<つるばみの衣>D 憂しき世


教師:では今日は、奈良時代の人々の暮らしを考えてみよう。・・・・・・まず最初に、ノートの頭にある問題をやってみよう。・・・・教科書のp40を読ん

    で確かめてください。(各自教科書を見て、ノートの問いに答える)

○律令国家の人々はどんな身分に分かれていたか?

【        】と身分の低い【      】に分かれていた。

もっとも低い身分は【      】で、持ち主の【     】として売買された。

教師:では、確認してみよう。・・・・・律令国家の人々はどんな身分に分かれていたのかな?。

生徒:「公民と賎民(せんみん)!!!!!」

生徒:「良民でもいいんじゃあないの?」

教師:そうだね。公民または良民とも呼ぶって書いてあるものね。・・・・・そして良民より低い身分を賎民という。・・・・で、その賎民の中で一番身分の

   低い人が?。

生徒:「奴婢(ぬひ)!!!!!」

教師:そう。奴婢だね。・・・・・で、その奴婢は持ち主の何として売買されたの?。

生徒:「財産!!!!!」「物!!!!」

教師:そう。財産、つまり持ち物として売買されたんだね。・・・・日本では奴婢とよんでいるけど、こういう人のことを何とよんでいたっけ。

生徒:「奴隷!!!!」

生徒:「先生。じゃあ奴婢以外の賎民ってなんですか?。」

教師:うん。良い質問だね。・・・・賎民というのは、国とか寺とか神社とか、それから天皇や貴族などに従う人々で、良民のように自由に生きることが

   認められていない人々なんだよ。

生徒:「何をしている人なの?。」

教師:うん。そこが大事だね。・・・・簡単に言うと職人さんかな?。いろいろな物をつくる専門的な技術を持っている人たち・・・・・。たとえばお寺なら、

   お寺の建物をつくる大工さんとか、瓦を焼く人とか、仏像などを作る人など。いろいろお寺に必要なものを作るひとなんだ。

生徒:「じゃあ、大工さんなんかは奴婢なの?。」

教師:大工などの賎民は奴婢じゃあないんだよ。奴婢は物として扱われ売買されるけど、大工などの賎民は売買はされない。この人たちは良民のよ

   うに人間としてあつかわれているけど、お寺の大工はそのお寺に住んでそのお寺のために働くのであって、他で働く自由がないだけなんだ。

生徒:「じゃあ、物として売買されるのは奴婢だけなんだ。」

生徒:「じゃあ、奴婢って何をしている人なの?。」

教師:うん。そこが大事だね・・・・・。奴婢の仕事は持ち主のために様々な雑用をする人たちなんだ。掃除とか炊事とか御湯を沸かしたりなど、ご主

   人の身の回りの世話をする人なんだね。

生徒:「じゃあ、良民ってどんな人たちなの?。」

教師:良い質問だね・・・・・。良民はね、農民とか魚などを採って暮らしている人とか、木を切る人や鉱山で石をほり金属を作る人とか・・・・、それから

   いろいろな役所で働く役人もいるね・・・・。そうそう、他には、商人もいたね。

生徒:「ふーん。いろいろな仕事をしている人が含まれているんだ。」

教師:そう。いろんな仕事に分かれている・・・・・。でも実際はもっと身分が分かれるんだ。公民の中に普通の人とは違い様々な特権を持った人たち

    がいた。自分の土地を持つ事を認められたり、高い給料をもらったりね。

生徒:「貴族のこと?。」

教師:そう。貴族です。律令国家では土地は全て国の物で、自分の私有地を持っちゃあいけないんだね。それを例外的に認められている人たちを貴

   族というんだ。

生徒:「じゃあ、他の人たちは土地を持っていないの?。農民なんかはどうするの?。」

教師:それはね。国が土地を貸してやるんだよ。一人一人に同じ面積の土地をね。それを口分田という。その口分田を耕して作物をとり、税をはらう

   んだ。

生徒:「へー。おもしろいしくみなんだね。」

教師:そうだね。じゃあ、身分についてまとめてみよう。

教師:では、今日はこの身分の中の普通の良民の暮らしについて考えてみよう。・・・・・・・ただあまり資料が残っていないのできついので

   すが。

生徒:「なんで資料が残らないの?。」

教師:天皇や貴族の暮らしはあちこちの古墳の壁画やお寺の壁画などに残されているし、着物や道具、そして料理集やその他の文字で書いた記録

   もあります。でも、普通の人の姿は絵には書かれないし、物も残っていないし記録もないんだ。

生徒:「それじゃあ、わからないじゃないの?。」

教師:うん。資料が少ないんだ。でも残された資料から推理することはできる・・・・・・。そこで今日はその資料の1つを印刷したので読んでみてくださ

    い。(資料E貧窮問答歌を配布する)

   <つるばみの衣>   資料E「良民の生活」

     貧窮問答歌(万葉集・巻の5・第892首 山上憶良作)−一部省略−

 【貧しい役人の問い】

    風に混じって雨と雪とがふるようなこんな寒い夜は何もすることがない。ふとんをかぶ   って寝るしかないのだが、私より生活の苦しいおまえたちは、こんな夜はどうしているの   か?。

 【生活の苦しい良民の答え】

    太陽や月は明るく照るというが、私のためには照ってはくれないのでしょうか。
    人並みに田畑を耕して働いているのに、綿も入っていない粗末なそでなしで、海草のよ   うにボロボロにたれさがった服を肩にかけ、低い、屋根の傾いた小屋の中に、地べたにわ   らをばらばらにしいて、父母は私の枕もとに、妻や子は私の足のほうに、見を寄せ合って   嘆き悲しみ、かまどには煙もたてず、米を蒸すこしきにはクモが巣をかけて飯をたくこと   も忘れ、うめき声をたてているというのに、『特別に短いものをさらにそのはしを切る』   ということわざのように、むちを持った里長の声は、寝ているところまでやって来て、呼   びたてている。
    こんなになんともしかたのないものか、この世の中は。

 【短歌】  

        世の中を憂しとやさしと思えども

                飛び立ちかねつ鳥にしあらば

  (この世の中をつらい、いづらいと思うけど、どこへ飛んでいってしまうことも出来ない。   鳥ではないのだから)

