<黄金の島・ジパング>B:「神の名」の下に
教師:きょうは、新しい大陸を発見したヨーロッパ人が、そこで何をしたかを考えてみよう。まず最初に「来航したヨーロッパ人を現地の人はどんなふうに扱ったか」を考見てみよう。・・・・教科書のp101の図3の絵を見てみようよ。
教師:この絵の真中より手前に、飾りのついた帽子をかぶって、左手に槍をもって右手を腰にあてた人が書かれているだろ。
生徒:「うん。いるいる。」
教師:これがコロンブスなんだ。・・・そしてその後ろに二人、鎧を着て武器を持っているのが彼の家来。・・・この家来が肩に担いでいる武器は何だかわかるかな?。
生徒:「・・・・・・・・・?。」「あっつ、鉄砲?。」
教師:そう。鉄砲だ。・・・そして後ろに見える3隻の船が、コロンブス達が乗ってきた船。・・・最後に、コロンブスの向かって右手にいる人たちが、コロンブスが到着した島の人たち。
生徒:「あれっつ。ほとんど裸だよ!」「えっつ、どれどれ、ほんとだ!!」「パンツしかはいてない。」「ばか!。これはふんどしだ!!」(爆笑!)
教師:そう。ここは北アメリカ大陸の東の島で、かなり赤道に近い暑いところだからね。コロンブスはここはインドに近い所だと思っていたから、彼らのことを「インディオ」と呼んだ。スペイン語で「インド人」と言う意味。英語ならインディアンだね。
生徒:「インディアンてそう言う意味だったの。」
教師:そう。そういうこと。・・・ところでこのインディオ達、今何をしているところなのかな?。
生徒:「何かあげようとしている!!」「あっつ、ほんとだ。いろんな物をあげている」
教師:どんなものをあげているかな?。
生徒:「首飾り」「頭に載せる冠かな?」「カップもあるよ!」「カップかな?」「お酒入れるあれじゃないか」「あっつ、グラスだ」「そうかもね」・・・・・・・
(生徒たちは絵を詳しく観察し口口に叫んでいる)
教師:そうだね。これは金や銀でできたもので、それにたくさんの宝石がついていたんだ。
生徒:「へーっつ、すげー!!」
教師:ということは、ヨーロッパ人が始めてやってきたとき、その土地の人は彼らをどうしたのかな?。
生徒:「お客さんとしてあつかった!!!」「歓迎して贈り物をあげた!!!」
教師:そうだね。・・・じゃあ問題だ。『なぜ現地の人はヨーロッパ人を歓迎したのか』。
生徒:「えーっつ。かんたんじゃん」「そうかな?」
教師:いろいろあるかもしれないけど絵を良く観察して考えて自分の考えをノートに書いてごらん。
(ノートに書く音)
教師:では、みんなの考えをきいてみよう。・・・・・はい。■■くん。
生徒:「はい。なんか強そうだから、逆らうと危ないと思ったからだと思います。」
教師:どうして?。
生徒:「絵で見てると鎧とか兜とかつけて鉄砲も持ってるじゃない。インディオはハダカみたいで弱そう」
教師:なるほど。他には?・・・・・はい。××くん。
生徒:「はい。すごい立派な服着ているから、歓迎して何かもらおうと思ったんじゃないか」「今までほかの国の人が来たことないからめずらしくてかんげいしたんじゃあないの? 」
教師:なるほど、他には?・・・・・・はい。○○さん。
生徒:「はい。神様に間違えたんじゃないのでしょうか?」
教師:どうして?。
生徒:「絵で見るとコロンブスの後ろで十字架を立てていて、十字架はキリスト教の印だから。それにすごく立派な服も着ているし。」
教師:なるほど。・・・・他にはない?。・・・・じゃあ、今の意見のどれにみんなは賛成?(これは意見が分かれた。少し神が多いみたい)・・では、資料を見てみよう。ヨーロッパ人がはじめて南アメリカのインカという国に行ったときの記録だよ(資料Bインディオの見たスペイン人を配布する)。
<黄金の島・ジパング>資料B「インディオの見たスペイン人」 ○スペイン人到着をインカ王につげたインディオの言葉 王様! 私どもがはるばる当地までやって来ましたのは、これまで私どもの国では見たことも聞いたこともない類の人々が、あなたさまの国にやって来たことをお知らせするためでございます。 このような人たちは神以外の何者でありえましょうか。 (岩波書店刊「インカの反乱」より) |
生徒:「神様に間違えたんだ」
教師:そうだよ。ところでなんで間違えたのかな?
