<黄金の島・ジパング>E日本を守れ!
教師:さて今日は、最初に前の時間の復習をしてみよう。・・・・ノートの復習問題をやってみてください。
(各自復習問題にとりくむ)
○復習:九州を平定した【 @ 】は、長崎がキリスト教信者の【 A 】によりキリスト教会の領地になっているのを見て、日本が【 B 】の【 C 】になる危険を感じ、長崎を没収し、キリスト教も禁止した。 しかし【 D 】の禁止がなされなかったので、【 A 】の力を弱めることも、【 B 】の力が日本におよぶことを押さえることは出来なかった。 |
教師:では答えあわせをしておこう。・・・・@は誰?。
生徒:「秀吉!!」
教師:いいね。・・・じゃあAは誰?。
生徒:「大名!!!」
教師:そうだね。・・・では、Bは?。
生徒:「ヨーロッパ!!!」
教師:正解です。・・・ではCは何?。
生徒:「植民地!!!」
教師:では最後のDは何?。
生徒:「貿易!!!」「外国人が来ること!!」「外国人が武器を日本に売ること!!」
生徒:「いろいろ答えがあるね。どれが正解?。」
教師:うん。どれが正解かね。・・・・この正解が何かということを含めて、今日は考えて行こう。・・・・前の時間の討論では、長崎を没収し、キリスト教を禁止するだけでは、日本がヨーロッパの植民地になることを防ぐには充分ではないという結論になったね。その理由は、なぜ秀吉が長崎を没収し、キリスト教を禁止したのかを、深く考えてみるとわかるね。・・・キリスト教の広がりの裏側には、日本にキリスト教を広め、日本人を手なずけてから、日本を植民地にしたいというスペインやポルトガルなどのヨーロッパの国々の思惑と、キリスト教を信じることでヨーロッパとの繋がりを深め、武器などをヨーロッパから買いたいという大名たちの思惑とがあった。そして大名たちの力が強くなれば、秀吉に反抗する大名が増え、日本がまた戦国時代に戻ったりする。その時にヨーロッパの国に攻められたら日本は一たまりもなく、植民地にされる。だから、秀吉のとった対策では、不充分だという結論がでたんだね。
今日はこの討論の続きをしよう。
長崎を没収し、キリスト教を禁止するだけでは、日本がヨーロッパの植民地にされないようにするには不充分だとすれば、どうしたら良いのか。まず、各自の意見をノートに書いて、それから班で討論してまとめてみよう。・・・じゃあ始めてください。
(各自ノートに自分の意見を書く)
教師:だいたい書けたみたいだね。じゃあ、班の討論を開始してください。
(各班で討論を進める)
教師:だいたいまとまったみたいだね。・・・じゃあ、みんなの意見を聞いてみよう。・・・はい。5班お願いします。
生徒:「はい。5班では、日本中で、外国との貿易を禁止しようということになりました。理由は、貿易を禁止しないと武器を大量に外国から買う大名が跡を断たず、ほっとけばまた戦争が起きるからです。」
生徒:「今の5班の意見に補足!!」
教師:はい。1班お願いします。
生徒:「はい。1班は外国との貿易を禁止するためには、外国人が日本にやってくることと、日本人が外国に行くこととを禁止しなければいけないと考えました。」
生徒:「もう一つ、補足があります。」
教師:はい。2班。お願いします。
生徒:「はい。貿易を禁止するだけでは、日本を守ることはできないと思うので、貿易を禁止するとともに、日本の海岸のあちこちに城を築き、大砲や武器を備えて、ヨーロッパが日本に攻めてこないようにする必要があると思います。」
教師:なるほど。貿易を禁止し、外国が攻めてこないように、守るために武器を備えるということですね。・・・はい。何ですか。6班。
生徒:「はい。6班の外国との貿易を禁止するという意見ですが、完全に禁止してしまうと、かえって日本が危ないと思いました。」
生徒:「よくわかんないぞ。もっとわかりやすく説明しろよ。」
教師:そうだね。6班。もう少し詳しく説明してください。