教師:山上憶良さんと言う人は貴族なんだ。貴族なんだけど、都での争いに敗れて遠く九州の太宰府、今の福岡のちょっと南の役所に飛ばされて、

   そこで国司をしていた人だ。彼の回りには同じような貴族がたくさん集まっていて、みんなで出世できずに都から遠くの国にいるさびしさをまぎら

   わすためにいつも歌をよんでいたらしい。この歌はその落ちぶれた貴族の中で一番偉い貴族の大伴旅人さんの奥さんが亡くなった事を悲しん

   でつくった歌の中の1つで、自分を貧しい役人にみたてて、その役人と貧しい民が問答すると言う形で、世の中の様子をうたっている。・・・・・・・

   ここから、当時の良民の生活を推測することができるね。・・・・・・どんな暮らしだ?。

生徒:「貧しい!!!」「ひどい暮らし!!!」

教師:どこでひどい貧しい暮らしだとわかった?。

生徒:「かまどには煙もたたず、飯をたくことも忘れている。」

生徒:「海草のようにボロボロにたれさがった服を着ている。」

教師:そうだね・・・・・。ところでこれはどんな季節かな?。

生徒:「冬!!!」

教師:なんで冬だとわかるの?。

生徒:「風にまじって雨と雪とがふるってかいてある!!」

教師:そうだ。・・・でその冬にボロボロの服しかきていない。・・・しかもその服はどんな形の服?。

生徒:「そでなし!!!!」

教師:そう。そでなし。しかも綿も入っていない。

生徒:「うえっつ、寒そう!」

教師:そう。・・・・しかもこの人たちは今何をしているところ?。

生徒:「寝ている!!!」

教師:そう。寝ている。・・・・・どんなところに寝ている?。

生徒:「屋根の傾いた小屋の中!!!」

生徒:「地面に寝ている!!!」

生徒:「地面に身をよせあって寝ている!!!」

教師:ふとんはないの?。

生徒:「ばらばらにしいたわら!!!」

教師:そう。地面にわらをまいてその上に寝ている。しかも家族みんなが身をよせあって寝ている・・・・。どうして身をよせあっているの?。

生徒:「寒いから!!!」

生徒:「暖房がないから!!!」

教師:そう。暖房がなくふとんもなく寒いからだよね・・・・。しかもうめき声をたてて寝ている。・・・どうしてうめき声をたてているの?。

生徒:「ながいあいだご飯を食べていないから!!」

生徒:「ひどい暮らしだね。」

教師:ひどいくらしだ・・・・・。しかもそこに誰かの呼ぶ声が聞こえてくる。

生徒:「里長!!!」

生徒:「むちを持った里長!!!」

教師:そうだ。里長の声・・・・・・。で、その里長って何をしに来たんだろうね?。

生徒:「税を取りに来た?。」

生徒:「税なんかはらえるかな?。」

教師:どういうこと?。

生徒:「こんなに貧しいところに来てももう払う税すらないんじゃあないかな?。」

教師:なるほど。

生徒:「払えなかったらどうするの?。」

教師:どうなるんだろうね?。

生徒:「牢屋に入れられる!!」「死刑!!」「死刑はないだろ!!。税を払うやつがいなくなる!!」

生徒:「冬に税なんか取りにくるのかな?。」

教師:どういうこと?。

生徒:「税って秋にお米が取れてから集めるんじゃあないの。」

教師:なるほどそうかもしれないね。・・・・・・・・しかしひどい暮らしだね。・・・・そこで問題。良民の暮らしが苦しい原因はなんだろう?。・・・・自分の考

   えをノートに書いてごらん。

(各自ノートに自分の考えを書く)

教師:じゃあ書けたかな?。・・・・・・・では、意見を発表してください。・・・・・はい□□くん。

生徒:「はい。やはり税が重いのだと思います。」

教師:なるほど、税ね・・・・・・・・・・・・・・。はい、○○くん。

生徒:「はい。似ているんですが税のとりすぎだとおもいます。何日も食べていない家に里長が税をとりにくるんですから。」

教師:なるほど。税を払う力のないところに税をとりにくるというひどさだね。・・・・・・・はい、△△さん。

生徒:「はい。私は飢饉とかが続いて食べ物がなくなり、苦しいのではないかと思います。」

教師:どこからそういうことを考えたの?。

生徒:「風に雨や雪が混じっているので冬と考えましたが、春になっても雪が降る事がありますから、そういう異常気象かと考えました。」

教師:なるほど・・・・・・。雪が降るからといって冬とは限らないわけだね。・・・・・・・・・・他には?。・・・・・・はい○○さん。

生徒:「悪い病気が流行ったのかもしれません。大仏を作るときにそう言う話しがあったから。」

教師:そういえばそうだね。・・・・・・・はい。△△くん。

生徒:「僕は、戦争のやりすぎではないかと思います。」

教師:そう考えた理由は?。

生徒:「前にやった律令国家が出きるまでのところで、唐とか新羅とかの外国と何度も戦争をして負けたっていうのがあったし、壬申の乱みたいな国

    内の争いもあったから、それで人々の暮らしが苦しいのではないかと思います。」

教師:なるほどね。そういうことも考えられるね。

○板書事項 良民の暮らしが苦しいわけ

@税の取りすぎ(重い)。

A飢饉がつづき食べ物がない。

B悪い病気が流行った。

C戦争のしすぎ(外国と・国内で)で民が貧しくなった。

教師:どれもありそうなことだね。・・・・・・じゃあ最後に税のことについて調べよう。教科書のp42を開けてノートの表に答えを入れてみよう。

  税・負担の名 負担する人 何を納める(何をする) メモ(どこへ運ぶ?) 
       