生徒:「風に乗ってやってきたと告げているから」「とてつもなく大きな羊の上に乗っているから」「稲光と雷を発するから」「白い布切れを見て独り言をつぶやくから」「立派なひげをたくわえ肌は白いから」・・・・・・・・・・
教師:そうだね。・・・・ところで風に乗ってきたというのはほんだよね?。
生徒:「船に乗ってきた」「風で動く船だ」「だから風に乗ってきたと言ったんだ」
教師:そうだね。・・・ということはインディオは大きな風で動く船を・・・
生徒:「見たことがない!!」
教師:そういうことだ。・・・じゃ、とてつもなく大きな、銀の足をした羊って?
生徒:「・・・・・・・・?。」 「馬?」
教師:そう。当たり。・・・じゃあその馬が銀の足をしていると言うのは何?。
生徒:「ひづめ?」
教師:うん。ひづめじゃなくて、それにつけた・・
生徒:「U字型の金属だ!!・・・なんていったっけ?」「蹄鉄!」「それだ!」
教師:そうだね。つまりインディオは馬を見たのは・・・
生徒:「初めて!」
教師:そうだ。・・・・では、稲光と雷とを発するって?。
生徒:「鉄砲?」
教師:そう。鉄砲。
生徒:「どうして、稲光と雷なの?」
教師:うん。 昔の鉄砲は撃つと大きな音がして真っ黒な煙を大量に吐いた。その音のすごさは、ビックリして馬が跳ね上がって乗っている人を振り落としたくらいだそうだ。そして鉄砲は今でも、銃口から火を吹くね。
生徒:「それでか・・・」
教師:ということはインディオは鉄砲を見たのは・・・・
生徒:「初めて!」
教師:そう言う事だね。・・・・・それでは、この見ながら独り言をつぶやいたって言う白い布は?。
生徒:「・・・・・・・・・・・・・・・・?。」「紙?」
教師:そう。紙。・・・・じゃあ、独り言をいったっていうのは?
生徒:「紙に字が書いてあったんだ」
教師:そのとおり。字を読んでいたんだね。つまりインディオは字と紙を・・・
生徒:「見たことがない!」
教師:そう。不思議な事をする人たちなので、それで神様または神の使いだと感じたんだね。
生徒:「じゃあ。肌が白くというのは?」
教師:うん、それはね。インディオの伝説では神様は白い肌をしひげを生やしていたというそうだ。そして大きな船に乗って東の海から現れるという伝説になっていたどうだよ。
生徒:「それで、勘違いしたんだ」
教師:そう。・・もっともヨーロッパ人たちもこの勘違いには気がついて、自分たちは神ではなく、神の使いだと訂正したそうだ。
生徒:「なんで神の使いなの?。」
教師:うん。彼らとしては、世界の探検は、神に見つけた土地を捧げるという意味も持っていたんだ。・・・さっきの絵で、コロンブスの後ろで、家来たちが十字架を建てていただろ?。
生徒:「うん。やってた。」
教師:十字架を建ててこの土地を神に捧げるということなんだ。・・・そう言う意味で彼らとしても、彼らは神の使いとして見知らぬ土地を探していたんだ。「神の使い」というのもあながち嘘ではないんだよ。
生徒:「でもそれを聞いてインディオたちは、ヨーロッパ人の前にたくさんの贈り物。とりわけ金や銀の財宝を積み上げたと言うわけだね。」
教師:そう。・・・・・ではここで問題。『大量の金銀を見たヨーロッパ人はどうしただろうか?』。自分の意見を書いてみよう。
(各自ノートに自分の意見を書く)
教師:いいかな。・・・はい。△△くん。
生徒:「うーん。もらった。」
教師:それだけ?・・・他には?。・・・はい。□□さん。
生徒:「はい。もっと欲しいと言った」と思います。
教師:どうして?。
生徒:「黄金の島ジパングを目指していたわけでしょ。だから金が欲しかったのだと思う。」
教師:なるほど。・・・・それだけかな?
