<黄金の島・ジパング>Cあこがれのヨーロッパ
教師:さて今日は、ヨーロッパ人が日本にやってきたとき、日本人はどんな対応をしたかを見ておこう。最初に資料集74・75ページの屏風絵を開けてください。
教師:これはある時やってきたヨーロッパ人の一行を描いた屏風絵です。真中に大きな日傘をさしているのがこの一団の司令官。そのうしろの人たちが乗組員です。良く見るとヨーロッパ人ではない人も含まれているね。
生徒:「黒人がいます」
教師:そう。この人たちは何ですか。
生徒:「奴隷です」
教師:そうだね。ヨーロッパ人たちの奴隷として使われているわけだ。ところでこの一行はトラや犬や馬も運んできたね。このトラなんかどうするんだろう。
生徒:「皮をはいで売るんじゃないの?」「いや、日本のえらい人に贈り物にするんだよ」「そうかな。この絵の中にトラの皮を売ってる店があるよ」「あっほんとだ」「でもこれはわざわざ折に入れて持ってきたんだからきっと贈り物だよ」
教師:そう。トラは日本にはいない動物だから贈り物かもしれないね。ところで、トラを日本のえらい人に贈ってどうするのかな?。
生徒:「貿易したいって頼むんじゃないかな」
教師:なるほど。じゃ、そのえらい人って誰かな。
生徒:「大名」「将軍」「天皇」
教師:これっていつごろの話しだっけ。・・・・室町・戦国時代なんだ。 じゃ、だれが一番力があったんだっけ。
生徒:「将軍」「ちがうよ。大名」「織田信長だ―」「天皇じゃない?」「ちがうよ。天皇は力がなくて家もボロボロだってやったじゃないか」「あっそうだっけ」・・・・(勝手に討論している)・・・
教師:うん。戦国時代って言うのは諸国の大名がお互い争っていた時代で、誰が一番ってわからない時代だね。おそらくヨーロッパ人は各地の大名や将軍やなんかに贈り物して貿易の許可を求めたんだろうね。・・・・ところでこの絵の右端に黒い長い服をきたヨーロッパ人がいるね。
生徒:「バテレン!!!」「イエズス会の修道士!!!」「何?。修道士って?。」
教師:うん。これはキリスト教を広めるために日本に来た、御坊さんたちだね。・・・・・でこの人たちのまわりにはいろんな日本人がいるね。
生徒:「家来をつれた武士もいるよ!」「なんかへんな爺がいる!」「子供もいる!!」「御店から女の人も顔を出している!!!」
教師:そうだね。いろんなひとが集まっている。この人たち何を思って集まったのかな?。
生徒:「めずらしいのか来た!!!」「見物!!!!」
教師:そう。そんな感じだね。・・・・ところでヨーロッパ人が日本にもたらしたものの中にはキリスト教もあるんだ。そのページの資料にキリスト教の伝来という資料があるね。
教師:それによると、日本にキリスト教を伝えた人の名前が書いてあるね。
生徒:「うん。あるある」 「ザビエルだ!!!」(爆笑!!)(私のあだなが「ザビエル」なもので・・・・)
教師:そう。ザビエルだね。・・・で、かれが最初に上陸してキリスト教を伝えたのはどこかな?。
生徒:「鹿児島!!!!」
教師:そう。鹿児島だね。・・・ザビエルは日本に来る前に、インドでヤジローという日本人にあって、日本語を勉強していたんだ。
生徒:「なんで、そんなところに日本人がいたの?。」
