<パンドラの箱は開かれた!>@ 3人寄れば文殊の智恵@
さて今年最初の歴史の授業だ。
生徒:「質問!!。パンドラの箱は開かれたってなんですか?」
教師: いい質問だね。でも今は教えない。ただしこのフリップの言葉は、単元の名前であり、あとでやる単元のテーマのヒントになっているということ
だけは話しておこう。辞書でパンドラの箱ってひけば出ているけれど。
ところで今日の授業の名前は「3人よれば文殊の智恵」です。どんな意味かわかるかな?。
生徒:「一人じゃなにもできないけど、三人で協力すればすごい事が出来るってことかな?」
教師: そう。そう言う意味だ。文殊というのは文殊菩薩っていって仏教の智恵の神様。人間じゃあ到底かなわない智恵を持っておられる。でも普通
の人でも三人知恵を絞れば文殊様もビックリの類のすごい智恵がでるよという意味の言葉だよ。これが今日の授業のヒントです。
今日まず最初に考えたいのは「動物はなぜ群れを作るのか」ということ。三つの動物の写真を出すから皆で考えてみよう。1番目の動物はこ
れです。(写真を黒板にはる!)
生徒:「あっつ、ライオン!!」
教師:そうライオンだ。じゃあ質問。ライオンは何頭の群れを作るのだろう。
生徒:「50!」「多すぎ!!」「じゃあ10!」「6!!」
教師:うん。正解は6頭ぐらいだ。じゃあ雄何頭、雌何頭ってふうに考えたら?。
生徒:「雄1頭に雌1頭!」「違うよ!雄1頭に雌3頭!!」
教師:どっちだろうね。人間の場合は?。
生徒:「雄1頭に雌1頭」「雄って言うのか?」「頭じゃなくて人だろ!」「そうか。男一人に女一人」
教師:そうだね。じゃあライオンはどっちだろう?。
生徒:「質問!雄のライオンってなにするの?」
教師:良い質問だ。みんなはどう思う?。
生徒:「狩をする!」「しないよ!雌が狩をするんだ!!」
教師:そうだね。
生徒:「じゃあ雄は?」「寝てるだけ!」「群れを守る!!」
教師:なにから?。
生徒:「敵から」
教師:敵ってどんな動物?。
生徒:「・・・・・・うーん」「他の雄じゃない?」
教師: そう、他の雄だ。
生徒:「あっ、お前の女よこせってやつ?」
教師:そう。そして取り合いになる。で群れの雄が負けると?。
生徒:「出て行かなくちゃいけない?」
教師: そう。御父さんが入れ替わるわけだ。そうするとその雄は前の雄の子どもを食い殺す。
生徒:「なんで?」
教師:そうすると雌が子どもを産めるようになるからさ。つまり雄の仕事は自分の子どもをつくること。
生徒:「じゃあ狩は雌がやるんだ」
教師: そうです。で、ライオンって何を狩するの?。
生徒:「シマウマ!」「ぞう!」「ぞうなんかできるか」「ふんずけられる!」
教師:そうだね。他には?。
生徒:「鹿!!」「きりん!!」
教師:つまりどう言う動物たち?。
生徒:「草食動物」「草を食べている動物!」
教師:そうだ。たとえばこんな動物だね(言いながら2番目の写真を黒板にはる)。
生徒:「あれっつ、鹿かな?」
教師:そう。鹿の一種。ガゼルと言う名前の鹿だ。ライオンと同じ草原に住んでいる。つまり、ライオンがガゼルを見ると何がいると思うのか。
生徒:「えさ!!」
教師:そう。今晩のごちそうが居る!!って感じだね。じゃあ逆だと?。
生徒:「敵!!」「食べられちゃう!!!」
教師:ところでライオンの雌がガゼルを狩するとき何頭でやるんだろう。
生徒:「2頭!!」
教師:なんで1頭で狩しないの?。
生徒:「ガゼルの方が足が速い!!」
教師:そうだ足が速い。1頭じゃ逃げられちゃうんだね。じゃあ複数でどうやってつかまえる?。
生徒:「挟み撃ち」
教師:どうやるの?。
生徒:「1頭は顔を出して他のは隠れている」
教師:そして?。
生徒:「ガゼルの群れに飛び込んで行って隠れている方に追いこむんだ!」
教師:なるほど上手い手だね。で、どんなのを狙う?。
生徒:「子ども!」
教師:どうして子どもをねらうの?。
生徒:「足が遅いから!」