生徒:「はい。貿易を禁止するってことは、外国の文化や技術を学ぶこともやめるということです。でもそうすると、例えばヨーロッパの国々で、もっと優れた武器や船などが発明されて、日本がそれを知らないとすると、いくら武器で守ろうとしても、ヨーロッパの武器のほうが優れていて、戦争に負けてしまう危険が出ると思うのです。だから完全に貿易を禁止するのは危ないと思います。だから、外国の技術や文化を学ぶことは続けたほうが良いので、その範囲で貿易はやったほうが良いと思います。」
生徒:「はい。今の6班の意見に質問!」
教師:はい。◎◎くん。どうぞ。
生徒:「はい。6班に質問だけど、ヨーロッパの技術や文化を学ぶために貿易を続けるっていったけど、それだと外国にあこがれたり、またキリスト教の信者になったりして、外国と繋がる人が出て来ると思う。それに、大名も外国の文化や技術を学ぶっていうことにして、外国からどんどん武器を買ったりして、力をつけると、日本でもまた戦争になってしまうと思います。」(賛成!!の声、多数)
生徒:「はい。そのための対策も考えてあります。」
教師:では、6班、説明してください。
生徒:「はい。貿易を続けるにしても、制限が必要です。たとえば大名が外国から武器を買わないようにするには、貿易は秀吉なら秀吉、江戸幕府なら江戸幕府だけが貿易を出来ることにしてしまえば防げます。それからキリスト教ですが、貿易をすることとキリスト教を広めることとは区別して、貿易を許すけど、キリスト教は禁止するとか、キリスト教のお坊さんは来てはいけないとか、キリスト教に関する本は貿易してはいけないとかいうように、制限すれば良いと思う。そしてこの制限の中で貿易をしたいという国とだけ貿易し、この制限を受け入れない国とは貿易しないという方法をとれば、今、◎◎くんが言ったことは、防げると思います。」(なるほど!!。さすがー!!)
教師:うん。よくそこまで考えたね。・・今の4つの班は、貿易を制限または禁止するという意見だったね。残りの2つの班は、どういう意見なのかな。・・・はい、3班。
生徒:「はい。さっき、2班が、ヨーロッパが攻めてこないように、あちこちに城を作って武器を備え、日本を守ると言いましたが、それならいっそのこと、たくさんの大砲と鉄砲を作り、大きな船を作って、ヨーロッパまで攻めて行ったほうが早いと思います。攻めてくるのを待つのではなく、こちらから先に攻めていったほうが、日本を守る上では、効果があると考えます。」(おー、なるほど!!、の声)
生徒:「質問があります!」
教師:はい。▼▼さん。何ですか。
生徒:「はい。今の3班と同じ考えを4班はしているのですが、最後までまとまらなかったのは、それでヨーロッパに勝てるのかということです。どうしてかというと、ヨーロッパは大きな大砲や鉄砲をたくさん持っていて、大きな船を持ち、アメリカやアフリカなどたくさんの植民地も持っています。そんな強い国と戦って勝てるのかと。勝てるかどうかわからないのに、こっちから攻めて行くのは無謀だという意見が出て、どうしても意見がまとまりませんでした。3班の人は、ここのところをどう考えますか?。」
生徒:「はい。答えます!」
教師:はい。3班。お願いします。
生徒:「はい。今の質問は、日本は小さな国だから、そんなにたくさんの武器や植民地を持っている国と戦って勝てるかということだと思います。たしかにそうですが、日本とヨーロッパの国々を比べてみると、そんなに国の大きさは差がないと思います。それにヨーロッパと言っても、幾つもの国があって、その中で外国を植民地にしようとしているのはスペインとポルトガルです。この2つの国も争っているわけだし、それとこの2つの国と争っているヨーロッパの国は、イギリスとオランダ、そしてフランスがあります。ヨーロッパは一つではなく、日本と同じくらいの小さな国同士が争っているわけだから、日本も勝てるチャンスがあると思います。そして大きな植民地を持っていて豊かで強いというのなら、日本もまだヨーロッパの植民地になっていない中国やインドなどのアジアの国々を従えていけば、ポルトガルやスペインには負けないと思います。」