教師:うん。本人の話によると、鹿児島でケンカのはてに人を切ってしまい、そこにいられなくなったので、船で逃げて、それでインドまで流れてきたら しいよ。・・・そのヤジローにあってザビエルは日本についていろんなことを教わるかわりに、ヤジローの知りたいことは何でも教えたそうだ。後にザビエルは日本人について、こう言っている。『世界中で日本人ほど、礼儀正しく、かつ好奇心が旺盛で、何にでも興味を持ち、また教わった事はたちどころに理解してしまう国民はいない』と。そしてザビエルが鹿児島につくと、この言葉どおりにたくさんの日本人が彼の所を訪れ、さまざまな質問をしたそうだ。どこから来たのか?。何しに来たのか?。キリストの神とは仏教や神道の神とどこが違うのか?。・・・など、いろんな質問を浴びせられたそうだ。そしてザビエルはきちんと説明したんだね。・・・キリスト教の御坊さんは単なるお坊さんではなくて、いろんなことを知っているんだよ。数学も、天文学も。地理の知識もあるし歴史も良く知っている。そして医学もね。・・だからどんな質問にでも答えられる。
生徒:「すごいね!!」
教師:そう。すごい。・・・でもザビエルも日本人の好奇心のすごさには感心したんだ。・・・・日本人の外国人に興味を持ち、どんどん真似しようという態度が見られるね。・・・そしてザビエルはそのあと鹿児島をたって、地図の赤い線にそって東に移動していった。・・・どこに行ったの?。
生徒:「京都!!!」
教師:そうだね。京都まで行ったね。・・・将軍と天皇にキリスト教を広める許可をもらいにいったんだけど、その許可は得られず、彼はまた西に戻り、キリスト教を保護してくれる、中国地方や九州の大名のところでキリスト教を広め、その後インドに帰っていったんだ。・・・でもその後どんどんキリスト教の信者は増えていったんだね。資料のグラフを見てごらん。
生徒:「うん。増えてる。増えてる。」
教師:どんどん増えて1614年には37万人にもなったんだ。
生徒:「少ないじゃん」
教師:そう。今から見ればね。当時の人口は約3000万人。ということは何人に一人がキリシタン?。(一生懸命計算をしている・・・)
生徒:「約100人に一人!」
教師:そうだね。でもこれは西日本が中心だったというから西日本ではもっと割合が高くなるわけだ。・・・・ここで問題。「なぜ急速にキリスト教の信者が増えたのだろう」 自分の考えをノートに書いてみよう。
(各自ノートに自分の考えを書く)
生徒:じゃあ自分の考えを発表してみよう。・・・・はい。□□くん。
生徒:「はい。キリスト教の教えがとても良いので気に入ったからだと思います。」
教師:なるほど。教えが良かったね。・・・他には?。・・・はい。△△さん。
生徒:「はい。ヨーロッパの文化にあこがれていたので、自分もヨーロッパ人になりたいと思って入ったのだと思います。」
教師:なるほど。自分もヨーロッパ人になりたいね。・・・・他には?。・・・はい。○○くん。
生徒:「はい。ヨーロッパ人の真似するのが流行っていたからだと思います。」
教師:なるほど。流行ね。・・・他には?。・・・はい。■■さん。
生徒:「はい。ヨーロッパ人の技術や文化に興味を持って、もっといろいろ知りたかったから「ヨーロッパ人と仲良くすれば、もっとたくさん手に入れられると思ったから」
生徒:「はい。日本人はヨーロッパ人を歓迎して、どんどん貿易をしたんだと思います。」
教師:なるほど。どれもありそうだね。・・・・・・・・・・・・・ところでヨーロッパ人がやってきた時のこの時代の日本人の反応だけど、資料集のp75の「17世紀前半の京都四条河原の歌舞伎見物客」という資料をみてごらん。
教師:ここにへんな格好をしている人がいないかな?
生徒:「?」
教師:ほら、日本の服としてはちょっと変なもの・・・。
生徒:「あっ ひだえりを着けているやつ?」
教師:そう。それだ。さっきの屏風絵のヨーロッパ人の格好と比べてご覧?