生徒:「えーっつ。もっとやったの?」
教師:そう。もっとやった。・・・・何を?。
生徒:「もっと出せってインディオを脅した?」
教師:そう。どうやって?。
生徒:「鉄砲で?」
教師:そう。インディオの王様たちが歓迎の席でお酒を飲んで酔っ払ったところでいきなり王様を人質にして「家一軒分の金銀を持って来い」と脅したんだ。
生徒:「インディオは持ってきた?」
教師:持ってきた。
生徒:「王様は釈放されたの?」
教師:釈放されたがまたしばらくすると同じことの繰り返し。
生徒:「インディオは怒らなかったの」
教師:当然怒るね。
生徒:「まだ、神の使いだと信じていたのかな?。」
教師:当然、おかしいと思うね。そして、どうする?。
生徒:「武器を持ってきてヨーロッパ人を襲う」
教師:そうだね。でも勝敗は?。
生徒:「ヨーロッパ人の勝ち!」
教師:なんで?。
生徒:「ヨーロッパ人には鉄砲があるけど、インディオにはない。」
教師:そのとおりだね。そして彼らは馬も見た事がなかった。・・でスペイン人はたった200人の馬に乗った鉄砲部隊で、この国を征服したんだ。でもその後も、インディオたちは何十年もヨーロッパ人と戦ったんだよ。山の中に隠れてヨーロッパ人と戦った。でもだんだんじり貧になってね。そのうちにスペイン人のキリスト教の御坊さんも入ってきて、戦いに疲れたインディオの中にはキリスト教の信者になってスペイン人に従うものもでて、最後は、抵抗した人たちも降参して、征服されたんだ。
生徒:「植民地になったんだ!!。」
教師:そう。ここは植民地になった。そしてスペイン人はどんどん金や銀の器や飾りを持って行ってしまい、そのうちなくなった。
生徒:「もうとるものないね。」
教師:そうかね。ないかな?。
生徒:「わかった!!!。金や銀を掘らせればいいんだ。」
教師:だれに?。
生徒:「インディオ!!!!」
教師:そうだね。じゃあ。植民地になったアメリカがどうなったか。資料集で見てみよう。資料集p73を開けてみよう。2のアメリカ大陸の実態だね。
生徒:「こんなにたくさんの金があったんだ!!」
教師:そう。たくさんあったんだね。・・・そしてインディオの男は金の高山に、そしてインディオの女はサトウキビ農園に連れていって働かせた。
生徒:「男女別々?。」
教師:そう。男女別々。・・・そそてたいしたものも食べさせずになぐったり蹴ったり。だからインディオはだんだん・・・・。
生徒:「死んで行く!!!!」
教師:そう。死んで行く。・・・・その結果は、その右のグラフだ。
教師:コロンブスが発見したカリブ海地域のイスパニョーラ島では、人口38万とも300万とも言われたインディオが、100年後の1580年にはわずか125人にまで減ってしまった。
生徒:「ひどい!!!」
教師:そして、メキシコ中央部のアステカ帝国では、2500万の人口が110年後の1600年には107万人。アンデスのインカ帝国では、人口887万人が、100年後の1620年には、67万にまで減ってしまい、 鉱山や農園で働くインディオがいなくなってしまった。・・・ではここで問題です。「働き手を失った鉱山や農園を維持するためヨーロッパ人は何をしたか?。」・・・・ どうしたと思う?。・・・自分の考えを書いてみよう。
(各自、自分の意見をノートに書く)
教師:では、聞こう。・・・・はい。××くん。
生徒:「自分で働いた?」「まさかあ」
教師:じゃあ何?。・・・はい、△△さん。
生徒:「働く人を連れてくる?」
教師:どこから?。
生徒:「ヨーロッパから?。」
教師:いや違う。・・・・ヒント。今アメリカにはヨーロッパ人の子孫の肌の白い人たちと、インディオの子孫の肌の僕たちと同じ人たちと、もう一つ違う肌の色の人たちがいるね。
生徒:「黒人?」
教師:そう。肌の黒い人って他にはどこにいる?。
生徒:「・・・・・・・・・・・?。」「アフリカ?」
教師:そう。アフリカだよ。
生徒:「アフリカからつれてきたの?」
教師:そう。
生徒:「どうやって?」
教師:じゃあ、教科書にとても詳しい資料があるから、これを読んでみよう。教科書p106と107.