生徒:「質問!!」
教師:はい。##さん。どうぞ。
生徒:「3班に質問ですが、スペインやポルトガルに勝つために、中国やインドを攻めてそこを植民地にするということですか?。」
生徒:「はい。そうです。」
生徒:「でも、それっておかしいと思います。日本が植民地にされないために、関係ない中国やインドを植民地にするって変です。」
生徒:「じゃあ、どうすればいいんだよ。」
生徒:「味方が必要なら、中国やインドの人と話し合って、協力してヨーロッパと戦おうと説得するほうが良いと思います。」
生徒:「そんなのうまくいくかよ。説得できなかったらどうするんだ。どんどん攻めていったほうが手っ取り早いぞ。」
生徒:「やってみなければわからないと思います。自分を守るために人を犠牲にするのはおかしいですし、どの国だって植民地にはなりたくないはずだから、話し合えば協力できると思います。」
生徒:「そういうけどさ・・・・」
教師:正面衝突だね。要するに、日本をヨーロッパから守るためには積極的に攻めていったほうが良いが、味方が必要だ。その味方を集めるのに、説得でいくか、武力で押さえつけて従わせるかという方法が違っているんだね。・・・今日の所は討論はその辺にして、実際に、当時の人が何をしたかを見ていこうよ。みんなの意見は、『@貿易を禁止する。A貿易を制限する。B日本を守るために防備を固める。C日本を守るために積極的にこちらから攻めていく。』の4つにまとめられるね。
では、もう江戸幕府がどの方法を取ったかはわかるね。・・・・はい。■■さん。
生徒:「はい。江戸幕府は貿易を制限する方法を取りました。」
生徒:「えっつ、制限なの?。禁止じゃないの。」
生徒:「この単元の1時間目にやったじゃない。場所は長崎に限って、貿易できる国はオランダと中国だけにして、貿易は幕府の許可がないとできないということを。」
生徒:「そうだったね。」
教師:そう。そのとおりだね。
生徒:「先生、江戸幕府は日本を守るために貿易の制限だけしかやらなかったのですか?。たとえば武器を備えるとか?。」
教師:それはね、やったんだよ。・・・各大名たちにね、それぞれの大名が軍隊を持ち、日本の海岸を分担して守ることを義務付けていたんだ。
生徒:「外国の文化や技術は学ばなかったのですか?。」
教師:それは学んだよ。長崎の出島のオランダ屋敷には、オランダ人の医者や学者、そして軍隊の技術者がいたから、幕府の許可を得たものが、そこに行って直接教わると言うことはできたんだ。そして幕府は、オランダからヨーロッパや世界の状況を定期的に情報としてもらい、世界のことは学べるようにしてあったんだよ。
生徒:「じゃあ、秀吉はどうしたの?。」
教師:どうしたんだろうね。・・・・教科書や資料集に書いてないかい?。
生徒:「はい。あります。」
教師:はい。%%くん。どうぞ。
生徒:「はい。教科書の115ページに、朝鮮侵略って書いてあります。」(一斉に教科書のページをめくる音)
生徒:「何で朝鮮を攻めたの?。」
生徒:「朝鮮に貢物を差し出すことをもとめ、明への侵略をくわだて、朝鮮がこれに応じなかったから秀吉は大軍を送った、と書いてあるじゃないか。」
生徒:「だけど明を侵略しようとしたのに、なんで朝鮮を攻めるんだよ。よくわかんない。」
教師:そのあたりは地図を見ながら考えるとわかるよ。・・・資料集の78ページをあけてごらん。秀吉の朝鮮侵略とその関係の地図や資料が載っているから。
教師:地図を見て、明・朝鮮・日本の位置関係をよくみてご覧よ。
生徒:「左上の黄色に塗った所が明ですか?。」
教師:そうですね。
生徒:「わかった。秀吉が朝鮮を攻めたわけが!」
教師:はい。★★くん。お願いします。
生徒:「はい。日本が明に攻めていくには、朝鮮を通らないといけないです。だから日本は朝鮮に明を攻めるために朝鮮を通らせろって言ったんじゃないかな。そして貢物を差し出して日本の家来になれって。朝鮮がこれを断ったから朝鮮を攻めたんだ。」(ひどいやりかた!!)