生徒:「みんな首のところにひらひらのえり着けてら!」「えっどれどれ」「ほんとだ!」「これを真似したんだね」
教師:そう。そのとおり。この時代はヨーロッパ人がもたらしたものが流行ってね、ヨーロッパ人の真似をする人がたくさんいたんだ。他にもいるよ。今の男の少し前のキセルを持った男がいるだろ。
生徒:「うん。いるいる。」「キセルってなに?」「タバコ吸うやつだよ」「じゃ、タバコもこの時代に日本に伝わったんだ」
教師:そう。いろんなものが日本に伝わった。・・・その下の絵もそうだね。
教師:この絵は何をしているところ?。
生徒:「カルタ!!!」「うんすんかるた!!!」
教師:そうだね。カルタだ。ところでカルタって何語?。
生徒:「・・・・・・・・?。」「日本語?。」「英語?。」
教師:うん。これはね。ポルトガル語。英語だとカードだね。・・・このヨーロッパのカード遊びをまねてつくったのだかるた。みんながやった百人一首なんかもそれだね。・・・・・・じゃあ、ここまで見てくると、日本人はヨーロッパ人にたいしてどんな態度をとったのかわかるね。
生徒:「はい。日本人はヨーロッパの文化に興味をもって、それを真似したと思います。」
教師:なるほど。・・・・他には?。・・・はい。××くん。
生徒:「はい。日本人はヨーロッパ人を面白いと思い、ヨーロッパ人になろうとしとんだと思います。」
教師:どの資料からそう考えたのかな?。
生徒:「さっきの絵を見ていると、日本にはいない虎の皮が町で売られていたり、ヨーロッパ人のまわりにたくさんの日本人が集まっているし、すごく外国のことに興味をもっていると思います。そして、ヨーロッパ人の服をまねたりカルタを真似たりしているから、すごい技術をのったヨーロッパ人にあこがれて、ヨーロッパ人になろうとしたんじゃないでしょうか。」
教師:なるほど。面白い見方だね。・・・他には?。・・みんな同じ意見みたいだね。・・・・じゃあ一つ質問だけど、この日本人のヨーロッパ人への対応を見てみると、アメリカの人たちと違うところがあるね。
生徒:「・・・・・・・・?。」「はい。わかった!!」
教師:はい。△△さん。
生徒:「はい。アメリカの人はヨーロッパ人を神様だと思ってただ歓迎していただけだけど、日本人は、ヨーロッパ人の文化や技術をまねしていこうとしているところが違うと思います。」(「なるほど!!!」の声)
教師:なるほど、そうだね。ここが違うね。・・・・・・・
生徒:「ってことは、日本にキリスト教が広まった理由は、ヨーロッパの文化や技術を取り入れたかったからということ?。」
教師:うん。それもあると思うね。
生徒:「ってことは、他にもあるんだ。」
教師:そう。ある。・・・・・他にも。・・・・・・ない?。。
生徒:「わかんないよ!!」「ヒントをおくれ!!!」
教師:うん。そうだね。・・・・みんなのは、わりとまじめなまともな考えだけど、もっとずるい考えの人もいたんだよ。
生徒:「何それ?。」「わかんない!!!」
教師:うん。そうだね。・・・ヨーロッパ人って何しに日本に来たんだっけ?。
生徒:「植民地!!!」「征服しに来た!!!」
教師:なんで?。
生徒:「金がいっぱいあるから!!!」
教師:うん。そうだね。・・・でもさ、いきなり事情も分からない国を征服するかね。・・・最初はどうする?。
生徒:「・・・・・・・?。」「わかった!!。貿易だ!!!」「贈り物持ってね!!」
教師:そう。最初は貿易だね。
生徒:「わかった!!!」
教師:はい。××くん。何がわかったの?。
生徒:「キリスト教の信者が増えた理由!!」
教師:じゃあ、話してみて?。
生徒:「はい。ヨーロッパ人は日本にないものをいっぱい持っているじゃありませんか。」
生徒:「なんだい。かっこつけないで、さっさと言えよ!!」
生徒:「だから、日本にないものを一杯持ってくるから、それを買って日本でうれば儲かるでしょ。」
生徒:「それとキリスト教がどう関係するんだ!!」
生徒:「えーっつ、ヨーロッパ人はみんなキリスト教の信者ですよね。」
教師:そうだね。
生徒:「だから、キリスト教の信者になればヨーロッパ人ト仲良くなり、そうすれば貿易がやりやすいじゃありませんか。」(「なるほど!!」)
教師:なるほど。・・・そうだね。・・・そしてそう考えてたくさんの人をキリスト教の信者にして、どんどん貿易しようとした人がいたんだね。誰?。
生徒:「・・・・・・?。」「わかった!!!大名!!!」
教師:そう。正解。大名だ。・・・大名がキリスト教の信者になり領地の住民をみんなキリスト教に改宗させたんだ。
生徒:「何それ?」「へんじゃん」「それまでは何教だったの?」
教師:良い質問だね。キリスト教が来る前に日本で一番流行っていたのは?
生徒:「イスラム教」「適当に言うな!」「仏教」「キリスト教」「それじゃ答えになんないだろう!」
教師:どれ?
