ってほんとに金がいっぱいあったの?。」
教師:うん。あったんだよ。・・・資料を出そうか?。資料集のp52の黄金のジパングを出して読んでごらん。
生徒:「でも、うそでしょ。屋根も床もみんな金の建物があったなんて。」
教師:いや。本当だよ。・・・みんなも知ってるよね。屋根も床も天井も壁も全部金の建物を。
生徒:「・・・・・・・?。」「わかった!!!金閣寺!!!」
教師:そう。正解。・・・資料集のp56にあるね。
生徒:「うわっつ、すげー!!!」「全部金でできてるの?。」
教師:いや。表面に薄い金で紙みたいな薄さのものを貼ったんだけどね。
生徒:「でもすごいや!!!」
教師:もっともマルコポーロがうわさを聞いたのは金閣のことではなくて、別のもの。マルコポーロは鎌倉時代の人。金閣は室町時代だろ?。
生徒:「あっつ、そうだね。」
教師:マルコポーロがうわさを聞いた金の建物は・・・・資料集のp41にある、中尊寺金色堂だ。
生徒:「うわっつ、すごい!!」
教師:うん。けっこう小さいもので、この教室にも入るくらいの大きさだけどね。
生徒:「仏像まで金が貼ってある!!」
教師:そうだね。仏像も金が貼ってあるね。・・・でも日本じゃあめずらしくないね。奈良の大仏だって出来たときは全身に金が貼ってあった。
生徒:「すげー!!」「日本って金がたくさんあったんだね。」
生徒:「先生。質問!!」
教師:なに?。××くん。
生徒:「日本って今でもたくさん金があるのかな?。・・・ないんじゃない?。」
教師:うん。良い質問だね。・・・今はほとんど取れないんだ。
生徒:「取りすぎちゃったの?。」
教師:そう。江戸時代にね。・・・ほとんど掘っちゃった。・・・江戸時代までは世界でも金を最も多く産する国だったんだよ。
生徒:「へえーっつ!。知らなかった!!」
教師:ところで話は変わるけど、大変というと、当時の船で航海するのはとても大変だったんだ。何が大変かわかるか?。
生徒:「嵐?。」
教師:そう。嵐。・・・・ヨーロッパのあたりではあまりないけど、大西洋やインド洋や太平洋を船でいくと、恐ろしいものに出会うね。
生徒:「台風?。」
教師:そう。台風。台風は最大風速50mとかになるから、海の波も高さ30mなんてものに襲われる。この校舎の2倍ぐらいの高さだね。
生徒:「すげーっつ!!」
教師:うまく波に乗っても、次には・・・・?。
生徒:「落ちる?。」
教師:そう。高さ30mから真っ直ぐ下の海面に叩きつけられる。
生徒:「船が壊れるジャン。」
教師:そう。下手すればバラバラ。・・うまくいっても波を横からかぶれば・・・・?。
生徒:「沈没!!!」
教師:そう。沈没。、それ以外にもいろんな病気になる。
生徒:「どうして?」
教師:そうだね。航海中に食料がいるわけだが、運んでて腐ってしまうものもあるし、運べないものもある。栄養失調やそれからくる病気になるんだろうね。・・・それに嵐に巻き込まれると船は右に左に大揺れ。・・・揺られているうちに・・・?。
生徒:「おえっつ!!」(爆笑!!!)