生徒:「明を攻めるんなら、朝鮮をとおらなくても、直接海を船で渡って、明に攻めて行けばいいじゃないか。昔、元が日本に攻めてきたのの逆だよ。」
生徒:「それじゃ、大変だよ。元の時も台風にあって元の船は沈んだぞ。日本が船で明に攻めて行っても、台風にあったりすると、沈没して大変だ。それよりか、まず朝鮮に船で渡って、それから陸を攻めて行ったほうが、うまくいく。」
生徒:「先生。どうなんですか。ほんとの所は?。」
教師:うん。日本の船では大きな海を渡るのは大変だったんだ。もっとも同じことは中国の船でもいえるし、ヨーロッパの船でも言えるよ。当時の船では嵐にあうと港に逃げて嵐が過ぎ去るのを待つしかないんだよ。無理をすれば、沈没する。
生徒:「だから朝鮮を従えて、陸から明に攻めようとしたんだね。」
教師:そうだろうね。
生徒:「明を攻めるだけが目的だったの?。」
生徒:「ルソンや台湾にもその力をおよぼそうとしたって教科書に書いてあったじゃないか。」
教師:うん。秀吉の考えはね、少なくともインドまでは攻めて行くつもりだったみたいだよ。朝鮮を攻め、明を征服したら、天皇や大名たちには明に移ってもらい、それから秀吉はまた一部の大名を従えてインドまで攻めて行くと言っていたようだから。」
生徒:「ほら。3班が考えたのと同じだろ。インドを征服したら秀吉は、ヨーロッパにまで攻めて行くつもりだったんだよ。」(なるほど!!)
教師:そうかもしれないね。・・・・ともかく秀吉は、日本を統一するとすぐに朝鮮に攻めていったわけだ。この資料集の地図を見るとそのあたりがよくわかるね。・・・1590年に小田原と東北を平定する。・・・地図のGとHだね。・・これで日本全国を統一したわけだ。・・・そしてI番。朝鮮を攻めた最初の戦いの文禄の役はいつかというと・・・・
生徒:「1592年!!!」
教師:ね。全国統一の2年後だよ。・・・だから日本統一と朝鮮との戦争は繋がっているし、その先には明やインドとの戦争が、秀吉の頭にはあったわけだ。
生徒:「先生。質問です。」
教師:はい。&&くん。何ですか。
生徒:「はい。秀吉は、朝鮮・明・インドを攻めて、そのあとヨーロッパと戦争するつもりだった。じゃあ、なぜそのあとの徳川家康や家康が作った江戸幕府は、戦争をしないで、貿易を制限するだけにしたんですか?。」
教師:うん。良い質問だね。・・・・みんな答えられるかな?。・・・・・はい。□□さん。
生徒:「それは簡単です。江戸幕府が戦争しなかったのは、秀吉が戦争に負けたからです。」
生徒:「どこにそんなこと書いてあった?。」
生徒:「さっき見た、教科書の115ページに、書いてあったわよ。日本軍は朝鮮各地の民衆蜂起や李舜臣の水軍、明の援軍などの強い抵抗にあい各地で苦戦したって。そして一度和議を結んだあともう一度戦争したけど結局勝てず、秀吉が病死したので、日本は兵を引き上げたって。」
生徒:「うん。あった、あった。そう書いてあるよ。」
生徒:「だから、日本は朝鮮と明とに負けたんですよ。一度負けた国にもう一度戦争しかけることはしないでしょ。だから江戸幕府は攻めて行くのじゃなくて、防備を固めて、貿易を制限して、責められないようにするしかなかったんだと思います。」
生徒:「もう一つ、補足があります。」
教師:はい。**くん。どうぞ。
生徒:「はい。さっき先生も言ってたけど、海を船で渡るのは中国やヨーロッパにとっても大変だったって。だから、ヨーロッパが日本に攻めてくるのは大変なんだよ。だったら、わざわざヨーロッパに攻めて行くのじゃなくて、攻めてこられないように守るというのもありだと思う。結局、朝鮮と明とに負けちゃったんだから、攻めていきようがないんだけどね。」(なるほど!!!)
教師:うん。二人ともうまいまとめをしたね。これ以上付け加えることはないから、今日の討論はここまでにしょう。
生徒:「先生。最初の復習の問題のDの答えは結局なんですか?。」
教師:うん。そうだったね。
生徒:「貿易でも良いし、外国が来ることでも良いし、外国が日本に武器を売ることでも、どれでも良いんじゃない?。」
教師:うん。そういうことだ。
生徒:「なーんだ。」
教師:では、次の時間には、江戸幕府のとった対策をもう少し深く考えて、この単元をまとめてみようと思います。じゃあ、授業を終わります。