       
       
義務や負担        
       

(各自教科書を読んで上の表に答えを入れる)

生徒:「読んでもごちゃごちゃしてよくわかりません!!!」

教師:じゃあ少しずつやっていこうか。・・・・・・・税には3種類あるけど、その名前を言ってごらん。

生徒:「租!!!」「庸!!!!」「調!!!!」

教師:そう。租・庸・調の3種類だね。・・・・・・・・じゃあ、それぞれの税が「誰が」「何を」「どこへ運ぶか」に注意して教科書を読んでみよう。

(各自教科書を読み、税について調べる)

教師:そろそろできたかな?。では庸ってなにを納めるの?。

生徒:「布!!!!」

教師:または?。

生徒:「年に10日間上京して労役にしたがう。」

教師:そうだね。都で10日間働くかそのぶんの布を納めるかという税だね。

生徒:「労役ってなんですか?。」

教師:労役っていうのはね、都や天皇の宮殿やお寺などや道路をつくることをいいます。

生徒:「へー、そういうのも税なんだ。」

教師:そうだね。・・・・・・・では調というのはなんですか?。

生徒:「布!!!」「絹!!!!」

教師:だけじゃあないね。布や絹などの?。

生徒:「特産物!!!!!」

生徒:「その土地でとれるもののこと?。」

教師:そう。それぞれの土地でとれるものを税として納めるのが調なんだ。・・・・・・・・たとえばこのあたり、多摩川に面したところだったら?。

生徒:「なし!!!!」

教師:たしかに今は特産物だね。でもなしは江戸時代になってからなんだ。・・・・・・では奈良時代は・・・・・。ヒントは川だ。

生徒:「・・・・・・・あっつ、アユだ!!!!」

教師:正解です。・・・・では山の多いところだと?。

生徒:「木!!!!!」

教師:そうだね。木。それからいろいろな金属なんかもとれるね。鉄とか金とか・・・・。

生徒:「鉄や金も税金なんだ。」

教師:そうです。・・・・・・・・・じゃあ海に近いところだったら?。

生徒:「魚!!!」「海草!!!!」「タコ!!!」「ウニ!!!!!」「カバ!!!」(笑い)