生徒:「仏教!!!」
教師:そうだね。中には仏教のお寺を壊してキリスト教の教会に変えさせた大名もいたそうだよ。
生徒:「なんでそこまでするの?」「何が欲しいの?。」
教師:良い質問だ。皆で考えてみよう。
生徒:「わかった!!!。鉄砲だ!!!」
教師:なんで?。
生徒:「この時代は戦国時代でしょ。鉄砲があれば戦争に有利だもん。」(「なるほど!!!」)
生徒:「なんか、危険だね」
教師:○○さん。なにが危険?
生徒:「はい。ヨーロッパ人は貿易の利益でつったり、神様だと思わして安心させてその国を征服したじゃない。だから危険。」「そうだ!!」
教師:そうかもね。いいところに気がついたね。・・・そういうさまざまな理由で日本に鉄砲が広まったんだね。・・・・・ところでさっきの鉄砲だけど。その鉄砲が日本に初めて伝えられたときの日本人の反応を最後に見ておこう。資料Dの鉄砲の伝来を配ります。見てごらんなさい。
<黄金の島・ジパング>資料D「鉄砲の伝来」 天文12(1543)年8月25日。種子島の西村の小浦に、一隻の大船が流れついた。どこの 国から来たかわからない。 船客100余人。その中に大明国の五峰(ごほう)と名のるものがいた。 西村の村長(むらおさ)の織部丞(おりべのじょう)は漢文(漢字で書いた中国語の本)をよく 理解出来たので、つえで砂の上に字を書いて筆談した。 異国人の一人はムラシャ(フランシスコ)、ひとりはキリシタ=ダモタといった。 二人は手に一物をたずさえている。長さ2・3尺(60〜90cm)。その物体は中が空で そとはまっすぐ、そして重い。形は何にたとえようもない。 妙薬をその中に入れ、小さな鉛玉をこめる。小さな的を岸に置き、一物を手にしてみが まえ、目をすがめにしてねらい、小さな穴から火をはなつと、命中しないことがなかった。 島主の種子島時尭(たねがしまときたか)は、その値段が高すぎるのもかまわずに、その鉄砲 を2丁買い求めた。 「鉄砲記」より |
教師:さて、ここで問題。種子島の島主は何のために鉄砲を買ったのか。自分の意見をノートに書いてみよう。
生徒:「2つ買ったということが大事なのかな?」
教師:うん。それは大事だな。
(一斉に鉛筆をはしらせる音・・・・・・)
教師: じゃ、君たちの考えは?。・・・はい。◎◎くん。
生徒:「その鉄砲を都の将軍さまに贈り、高い地位を得るためだと思います。」
教師:なるほど・・・でもなんで2つなのかね?。
生徒:「・・・・・・・・?。」
教師:他には?。・・・・・・・・はい。△△さん。
生徒:「はい。鉄砲を自分で作るため」「同じでーす!!!!!」
教師:なるほど。じゃあ何のために2本買ったの?。
生徒:「はい。1本は分解して、部品の形や大きさや数を調べるためでーす。」
教師:じゃあ、もう1本は?。
生徒:「見本!!!」「それと同じ物を作るため!!!」
教師:なるほど。きっとそうだね。・・・・・・・・・・・・教科書110ページの資料「鉄砲の普及」を読んでみよう。
鉄砲の普及 種子島では領主が2挺の鉄砲を買い取り、家臣などにその製造法と火薬の製法とを学ばせた。この 製造技術はすぐに紀伊国(和歌山県)根来や堺に伝わり」、のちに近江の国友でも鉄砲がつくられるよ うになった。日本の刀鍛治の技術が応用されたといわれる。 数年後に来日したポルトガル人は、日本の各地で鉄砲の製造と販売が行われているのに驚いたと いう。 |
生徒:「へえーっつ!!」
教師:じゃあ、ノートの最後のまとめの問題をやってみよう。
○まとめ @アフリカの部族の王は【 @ 】の利益に眼がくらみ、黒人たちを奴隷としてヨーロッパ人に売った。 日本の大名は【@】の利益のためにキリスト教の布教を許し領民をキリスト教に改宗させたりした。 Aアメリカのインディオは鉄砲を雷だと思い、ヨーロッパ人を【 A 】だとかんちがいした。 日本ではヨーロッパ人が持ってきた鉄砲を研究しその【 B 】を学び大量生産した。 |
教師:いいかな。・・じゃあ@は?。
生徒:「貿易!!」
教師:そう。ではAは?
生徒:「神!!」
教師:正解!!・・・ じゃあBは?
生徒:「技術!!」
教師:そうだね。では今日の授業はこれでおしまい。