教師:そう。船酔いで吐いてしまう。・・・そしてこれが何日も続くんだから・・・・・。
生徒:「ご飯が食べられない?。」
教師:そういうわけです。・・・・ ところでここで、最後の問題。『なぜ、ヨーロッパ人は海を通ってインド・中国・日本へ行こうとしたのだろうか?』
生徒:「どう言う意味?」
教師:そうだね。インド・中国・日本に行くには海の道しかないのかな?。
生徒:「ある!!」「シルクロード!!」
教師:そうだね。陸だよね。資料集のさっきの地図でも良いし、教科書のp102・103の地図でもいいからみてごらん。ヨーロッパからインド・中国にむけて東へ道路が走っていたね。問題は『なぜこの陸のシルクロードを使わないのか』ということ。昔から使っているから、道は知っていたわけだし、わざわざ探す必要もない。『どうして陸の道を使わずに海の道をつかってインド・中国・日本にいこうとしたのか?』これが問題だ。
(各自ノートに自分の意見を書く。ノートに書く音)
生徒:「うーん。わかんないな。なんかヒントない?」
教師: ヒントはその地図だけ。よーく見てごらん。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ じゃあ。自分の意見を発表してみよう。・・・はい。○○くん。
生徒:「海の方が早い」
教師:どうして?
生徒:「だって陸は途中に高い山や砂漠があって大変だよ。海のほうが風に乗れば早いと思う」
教師:なるほど。他には?・・・・はい。■■くん。
生徒:「海の方がたくさん荷物を運べる」
教師:どうして?
生徒:「陸は馬かラクダでしょ。そんなに荷物運べない」
教師:うーん。それは一理ある。でも海もすごく危険だよね。海賊はいるし嵐には会うし。それだけが理由かな?
生徒:「もしかして、途中で邪魔が入る?」
教師:どういうこと?説明してみて?。◎◎さん。
生徒:「はい。地図を見ると、ヨーロッパとインド・中国の間に他の国があるでしょ。それが邪魔するんじゃない?」
教師:なるほど。具体的にはどんな事が起きると思う?(みんなに聞いてみる)
生徒:「通る人に金を払わせる」
教師:なるほど。ほかには?
生徒:「通る人から運んできた品物を一部取り上げる」
教師:なるほど。でもどうして?。
生徒:「だって、金や絹織物やなんかはもうかるじゃないか。」
教師:なるほど。だったら、もっと良い手がない?。
生徒:「通さない」
教師:それで?。
生徒:「自分たちがインドや中国に行って買ってきて、それをヨーロッパ人に売る」
教師:どんな値段で?。
生徒:「当然。うんと高く」「あっつ。だからヨーロッパ人は海を通って直接インドや中国に行こうとしたんだ。」
教師:そうかもね。じゃあ、その邪魔した国の名は?
生徒:「オスマン帝国」「トルコ!!!」
教師:その通り。
生徒:「そんなのつぶしちゃえばいいじゃん。」
教師:良く見てらん。地図を。・・・スペインやポルトガルとオスマン帝国の大きさを。
生徒:「でけーっつ!!」
教師:そう。でかい。・・・そのうえ、鉄砲を発明したのはこのトルコの国だし大砲も持っていた。こんな国に勝てるわけないね。
生徒:「なるほど!!」「だから海を行ったんだ!!!」
教師:そう。こんな理由でヨーロッパ人は海を渡ったのかもしれないね。・・・じゃあ、最後にまとめの問題をやっておこう。
○まとめ ヨーロッパ人は昔から【 @ 】を通じて中国・インドと貿易してきたが、直接行った人は少なかったので ヨーロッパ人が知ってる世界は【 A 】だけだった。 しかし15世紀に【 B 】が【@】を支配したので中国・インドに直接行くこともできなくなり、マルコ・ポーロ の黄金の島【 C 】の伝説も影響して、ヨーロッパ人は【 D 】を渡って直接アジアを目指すようになった。 |
教師:いいかね。・・・じゃあ@は何が入る?。
生徒:「シルク・ロード!!!」
教師:そう。正解。・・・ではAは?。
生徒:「ヨーロッパ!!!」
教師:いいね。・・・じゃあBは?。
生徒:「トルコ!!」「オスマン帝国!!!」
教師:そう。オスマントルコ帝国。・・・・では、Cは?。
生徒:「ジパング!!!」
教師:そうだね。ジパング。・・・そして最後にDは?。
生徒:「海!!!」
教師:よし。これで今日は終わり。次回は、そのヨーロッパ人に「発見された」国の人々はどうなったかを学習しよう。