教師:なるほど。ということはライオンが群れを組み集団で狩をする理由は何?。
生徒:「足が遅いから!」「狩が上手くない!」「みんなで協力してつかまえる!」
教師:そういうことだね。
○板書事項 ライオン:5〜6頭の群れ。大人の雄1頭に大人の雌2・3頭。あとは子ども。 群れを組む理由:足が遅く狩がしにくいので集団で協力して狩をするため。 |
教師:じゃあ。襲われるガゼルのほうは群れを組まないのかな?。
生徒:「組む!!」
教師:そう。組む。20頭くらいの家族がいくつも集まって2・300頭から600頭ぐらいもの大きな群れを作るんだ。どうしてガゼルの群れってこんなに
規模が大きいんだろう?。
生徒:「つかまる可能性が少なくなるから!!」
教師:可能性が少ないってどういうこと?。
生徒:「ライオンだってどれを捕まえるか迷う!!」
教師:なるほど。でもガゼルは毎回仲間の一匹がつかまって食べられるだけかな?。なんか対策は組まないの?。
生徒:「見張りを立てる!!」
教師:なんのため?。
生徒:「ライオンが来ないかいつも見張っていてきたら知らせるんだ」
教師:で、どうするの?。
生徒:「ライオンが近づいてきたらぱっと逃げるんだ」
教師:待ち伏せしているかもよ?。そっちへ逃げたらおしまいだ。どうしたらいい?。
生徒:「どこに隠れているかも見ているのかな?」
教師:そう。でも見るだけ?。
生徒:「臭いもかぐ?」
教師:そう。まだあるよ。どうしてガゼルの耳は大きいんだろう。
生徒:「音がよく聞こえるように!」
教師:そうだね。そうして隠れているライオンも見つけといて一斉に逃げる。でもライオンは子どもを襲うよね。逃げ切れるかな?。
生徒:「子どもを真中にして逃げる!」
教師:そういうのどうやって決めるの?とっさのとき話し合っているひまないよ!。
生徒:「リーダーもいるんじゃない?」
教師:どういうこと?。
生徒:「リーダーが見張りからの情報を判断して、逃げ方や逃げる方法を指示するんだ」
教師:なるほど。それでもリーダーの言う事を聞いてないで違う方向に逃げたりするのがいたらつかまっちゃうね。
生徒:「いるいるそういうの」「話し聞いてないやつ」「自己中のやつ」
教師:その仲間がつかまったらどうする?。
生徒:「おいてく」「知らん顔して逃げる!」「自業自得!!」
教師:なんか冷たいな?。
生徒:「皆で戻ってきてライオンをやっつける。」「できるかよそんなの!」「後ろ足でキックだ!!」(笑い声)
教師:ただ適当に逃げるんじゃあないんだ。ガゼルじゃなくてこれが角のある牛何かだったらすごいね。さすがのライオンも勝てない。ということはガ
ゼルなどの草食動物がが大きな群れを組む理由は?。
生徒:「弱いから!」「皆で協力して群れを守る!!」
教師:そうだね。
○板書事項 ガゼル:2・300から600頭の群れをつくる。 群れを組む理由:弱いので集団で協力して群れを守る。 |
教師:でもライオンも狩が成功して獲物をつかまえても全部食べきれるわけではないんだ。ライオン家族が餌にありついていると必ずじゃまがはいる
んだ。
生徒:ハイエナ?。
教師:そうハイエナ。何10頭かの群れを組んでライオンが餌を手に入れるとその周りを囲んでライオンをにらむんだ。
生徒:「そのえさよこせ!」「さっさとうせろ!って」
教師:そういうわけ。こうなるとライオンの数は少ないから勝ち目がない。ライオン家族はえさを残してすごすごと退散しなければならないというわけ。
じゃあ。話しはかわって、この3つめの動物は群れを組むんだろうか?。(人間の写真を掲げる)これはなんだ!。
生徒:「ライオン」「豚!」「ゴリラ!!」(教員の写真なので大笑いしてふざける)「人間!!」
教師:そう人間だ。人間は群れを組むかな?。
生徒:「組む」「家族を作る!」「組まない!!」
教師:人間は群れを組まないと言う意見があったけど、それはどういうことかな。詳しく説明してください。
生徒:「一人で暮らしている人がいる」「ひとりじゃあ群れとはいわない」