教師:カバはいないね。・・・海でとれる魚介類だね。・・・・・でもまだあるね。これがないと人間は死んでしまうもの?。

生徒:「あっつ、塩!!!!」

教師:そう。正解です。・・・・・調というのはこういう各地の特産物なんだ。だから布や絹だけじゃあない。・・・・・・・ところでこの調と庸はどこへ持ってい

   くのかな?。

生徒:「都!!!!!」

生徒:「えっつ、都まで運ぶの?。」

教師:そうです。都まで。

生徒:「遠いジャン・・・・・・」

教師:そう。遠いね。この当たりからだと。・・・・・・平城京の都まで何日くらいかかるかな?。

生徒:「何で行くの?。」

教師:何で行くと思う?。

生徒:「馬!!!」「飛行機!!!」(笑い)「歩き!!!!」

教師:どれだと思う?。

生徒:「馬!!!!!」「歩き!!!」「馬!!!!!」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

教師:正解は歩きです。

生徒:「えっつ、歩き!!。なんで馬で行かないの?。」

教師:馬はね当時は特別な乗り物で、貴族や豪族などの持ち物だったし、道路の途中の駅にある馬は役人しか使えなかったんだ。

生徒:「へーっつ、大変だ。・・・・・で何日ぐらいかかるの?。」

教師:・・・・・教科書のp43の右上の資料をみてごらん。

生徒:「地図のどこが川崎だかわかんないよ!」

教師:・・・そうだね。・・・・・ヒントは南武線の駅の名前だね?。

生徒:「えっつ、久地?。」

教師:違う、もう少し南の駅を考えてごらん。

生徒:「津田山?」「・・・・・あっつ溝の口・・・・・武蔵溝ノ口だ!!!」

教師:そう。武蔵溝の口。次は武蔵新城、そして武蔵中原、最後は・・・

生徒:「武蔵小杉!!!!」

生徒:「じゃあ、武蔵の国なんだ。」

教師:そうです。武蔵の国。・・・・・・ここの住所はね武蔵の国の橘樹郡(たちばなぐん)の作延(さくのべ)の里だ。

生徒:「二子は?。」

教師:二子は多摩川の河口で海だったから住所はできない。

生徒:「久地は?。」

教師:久地の大部分も海だったからない。

生徒:「じゃあ溝の口は?」

教師:溝の口もない。溝の口という地名は水の口からできたもので、川の河口ということなんだ。だから溝の口も海か川。

生徒:「じゃ下作延だけ?。」「高津は?。」

教師:下作延のあたりは山だからちゃんとした陸地で真中の低いところには平瀬川が流れていて田んぼが開けていたんだ。・・・・・・それから高津だ

   けど、これは高の津という意味で、高という場所にあった津、つまり港ということなんだよ。溝の口の駅の横に小高い山があるけど、あそこの地

   名が小高。つまり高という地名にていねいなことばの「お」がついて小高。あそこが高というところで、その下の河口の所に合った港ということで

   高津というんだ。

生徒:「へえー、知らなかったな。」

教師:ところで話しを元に戻すけど、このあたりから都まで行くには歩いて何日かかるのかな?。

生徒:「29日!!!!」

教師:そうだね。ということは税金を納めるだけで往復何日?。

生徒:「58日!!!!!」

生徒:「えっつ、2ヶ月もかかるの?。」

教師:そうだよ。2ヶ月。・・・・・・・ということは税を運ぶときに一緒に持っていくものがいるね?。