深める歴史6 奴隷貿易 いまの私たちには,「人が商品のように売買された」ことを信じることはできないでしょ う。しかし,かつての世界では,この非人道的な売買がひろくおこなわれていたのです。とく に16世紀から19世紀にかけては,アフリカからたくさんの黒人がヨーロッパ人によって奴隷と して「輸出」されているのです。その人数は,1,500万,あるいは5,000万と推計するなど,諸 説があります。また無事にアメリカ大陸の港についた人数でみても,950万にも達するともい われています。なんのために,どこに黒人たちは連れていかれたのでしょうか。 @ヨーロッパの商人は,アフリカの部族の王や黒人の奴隷貿易商人から奴隷を綿織物やガラ ス・金属器・鉄砲などと交換して手にいれた。 こうしてとくにカリブ海諸島には,黒人奴隷を使った大規模な農園が発達し,のちには北アメリカの綿花栽培にも奴隷制度が導入された。 F奴隷貿易は19世紀までつづけられたが,アフリカではおもに労働力となる青年層が大量に 流出したため,社会の発展がおくれることになった。また,のちにアメリカ合衆国などで は黒人差別問題がおこった。 |
教師:まず大事なのは@とAだね。ヨーロッパ人はだれから大量の奴隷を手に入れたかだ。
生徒:「アフリカの部族の王や奴隷商人から!!」
教師:そうだね。・・でどうやって手に入れたの?。
生徒:「綿織物やガラスや鉄砲と交換!!」
教師:そう。・・・つまり貿易だね。・・・そしてアフリカの王たちは奴隷を売るともうかることがわかると・・・。
生徒:「他の部族に戦いをしかけて、捕虜にした!!!」
教師:そうだね。・・・アフリカはまだ一つの国ではなかった。・・・それでアフリカの中に奴隷を手に入れるための戦争が起きてしまったんだね。こうやって手に入れた奴隷は1500万人とも5000万人とも言われているが、無事に大西洋をわたってアメリカについたのは?。
生徒:「950万人!!!」「半分以上が途中で死んだんだ。」
教師:そうだね。
生徒:「うーん。ひどいな。アフリカの人も騙されているって感じだね」
教師:そうだね。・・・・こうやってアメリカから大量の金や銀が掘り出され、ヨーロッパに持ち出されたんだ。じゃ、その金や銀がどれぐらいの量か。資料を見てみよう。(資料C新大陸からスペインに入った金銀の量を配る)
<黄金の島・ジパング> 資料C「新大陸からスペインにはいった金銀」
※大石慎三郎著「江戸時代」(中央公論新書)より |
教師:大事なのは、それぞれの時期にスペインに運び出された金や銀が、その時期の世界の生産量の何%を占めていたかだね。金は一番多い時で何%?。
生徒:「64%!!」
教師:じゃあ、銀は?。
生徒:「89%!!!!」「すごい量だね。」
教師:そう。・・・こうやって偶然発見したアメリカから大量の金銀を掘り出したスペインやポルトガルが、次に向かったのはいよいよ、黄金の島ジパングだ。
生徒:「日本だね。」
教師:そう。・・そのことは次の時間にやることにして、最後にノートのまとめの問題をやっておこう。(各自問題にとりくむ)
○まとめ ヨーロッパ人は、自分たちを【 @ 】の使いだと思わせたり【 A 】の利益でアメリカやアフリカの王を手なずけておいて、征服した。そしてアメリカでは、【 B 】を掘らせたり農作物を作らせて、多くの【 C 】を死なせ、アフリカの人々を捕まえて【 D 】にしてアフリカに運んだりした。こうしてアメリカ・アフリカはヨーロッパ諸国の【 E 】になった。 |
教師:では、いいかな?。・・・・@のかっこは。
生徒:「神!!!」
教師:そうだね。・・・ではAは?。
生徒:「・・・・・・・・?。」「貿易?。」
教師:そう。正解。・・・・・・・ではBは?。
生徒:「金!!!」「銀!!!」
教師:いいね。金銀。・・・・ではCは?。
生徒:「インディオ!!!」
教師:うん。では、Dは?。
生徒:「奴隷!!!!」
教師:そうだね。奴隷。・・・じゃあ最後のEは?。
生徒:「植民地!!!」
教師:よし。正解。・・・では今日の授業は終わり。次は日本にヨーロッパ人がやってきたとき日本人はどう対応したかを見てみよう。