教師:なるほど。一人暮しの人か。一人じゃ群れとは言わないね。でもその人、本当に一人だけで暮らしているのかな?。
生徒:「えっつ、どういうこと?」「意味がわかんない!!」
教師:つまり、一人で生活に必要なものを全部自分で手に入れているのかな。例えばお米は自分で作る?。
生徒:「お店で買ってくる!!」
教師:そうだよね。でそのお店の人は自分でお米を作っているのかな?。
生徒:「お米を作っている人から買ってくる!!」
教師:そうだよね。つまり一人暮しをしている人もけして一人で暮らしているわけじゃあない。いろんな人に助けられて生きているんだ。こういうふうに
人がいろんな職業に分かれて協力しながら生活に必要なものを御互いに融通し会っている集団をなんという?。
生徒:「わかんない!!」「むずかしい!!」「社会かな?」
教師:そう。それ。社会だ。人間が助け合って生きている集団を社会という。その社会にはいくつもの集団があって一番小さい集団、一番小さい社会
を何て言っているかというと?。
生徒:「家族?」
教師:そう。家族。普通は大人の男一人と大人の女一人、そしてその子どもたちで成り立つ集団を家族というんだ。その家族がたくさん集まって出来
ているのが社会。でも社会には家族以外の様々な集団があるね。例えば君たちの御父さんや御母さんは家族以外にどんな集団に属している
だろうか?
生徒:「会社?」「お店?」
教師:そうだね。じゃあ君たちはどんな集団に属している?。
生徒:「学校!」「クラス!!」「学年!」「部活!!」「友達!!!!」「塾!!!!!!」
教師:そう。いろんな集団。いろんな群れに属しているわけだ。で人間がつくった最も大きい群れはなんだろう?。
生徒:「地球上の人間全部!」
教師:そうだといいんだけど、現実には地球上の人間はもう少し小さいいくつかの群れになっていて、しかもその群れは時々御互いに争う。
生徒:「戦争?」
教師:そうだ。戦争。で戦争って何と何がやる?。
生徒:「国!!!!」
教師:そうだ。国。少し難しい言葉で言うと、国家だ。じゃあ国ってどれくらいの人数で成り立っているんだろうね。
生徒:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
教師:じゃあ君たちの属している日本は何人ぐらい?
生徒:「1億5千万!」「そんなに居るか?」「じゃあ、1億人」「ほんとか?」
教師:じゃあ地図帳をあけて、後ろの資料のページを出し、日本の人口を確認してみよう。
生徒:「1億2千○○万人」
教師:そうだね。そしてそのページに世界最大の人口の国、中華人民共和国がある。人口はいくらかな?。
生徒:「14億○○○○万人」「すげー!!」「ちょーでかいよ!!」
教師:じゃあ一番人口が少ない国は何人だ!。
生徒:「8万!」「違うよ7万!」「あっつ千人ちょっとの国があるよ!」「どこどこ」「バチカン市国!!」
教師:バチカン市国ね。これはちょっとはずしといたほうがいい。理由はこの国はキリスト教の大きなお寺一つでなっていてね、現実にはイタリアの首
都のローマという町の中にあるんだ。独立国といってもそれだけで成り立っているわけじゃあない。
生徒:「変わった国だね」
教師:そう。変わっているね。ということは他で一番少ない国は?。
生徒:「4万!」「3万!!」「2万があるよ!!!」「いや1万だ。!!」「えっつ、どこどこ・・・・・・・・・・」
教師:最低1万人から最大14億人の大きさが人間の作った国という群れの大きさだ。
生徒:「すげー」「でかい!!」
教師:そうだね。人間の作る群れはライオンやガゼルよりももっと大きいわけだ。
○板書事項 人間:小さい群れ=家族 大きい群れ=国家(最低1万から最大14億人) |
教師:では最後に問題を考えてみよう。人はなんのために国家という巨大なむれをつくるのか?。
(生徒が自分の考えをノートに書いたところで時間切れ。発表と討論は次に時間にすることとする)