生徒:「着替え!!!」「食料!!!」

教師:そう。食料。

生徒:「途中に宿屋なんかなかったの?。」

教師:残念ながらこの時代はまだないんだ。

生徒:「ということは途中で野宿?。」

生徒:「うわあ、大変ジャン。」

教師:大変だね。税金を納めるのはね。

生徒:「皆で行くの?。」

教師:大事なところだね。村の代表が皆の分の税を都まで運ぶんだよ。・・・・ところで調は特産物だから運ぶしかないけど、庸は都で働くかかわりの

   布を納めるかだね。・・・・・・・君達だったらどちらにする?。

生徒:「都で10日間働く!!」

生徒:「ばか。それじゃあみんな行かなきゃならないじゃあないか。余計たいへんだよ。」

生徒:「あっつ、そうか。・・・・じゃあ布。」

教師:そうだね。都から遠いこのあたりなら布だろうね。

生徒:「調や庸はだれがおさめるんですか?。」

教師:そうそう。そこが大事だね。・・・・だれだっけ?。

生徒:「成人男子!!!」

生徒:「じゃあ子供はいいんだ。」「女もいいんだ」

教師:そのとおりです。成人男子のみ。・・・・・でももう1つ条件があって、さまざまな身分の中の良民だけです。

生徒:「じゃあ奴婢や賎民は払わないんだ。」

教師:そう。奴婢や賎民は租だけ納めればいいんだよ。

生徒:「へーっつ。」

生徒:「貴族も調や租を納めるんですか?。」

教師:良い質問だね。・・・・・・貴族も租だけなんです。

生徒:「ずるいなー」

生徒:「租ってなんですか?。」

教師:そー(笑い)、そこが問題だね。・・・・租って何を納めるんだろう。

生徒:「口分田に応じておさめるんだから・・・・・・?」

教師:口分田って田んぼだね。・・・・・・ということは・・・・・・?

生徒:「あっつ、お米だ!!!!」

教師:そう。正解です。

生徒:「どれくらいの割合?。」

教師:どれくらいだろうね。取れたお米の・・・・・・・

生徒:「はい、見つけました!!」

教師:はい、○○くん。

生徒:「資料集のp30に収穫の約3%と書いてあります。」

生徒:「どれ、どれ・・・・・・・・・」

教師:そう、収穫された稲の3%だね。・・・・・・・税としては重いかな、軽いかな?。

生徒:「・・・・・・・・・・・?」

教師:江戸時代の年貢の量は収穫したお米の約40%なんだよ。

生徒:「じゃあ、すごく軽いじゃん。」

教師:そう軽いね。・・・・・・・・・でこれはどこに運ぶの?。

生徒:「国府!!!」

生徒:「国府ってなんですか?。」

教師:良い質問だ。全国を国々にわけたでしょ。その国の中心地の役所のこと。そこへ持っていくんだ。

生徒:「農民が?。」

教師:いや、これは里長が集めに来て持っていくんだ。・・・・それに租を納めるのは農民だけじゃあないよ。・・・商人も役人も、いや貴族も賎民もおさ

   めるんだ。

生徒:「教科書や資料集は農民と書いてあります。」

教師:うん。これは教科書の間違いだね。租は口分田をもらっている全ての人が納めます。・・・・・資料集のほうは農民の負担ではなく、「良民の負

    担」の方が正しいね。

生徒:「そうなんだ。」

教師:そう。そこは訂正しておいてください。・・・・・・・じゃあ税はそのくらいでと・・・・・・。あとの義務や負担はわかったかな?。

(教科書や資料集を見て確認している)

教師:義務や負担には2種類あるね。何と何?。

生徒:「兵役の義務と地方の労役!!!」

生徒:「雑徭(ぞうよう)!!!」

教師:そう、雑徭とも言うね。・・・・・でこれはどれくらいの期間働くの?。

生徒:「年間60日以内!!!」

生徒:「2ヶ月も働くんだ。」

教師:そう。国府で国司の指揮の下で2ヶ月働くんだ。・・・・・・じゃあ、兵役にはどんなのがある?。

生徒:「防人(さきもり)!!!」

生徒:「都の警備!!!」「衛仕(えじ)!!!」

生徒:「近くの軍団!!!!」

教師:防人ってどこで何年ぐらいやるの?。

生徒:「北九州!!!」「3年間!!!」

生徒:「長いなー!」

教師:そう。ながいね。・・・・じゃあ衛仕は?。

生徒:「都で!!!」「1年!!!!」

生徒:「軍団は何年と書いてないんですけど?。」

生徒:「あっつ、ほんとだ。」

教師:そうだね。年数が書いてない。・・・・・・・ということは・・・・?

生徒:「ずっと!!!!」「ほんとに!!」「大変だ!!!」

教師:そうだね。・・・・・・で、このような労役や兵役の義務を負担したのは誰?。

生徒:「成人男子!!!」「良民の成人男子!!!!」

教師:そう。良民の成人男子だね。

 

税や負担の名

負担する人

何を納める(何をする)

メモ(どこへ)

口分田をもらっている
全ての人
とれた稲の3% 国府へ

良民の成人男子 都で年に10日間の労役
か、かわりの布
都へ

調

良民の成人男子 各地の特産物 都へ

義務や負担

地方の労役(雑徭)

良民の成人男子 年60日以内の労役 国府へ

兵役の義務

防人

良民の成人男子 3年間 北九州

衛仕

良民の成人男子 1年間

軍団

良民の成人男子 国府

教師:これが税や負担の図だね。

生徒:「なんか良民の男は大変だ。」「女はいいな」

教師:女はいいのかな。ほんとうに。大人の男が都に働きにいったり兵士になったりしている間の仕事は誰がやる?。

生徒:「女と子供!!!」

生徒:「それに年より!!!」

教師:そうだね。みんな大変なわけだ。・・・・・・・・・じゃあこの資料をつかって、さっきの問いをもう1度考えてみよう。良民の暮らしが苦しい原因はな

    んだろう?。

(各自ノートに自分の考えを書く)

教師:では発表してもらおうか。・・・・・・はい、□□さん。

生徒:「はい。税金が重いと思います。良民だけが大変です。」

教師:ありがとう。他にはどうかな?。・・・・・・・・はい、△△くん。

生徒:「はい。特に調や庸を都に運ぶのが大変です。それから兵士や労役もつらいです。」

教師:はい。ありがとう。他には?。・・・・・・・はい、○○さん。

生徒:「はい。貴族や賎民は租だけでいいのに良民にはたくさんの税や負担がかかりすぎです。だから生活が苦しいんです。」

教師:はい。ありがとう。他には・・・・・・・・?。この答えで言い尽くされたかな?。戦争続きや飢饉や病気の問題もあるかもしれないが、かなり税が重

    いことはわかったね。・・・・最後にさっきの資料E良民の生活の最後の歌をよんでみよう。

【短歌】

   世の中を憂しとやさしと思えども

             飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

教師:意味はわかるね。この世の中はつらいしいづらいとも思うけど、どこに逃げて行くわけにはいかないね、鳥ではないのだから。という意味の歌

    だね。言いかえれば鳥になりたいともとれる。それほどこの時代は「憂しき世」、つらい世だったのかもね。

    では今日の授業は終わります。

 


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